帰る道筋が見つかった
私服のリノアは綺麗だった。
ビンクのブラウスに露出の多いホットパンツ。
いつも見る受付嬢の姿も綺麗なんだけど、なんか麗しい感じがたまらない。
大人の魅力がすごいんだよ。特にお尻。形のいい胸。どうしたらこんな素晴らしいプロポーションになるのだろうか?
眼福だ。やはり男はこうであれ。
レアーヌはたまにやたら可愛く見えることがある。特に本人は気付いてないようだが、振り向く様がまた可憐なんだ。ふくよかなヒップは触り心地は良さそうだ。
ただね、剣士としての大成には期待大だが、十六歳の割には身体の成長には乏しいのだ。
特に胸。あと何年たてば俺好みの『おっぱい』と呼べるのだろうか?
だが何だろう? モヤモヤする。
早く元の世界に帰らねば……
「うん。美味い。この世界の食べ物って味付けが濃い気がしたのだけど、俺には会うのかな」
「それはよかったわ。美味しいもの食べるのが人生の楽しみだものね」
「そうよね! 食べる楽しみがなきゃ生きてる意味ないわよね」
☆ ☆ ☆
――レアーヌの部屋。
翌日からわたしは地獄を味わった……わけではなかった。
どうもあいつにはリノアさんの間違いで『アークビショップ』になったことが、分岐点だったらしく、わたしは身体強化訓練、素振り一万回などをこなしても、あいつの『ハイヒール』で疲労が全回復し、全て初期状態の体力に回復できるので、つらさは感じず日に日に成長をとげていった。
いわゆるちょこっとだけど『成長チート』だ。
唯一毒切り訓練というあいつが毒をどこからか仕入れてきて、密閉状態の中に噴射して耐えるという訓練だけは耐えがたかった。
何度か死にかけてあいつの『リカバリー』で難を逃れた感じだった。
そして一カ月後には『縮地』、三カ月後には刀身への『属性付与』、半年後には『多段縮地』と二刀流での必殺剣『十連撃』をマスターした。
あいつの言葉を借りると、わたしは資質がずば抜けて高いそうなんだけど、わたしもともとは『アークウィザード』よ。
もちろんこの『アークウィザード』の修練も欠かしてはいない。
特にわたしは風と雷に親和性が高く、雷属性付与させたダガーで切った相手を絶命もさせるし、威力をしぼり電撃による麻痺に追い込むこともできる。
魔法剣士に近いようだけど、魔法剣士は魔術師と剣士が融合した悪く言えば中途半端な器用貧乏、対してわたしは『アークウィザード』の職能そのままにあいつとの特訓で剣戟は『ソードマスター』をはるかに越える域にまで到達している。
そして、
「レアーヌ。残念ながらもうお前に教える技も裏技もない。おそらく最高ランクの冒険者ですら、足元にも及ばない強さだ。最終訓練を与えることにする」
「望むところよ」
「猛毒霧中で丸三日間水分補給のみで耐える事。今までの毒霧の数倍の濃さだ。これがクリア出来れば俺がいた以前の世界の『状態異常無効』が確実に習得できるんだ。これは強靭な精神力もつくから精神攻撃にも屈しなくなる。今のお前で怖いのはそれだけだからな。やれるか?」
「ここで屈したら女が廃るわ!」
「よし! いい返事だ。早速だけど覚悟はいいか?」
「ええ。これまで頑張り抜いたんだもの。負けられないわ!」
「じゃあ、ギルドで待ってるからな」
「わかったわ」
わたしは猛毒が噴霧された密室へ。
その時見たあいつの顔、すごく寂しげだった。
えっ? 何か言った?
”さ……ならだ”……?
☆ ☆ ☆
――再びクロードへ
解毒剤は置いてきた。準備万端だ。
今のこいつなら全く問題なくクリアできる事は分かっているが念のため。
「クロード君。これで良かったの?」
「ああ。これが最善手なんだ」
「でも上手く探せる確率はないに等しいって……」
「声が聞こえたんだ。無視は出来ないよ。俺の大事で特別な人なんだ」
でもつい先日の夜……脳裏に聞こえた声があった。
まぎれもないマール、リーシャの声が。
早く帰らねばならない。
そして彼女達の声が聞こえたという事が全てをつなぐきっかけとなった。
ログがとれた。
そう、彼女たちの居所へ飛べばいいのだ。
「レアーヌちゃんは連れてはいけないの?」
「うん。いくら強くなったとはいえ危険な旅に変わりはない。大事な唯一の弟子だしね。あいつはここで幸せになるべきだと思うから」
「わたしクロード君がずっと好きだった」
「ありがとう。リノアさんには本当に世話になった。だからこそリノアさんは巻き込めないし、あいつに伝言を頼みたい」
「分かったわ。引き受けてあげる……その代わり……」
リノアの唇が俺の唇に重なった。
暖かい感触。俺はきっと忘れないだろう。この人の事を。
「『最後の命令だ。お前を追放する。ここで幸せになれ!』 この言葉を帰ってきたあいつに伝えて欲しい」
「必ず伝えるわ」
レアーヌがこれで納得するかは分からない。
でもな、もう家族同然のお前には、ここで幸せになって欲しいんだ。だからさよならだ。
涙するリノアと別れ、俺はついに決断した。
今帰るぞ。待っていろ。マール、リーシャ!
――最後、世話になったギルドの前に俺はいた。
ここは来た当初から分かっていたことがあった。
どうもこのギルド中心に魔物の瘴気とまではいかないが、死んだ魔物の魂が集まる場所にはなるせいか、黒いもやが見えたのだ。
おそらくだが、俺がアークビショップという聖職者となった事が悪い意味で影響したのだろう。
せめて俺がいなくなる前に、この禍々しい瘴気ははらっておきたい。
まだ不慣れだが、魂の浄化魔法の術式を脳内に描いてみる。
使い慣れた時空間魔法には遠く及ばないが、ギルドどころか、帝都一体を優しく包み込むほどの防御結界を張る事に成功した。
……ちょっと大きすぎたかな? 聖女とかいるのだったら仕事奪ってしまっただろうか?
まあ、いいか。それよりも俺には帰りを待っている仲間たちがいるはずだ。
マール、リーシャの声の位置情報を頼りにログを詮索する。
数秒で見つかった。この優しい、懐かしい感じ。間違いない。
――【空間連鎖】!
静かに発動させたサヨナラの魔方陣。
リノアさん、そしてレアーヌ……幸せにな……
だが俺の身体が光を帯びたその時、真横から超スピードでタックルを仕掛けた不届き者がいた。
最後にギルドによってしまった事が運のつきだった。
ただし不届き者にとってはこれが運命を大きく左右させたわけだが。
「に……逃がすかぁ~~~~~~~~~~~~~~!!」
俺はとんでもない土産を皆に持ち帰る事になってしまったのだった。




