絶対、許さない! ―side レアーヌ―
地獄の三日間ではなかった。
わたしにとっては……
普通だったら拷問にしか見えない猛毒霧修業。
でもこれが終われば、あいつに、半年前バカにされたあいつに『わたしはやり切ったよ! ざまぁ見なさい!』って胸を張って言える。本当に知らないうちに根付いた恋心だった。
何より三日間離れただけだったのに、恋しい! 会いたい! 会いたくて仕方ない。
時計をみた。
あと三分だ。
もう少しであいつに会える。
わたしはやり切った。心身ともに成長できたんだ。
もう毒でも精神攻撃でも何でも受け付けないわ。
でもいつも心の中にはあいつがいる。悔しいくらいに。
よし! 時間だ。
あいつの待つギルドへ直行したいけど、三日間の猛毒霧中で身体も服もべたべただ。
こんな格好じゃ恥ずかしいよ。
宿でシャワー浴びてからにしよう。
きっとさっぱり綺麗になった姿の方があいつも喜んでくれる。
宿に着いた。
急いで自分の部屋へ向かう。
あれ? 扉に何か貼ってある。便箋のようだ。
『修業終了おめでとう』
えっ? どういう事?
文字がすごくたどたどしいから、誰が書いたのかはすぐに分かった。
読み書きがやっと出来るようになったと言っていたから……
わたしは胸騒ぎがして部屋には入らず中を検めず、便箋を扉から剥がしてギルドへ急いだ。
何がどうしたの? 早く会いたいのに――
ギルドの扉を開けた。
わたしはやったのよ! ざまぁ見なさい!
えっ? 待っているはずのあいつがいない……
その代わりに奥からリノアさんが現れた。
「レアーヌちゃん、修業やり切ったのね。おめでとう」
「うん、ありがとう……」
「あいつは……クロードは何処にいるの?」
「…………」
「ねぇ。いるんでしょ? わたしやり切ったのよ! 隠れてないで出てきなさいよ!」
内心分かっていたのかもしれない。
あの猛毒霧最終特訓に入る前のあいつの寂しそうな顔……
「さよならだ――」
そう聴こえてしまった。でも認めたくなかった。だから頑張った。
なんでいないの? どうして出てきてくれないの?
「出て……きなさい……よ」
膝がガクンと崩れ落ちた。女の子座りになる。
涙が自然に溢れ出てきた。どうしようもないほどに。
「レアーヌちゃん。クロード君から伝言があるわ」
「嫌だ! 聞きたくない! どうしてなの? こんな事ってないよ! ひどいよ!」
「レアーヌちゃん。聞いて。
わたしもね、クロード君に気持ち伝えたの。でも振られちゃったんだ。
前の世界にクロード君の何より大事な人がいて、その声が聴こえたんだって……
そして、いても立ってもいられないんだって。
絶対帰るってすごい決心だった。
『マール』さん、『リーシャ』さんと言う名前よ。クロード君にそこまで想ってもらえる人が相手よ。
わたしにはとても止められないと思ったわ」
「わたしは…… あいつが好きなの! 好きで好きでたまらないの!
だから絶対自分で確かめなきゃいけないの。
追うわ! それで捕まえたらやっつけて、ぶん殴ってやるの! わたしの方が強くなったって。ざまぁ見ろって!
それでからこの気持ち伝えるの。わたしだって無力じゃない。わたしはあいつが……クロードが大好きだから!」
「レアーヌちゃん……分かったわ。わたし全力であなたを応援するわ。
わたしは白旗挙げちゃうけど、あなたなら――
クロード君はこれは予想できなかったかな? あなたに伝言なんて不要だったわね。」
リノアさんが苦笑いした。
「ありがとう。リノアさん。
あいつの考えてる事なんて全部分かるもの。
追放するから、ここで暮らせ!って言うんでしょ!
絶対追放なんか認めてやらない! 今回ばかりは追放されてやらないわ!」
便箋には手紙が入っていたようだけど、わたしは読まなかった。
今わたし自身にある事実しか信じないから。
それはわたしは何があっても、クロードがどうしようもなく、好きだと言う事だ。
何があっても追いついて見せる。
待ってなさい。見つけたらまず一発ぶん殴ってやるんだから!
翌日。宿を引き払いわたしはクロードの後を追う旅に出る事にした。
ギルドでリノアさんに会ってきた。
「絶対見つけてぶん殴ってくるのよ!」
「うん! もちろん!」
リノアさんが優しく抱きしめてくれた。暖かった。
「でね。やっぱり置いていったわよ。全財産。クロード君今度はすっからかんよ。転生初日と違って、もうここの世界の状況が理解出来たから、お金は不要だそうよ。全部置いていくところみると、やっぱりあなたの事が心配だったのね。
今頃どうしてるのかしら?
でもね、あの性格は直らないわ。人が困っていれば必ず助けるはずだから、嫌でも痕跡が残るわ。そうなるとおのずと必ずどこかで情報が入るはずだわ。だから見つけ出すのは不可能じゃないわ」
「お金、リノアさん預かっておいてもらっていい? わたしが欲しいのはお金じゃないから」
「分かったわ。二人が帰るまで大事に預かっておくわね」
わたしはこれまた宛てのない、あいつ探しの旅に出た。
何と言われようが構わない。
わたしは自分で決めたんだ。待ってなさい!
大好きなクロード!
えっ!?
っていた~~!! いやがった~~!!
すぐ外にいた!!
わたしを置いてくなんて1000年早いのよ~~!!
「に……逃がすかぁ~~~~~~~~~~~~~~!!」
わたしは勢いよくクロードへダイブした。
何でそうしたと問われても、勢いでとしか言えないけれど。
あれ?
クロードの身体が光ってる事にわたしはそのとき気付いた。
よく見ると彼の顔色がやばいくらいわるい。
”おい、お前なんで来た”
みたいな間抜けな顔しやがって。
ふざけんな!!
逃がさないからね!!
わたしは彼に抱き着いたまま、転移した。




