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幸せな公爵令嬢と聖女、ついでに俺

 ――リーシャ様が貴族学校を無事に卒業した、あくる日だった。


「いよいよですわね! クロード様!」


 リーシャ様がご機嫌だ。


「あーそうですね」


 えっと……何がでしょうか?


「いよいよですわね! 本当にずっと待っていたのです。クロード様!」


 マール様もご機嫌だ。


 左右からのステレオで耳が痛いですが。

 声が可愛いのでやっぱり心地よい。


「これってやっぱり男性から言うのが筋ですわよね?」


 だから何がですか?


「はい。リーシャちゃん、わたくし達は待つのが筋です」


 あのー。どっか物凄く過程が抜けた部分がありますよね?……やっぱりこれですか? 記憶を手繰り寄せてみる。


 “「それと……マールさんが、クロード様が最近ぬきにこないとか何とか言ってましたけど、何の事でしょうか?」“


 あれ? 違うか……


 ”「それにすでにマールちゃんも交えて、お父様と今後の事を全て決めてありますの! だから安心して下さい」”


 こっちだった……

 ここの部分の中身、俺聞いてないんですけど……

 そもそもここが肝だったわけですね?


 どうも話を聞くと、リーシャ様が卒業したら、全てが回り出す事になっていたそうだ。

 断言するが、俺だけ何も知らない。

 そして今は二人とも子爵領本邸でつつましく暮らしているんだ。

 騒がしいのは周りだけだな。

 父親の方が珍しく真面目に薬師の資質が高いとやたら喜んで、二人にぞっこんなんだ。


 えっ? 俺? 無事何くわぬ顔でギルド通いしていたわけだけど……


「わたしもマールちゃんも一生懸命薬師の勉強いたしました。

 もう怖いもの等何もありません」


「はい! 必ずお役に立って見せます」


「あの。リーシャ様。

 もしかしてここにお嫁に来るおつもりですか?

 このしがない子爵家に……

 マール様も、あなたは由緒ある聖女様ですよ。

 もしかしてここにお嫁に来るおつもりですか?」


「はい! その通りです!」


「間違いありませんわ!」


「お父様もすごく喜んでくださってます。

 それにマールちゃんの事もすごく気に入ってますので、クロード様は重婚で全く問題ございません」


「わたくしも問題ございませんわ」


「それにここは街でも由緒ある薬師の子爵家ですよ!

 そのせがれが二人くらい嫁を(めと)らずして、どうやって繁栄させるおつもりですか?」


「絶対わたくしは子孫を繁栄させたいのです!」


 何か話が突飛にとんでいる気が……


 もうあの時から、決まっていたと言う事か。

 公爵閣下おそるべし。


 俺だってこんな夢みたいな展開ウェルカムですよ。

 でも俺でいいのかな。


「あのーお聞きしますが、お二人とも俺でいいのですか?」


「はい! 絶対にあなたでなければだめなのです!」


 リーシャ様のこんな力強い言葉初めて聞いたかも。


「はい! あなたの事しか頭にありませんわ!」


 マール様のこんな力強い言葉も初めて聞いたかも。


「…………」


 二人とのいろいろな苦難が回想されてきた。


 それでもこの二人は数ある不遇を乗り越えてきた。俺はそれを見てきたじゃないか。


 それに何より俺はこの二人を心から愛している。


 身分の差? 気合で埋める。 

 それが俺だ。


 心は決まったぞ。


「わかりました!」


「リーシャ様! マール様! 俺はあなた達を心から愛しています!」


「クロード様……『様』はもはや不要です」


「…………」


「リーシャ! いつも傍で励ましてくれてありがとう! 心から君を愛している! 俺と結婚してくれ!」


「はい! こちらこそ喜んで!」


「マール! いつも暖かい手で俺を包んでくれてありがとう! 心から君を愛している! 俺と結婚してくれ!」


「はい! 喜んでお受けいたします!」


 俺達3人の婚姻式は、公爵家、子爵家はもちろん、性女マール、元勇者パーティーのアーク、ドイル、ミミも駆けつけ盛大に行われた。元勇者達の贖罪のお祝いってこれの事か。


「クロード君、いつでもぬきにおいで……骨までぬいちゃうんだから!」


 性女マールさんの悪魔の囁きが聞こえる。


「クロードちゃんわたしだって大好きだわ、だってあなたの紹介でこんなに幸せなんだもの! リーシャちゃん、マールちゃん、お幸せにね!」


 お前誰だよ! 


「マールちゃん、あの時はあなたの股を調べればいいなんて、はしたないこと言っちゃってごめんなさいね。わたしはいつでもあなたの味方よ!」


 えー!? こわ。


「性女マール様に弟子入りした新生ミミです! マール様より性女目録の認定を受けております。クロード様いつでもお待ち申し上げております」


 へー。もう目録かよ! 素質あるんじゃないか? 通うかも……


「クロード君、たまにはマールちゃんの膝枕を貸してはもらえないだろうか……」


 公爵閣下まだその呪縛から解放されないんですか!?


 そして、俺の左右には最高の輝きを放つ最高に幸せな二人の笑顔があった。


 何があっても、俺はこの二人を守る!

 だって俺は無双の時空魔法剣士なのだから!


 っと、ひたっていたら、何処からともなく魔物の影が。


 追ってくる魔物は超巨大なカニだな。全長十メートル程だろうか?

 ジャイアントビッグクラブってとこか。


 ここはしがない自然に囲まれた僻地、子爵領での、婚姻式だもの! 

 お祝いに、みんなでわたしを食べて! って事ではるばるやってきてくれたのだろう。


 巨大ガニが迫ってくる。

 へー外殻は固くて防御力はありそうだ。

 まあ俺には関係ないけどな。


 剣で捌いてもいいのだけど今そんな物騒な物持ってないや……

 あっても甲羅が硬いから刃こぼれするよなー。

 ここはこれで。


「【時空裂く剣(ディー・エルージュ)】!」


 巨大ガニが触れている空間そのものを切り裂いて次元に歪みを生じさせる超上級『時空魔法』。

 生物を形作る元素が触れている次元が捻じ曲げられたらどうなるか?

 それに伴い硬度は関係なく歪みに逆らえずやがてひしゃげることになる。


 バリバリバリ……ゴリゴリゴリ……バキッ!!


 巨大ガニの硬い甲羅がいとも簡単にぞうきんを絞るかのようにひしゃげて飛散した。


「みんな! 今日はこいつで盛大にお祝いだ!」


 皆唖然とする中……


「絶対に幸せになろう! リーシャ! マール!」


 俺の力強い言葉に、更に力強く頷く二人だった。

 そして、二人は俺の頬へ左右から優しい口づけで応えた。


 そして、この日最大の拍手が、会場を包んだのだった。


「わたしリーシャはクロード様! あなたを愛しています! 永遠に……」


「わたくしマールは何があっても永遠に、あなたを愛し続けます! クロード様!」


 リーシャとマールは、不思議とこの時全く同じ事を思っていた。それは……


 ”あなたは、出会った瞬間から、わたしの運命の王子様でした!!!”

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