プロローグ
久しぶりに書き始めました。
拙いですが、もし、好みに合いましたら読んでやってください。
最初に感じたのは「痛み」よりも「衝撃」だった。
そして次に感じたのは「熱」。おそらく使い物にならなくなったであろう左腕から噴出す血と、湧き上がる歓喜とが発する「熱」。
しかしすぐに体温がすっと下がったのを感じた。ヤバい、急がなきゃ、もたない!
「……くっ!」
奴の爪に吹っ飛ばされて崩れた体勢を立て直すまもなく、第二撃が襲ってくる。
「……thunderstorm!」
「……はっ!」
「……聖なる光よ!」
わたしの前に頼りになる三枚の壁が立ちふさがる。空気が震え、走り、貫く。
三人の同時攻撃は流石に効いたのか、禍々しい影が更にどす黒い瘴気と熱い体液を放つ。
「グウォオオォオ!!」
「早く!」
わたしは頷くより早く、右手の剣を足元に突き立てた。かろうじてぶら下がっている左腕を、抱え込む。左腕はわたしの血と奴の体液とでまだらに染まっていた。
「……わたしの血と名において命ずる」
わたしの左腕……正確には、奴の体液とわたしの血が光りだす。
「……浄化せよ!」
光の渦が奴めがけてまっすぐに飛んでゆく……と思ったら。
あたり一面が圧倒的な光に覆われ、わたしは視界を失った。激しい高揚感と凄まじい消耗にめまいがする。
「グ、グ……グアアアオオオオ」
びしゃびしゃと体液のあふれる音。熱。風圧。それは奴の真ん前に立っていたわたしたちに容赦なく降り注ぐ。髪をなぶる。耐え切れずに片ひざを地面に打ち付けた。
「……ニンゲンヨ」
「っ?」
は、話せるのか、この化け物は。
だが。
光がやや弱くなる。浄化が終わる。この人語を話す化け物も、もう終わりだ。
「……ワタシハ……モウオワリダ……。サイゴニ……オマエノナヲ」
「わたしの名は、レティシア。クィンバート家の娘だ」
「……れてぃしあ」
「もう二度と現れるな、『破壊するもの』!」
……光が収束する。
ぼんやりと視界が戻ると、床には黒い肉塊がいまだひくひくと動いていた。
だが、もう終わりだ。
いい男に呼ばれるならともかく、こんな化け物に名前を呼ばれて、わたしたちの冒険は終わった。