報酬より大事な物
「リノアさん、依頼の斡旋ありがとう。おかげで街の被害は食い止められたよ。これ討伐証拠のオークキングの耳だよ」
「もう終わったんですか? 今回は三組ものパーティーが全滅してしまう悲しい事件になってしまいましたが、あなた達のおかげで被害拡大を免れました。ありがとうございます」
「……ただ十二人もの冒険者仲間が、救えなかった」
「あんたは精一杯やったわ」
「…………」
「レアーヌ。手続きして報酬受けとっておいてくれ。
俺は行かないといけない所があるんだ」
「分かったわ。ここにいればいいのね?」
「ああ、宿の手配とかもあるからな。ちょっと遅くなるかもしれないけど、待っててくれ」
「うん」
「それとリノアさん、ちょっといい?」
「なんでしょうか?」
俺は、言伝てをリノアに、頼んだ。
☆ ☆ ☆
――クロードの去った後。
「レアーヌちゃん。彼の想い伝わった?」
「うん、すごかったわ。戦闘技術だけじゃなくて、
いろんな無念をのっけたような一撃だったわ。
何であいつが、わたしに剣士になれって言ったのか、よく分かったんだ。命の重さを知って、決して悲劇を起こさせるな! って言ってるみたいだったわ」
「そうね。この街を必死で守ってくれたわ」
わたしは自分が冒険者をどれだけ甘い考えで続けてきたのかを考えると恥ずかしくなった。
そこへ一人の三十代の主婦だろうか?
ここには似つかわしくない婦人がやってきた。
「あの……ちょっとお尋ねしたいのですが……」
「はい、何でしょうか?」
リノアが対応する。
「今朝なんですが、離れに住んでいるうちの母が散歩中倒れてしまいまして、持病を患っているものですから、もし倒れたままだったらと思うと……そこへ不思議な魔法を使って母を助け、気が付くまでいて下さった方がいて、『ハイヒール!』と唱えた瞬間、母の状態が見違えるほど回復したそうです。そんな魔法使える方はここにしかいらっしゃらないだろうと訪ねてきました。母がお名前聞く前にいなくなったらしくて。一言お礼が言いたくて……」
「『ハイヒール』を使えるのって『アークビショップ』だけです。そうなると……」
「あいつね。今朝来るのが遅かったのはそういう訳なのね……わたしまた『わたしを待たすなんて』とか無神経な事言ってたわ……」
「心当たりはありますから、彼にはしっかり伝えておきますね」
「母の命の恩人なんです。よろしくお願いいたします」
立て続けに来る来客があった。
「すみません。オークキングを倒して下さった方はどなたですか?」
「あっ! 今多分出かけちゃってます」
「亡くなった冒険者の家族の者です。訃報を聞きつけて現場に行ってみました。そうしたら、亡くなった冒険者十二人丁寧に埋葬され綺麗に花が手向けられていました。最後のお別れができるようにと、綺麗に顔は整えられ全員顔だけは土から出ている状態でした。十二人もの遺体をおそらくその方は一人で……相当大変だったかと思い、一言お礼が言いたくて……」
「……」
「心当たりはありますので、伝えておきますね、それから……ここに千二百万エリーあります。これを亡くなった方々の肉親に渡すよう頼まれています。きっと哀しみにくれているだろうし、お金だって必要だろうからって……」
「……なんて言ったらいいのか……。すみません。家族が動けなくて、ギルドの報酬で生活していた冒険者も多いのです。本当に感謝しています。今ここに長居は出来ませんが、その方に感謝をよろしくお願い致します」
「レアーヌちゃんごめんね……さっきクロード君に頼まれていたの。あなたへは、四割の八百万エリーを渡すから文句はないはずだって……」
「……そんな、それじゃあ、あいつまた一文無しじゃない! 全くもう! 何で本人がいないのよ! 一体何処ほっつき歩いてるんだか……」
「でもレアーヌちゃん。彼がパーティー組んでくれて嬉しくてたまらないでしょ? わたし妬けちゃうなぁ」
☆ ☆ ☆
――再び、クロードへ。
「今、戻ったぞ。素泊まりだけど宿格安で長期とれたんだ。交渉して住み込みで俺が働く事にしたんだ。お前が修行してる間、宿でお前の宿賃分働けるからな」
「え! 今まで探してたの?」
「ああ。これからお前鍛えないといけないだろ。そうしたらこの王都アレフを拠点に置くのが一番なんだ。
お前はギルドに敵が多くて嫌だろうがな」
「わたしは大丈夫。もう覚悟決めたから。
今までで失った信頼は、百倍にして取り返して見せるわ」
何だろうか。
こいつが成長するのが楽しみになったのかな。
自分で高揚しているのが分かる。
「クロードさん。いろいろ来客がありましたよ。
どうしようもないほどのご丁寧なお礼が二件」
「リノアさん受けてくれてありがとう。
俺まだここでは『余所者』だからね。
ここに留まる限りやれる事はやっておきたいんだ」
「そうなのね。それじゃあ、わたしも協力しちゃうわ!」
「あれ? リノアさんどうしたの?」
「宿素泊まりなんでしょ? たまにはご飯作り行っちゃうわ!」
「へー。そりゃ助かる。楽しみが増えたな」
「レアーヌ。お前には、今日の報酬で当分は片手間で、修業つけるという中途半端は回避できた。俺がやってきたことを実践する覚悟あるか?」
「もちろんよ! 何のために杖捨てたと思ってるのよ! あんたまた一文なしなんだから……そうね、少しは稼いで渡してあげるわよ! このバカ!」
以前の世界では俺は、三年足らずで恐ろしい程成長できた。
こいつなら……期待は高まる。
「そうしたら今日はもうわたしも仕事終わりなの。
三人で決起会しましょ。いいレストランがあるわ。
今日はわたしのおごりよ」
「リノアさん、ありがとう。わたしもリノアさんに助けられてるのに……」
「大丈夫よ。だってレアーヌちゃんは明日からスパルタに耐えないといけないんだからね」




