凸凹パーティー
☆ ☆ ☆
――クロードが立ち去った後。
「あら? レアーヌさんここに三万二千エリー置いてありますよ? さっきの分配金でしょうか? でも……そうしたらクロードさんは千エリーだけで……」
「どういう事なの? わたしが貧乏になるって言ったからたくさんくれたの? あいつ何なの?」
「……今朝ね。あなたが来る前の話よ。ほんとは内緒にしとくべきなのかもしれないけど、きっとクロードさんはあなたに期待したから、自分は一日分の宿代だけしか受けとらなかったんだわ。そこを見越してあなたに話すわね」
「あいつ何か事情があるの?」
「そうね。簡単に言うと今朝異世界から来たそうよ。……言いにくいけど今までいた世界から追放されたみたいだって……まだ何一つ分からず、それなのに、この世界について知りたいからと文字の読み書きもできないのに必死で。もちろん無一文で。よほど帰らないといけない理由があるのかもしれないけど、それでもたった一人きりでここまで出来る人なんているかな? わたしは憧れちゃったわ。そこで少しお話聞いてみたの」
「あいつが? そんな……元々何でも出来たんじゃないの?」
「クロードさんは一日生きていくだけでも大変な世界で育って、日銭も稼がなければ容赦なく餓死する、とんでもなく不遇な環境だったそうよ。そんな中、生きていくために必死で腕を磨いて、人を助ける力を身に着けたそうよ。そんな世界が彼を裏切ったそうなの。それでも絶望するどころか、あなたの世話まで……」
「そんな……わたし、あいつにすごいひどい事たくさん言っちゃったのに……それなのに」
「あら? 泣かないで。それだけあなたに期待しているのよ。きっと彼には見えたんだわ。あなたが変われることをね。ここで彼の期待に応えるかはあなた次第よ」
「ずるいわ。ずるいわよ! そんなの……絶対許さないんだから!」
☆ ☆ ☆
――再びクロードへ。
ちゃんと宿に泊まれる。シルバーソードが月明かりになびく。
どうしてこんな事に。マール、リーシャ。マジでごめん……
とりあえず一刻も早く帰る手段を見つけたい。いや帰る! 正確には手段はあるが決定打にかけるのだ。
元の世界のログが見つからない。まるで電波を阻害する隔壁でもあるような、ここはそんな世界だったから。
それでもこの世界に留まるのは最小限になると思うので、ギルド嬢のお姉さんには元の世界を追放され転移したとか、過酷な世界で餓死寸前だったから転移を願ったら、ここにいたとか言ったら納得してもらえた。
まあ、実際、時空間魔法を取得してからは毎日が死の地獄の修行はやっていたけどね。
――翌朝。
朝日が気持ちいい。何だかそれだけでいい一日が始まりそうだ。
ただこれで完全に無一文だ。今日こそはギルドでちゃんと日銭稼がないとな。
朝食は美味しかった。この世界のものも美味しく食べられるんだな。一つ楽しみが増えたな。
ちょっと所用こなしたら少し時間かかっちゃったな。
アレフギルドへ入った。
「あ! クロードさんおはようございます。今日はちょっとゆっくりなんですね。早速あなたを待っている子がいますよ」
休憩所に目を向ける。そこには死神がいた。
「あれ? レアーヌじゃないか? 今日は早いんだな?」
「何言ってるの? あんたを待ってたのよ! わたしを待たすなんてどういうつもりなの?」
「お前とデートの約束なんかしてないぞ」
「違うわ! 違くないかもしれないけど……それよりもわたし今日から剣士やるわ」
「そうなのか? まぁ、頑張れよ! じゃあな!」
「ちょっと待ちなさいよ! あんたがやれって言ったんじゃない! わたしやってやるわ! それであんたより強くなって見返してやるんだから」
あれ? そういえばこいつ昨日持ってた杖がないぞ。
「お前、あの魔法少女全開のステッキどうしたんだ?」
「何よそれ!? そんなもの、もういらないもん! 売ってこれに代えてきたわ!」
そう言ってレアーヌは二本のダガーをテーブルにおいた。
「なんで二本あるんだよ!」
「あんたが剣を二本持ってるから必要だと思ったの。でもわたしの腕力だとこのダガー? って短剣がいいって言われて……」
ダガーの二刀流。懐かしい。俺がずっと貫いていたスタイルだ。あのふざけたリボン付きのステッキ売れたのかよ。何処で需要あるか分からないものだな。
「レアーヌが二刀流に適してるかどうかは分からないけど、分かったよ。意気込みは合格だ。今日から俺はお前とパーティーを組むことにする。よろしくな!」
「うん!」
握手した。何だよ、こいつ手汗でべとべとじゃないか。
一体いつから待ってたんだよ……
まあここまで頼りにされると悪い気はしないな。
でもこの変わりようは何なんだろうか?
少なくとも俺が昨日ここを出る時は、レアーヌが杖を捨てる覚悟なんて見えてなかったのだけど。
「クロードさん! ちょっといいですか?」
「お姉さん。何だい?」
ギルドのお姉さんに呼ばれた。
「わたしもクロードさんのファンなのよ。だから『リノア』って名前で呼んで下さいね」
「分かったよ。リノアさん」
「クロードさんごめんなさい。悪いと思ったけどレアーヌちゃんにあなたの身の上聞いてもらいました。
そうしたら目を真っ赤にして泣いた後、あの子態度が変わったの。どうかやる気を認めてあげて下さい」
なるほどね……とは言え手汗ぐらいちゃんと拭いとけよ。
「あの手汗で十分過ぎるほど分かってるよ。リノアさん、ありがとう」
「わたしもね、あの子の事心配はしているの。お願いね」
改めてレアーヌへ向かいあう。
「じゃあ今日はまず依頼を探して、それに即した修練だな」
「わかったわ!」




