高慢不埒少女
ギルドの休憩所で第二ラウンドとなる……
かと思われたのだが。
「……で、さっきは悪かったよ。もう報酬受け取れたし、言いたい事言っていいぜ。言っておくけどお前が失神してる時、胸とか揉んでないからな!」
「わたしの取り分の二万七千エリーよこせば許してあげるわよ……」
なんで折れた? 何があった? あと多分九割だとレアーヌは取り分が二万九千七百エリーになると思うのだけど、これは単に賢さが足りないのだと判断した。
それとその言い方だと胸を揉んでも許してくれるって事になるな。
俺が出会った中でここまで性悪な女の子はルディー馬鹿殿下にくっついてたメル以来かもしれない。
そういえばメルも不幸な少女だったな。転生でもして魔王討伐にいったカッコいい勇者の帰りを待つ王女にでもなってくれていたなら、後の身体を引き取ったアヤネも喜ぶだろうか? ただ馬鹿殿下に陶酔してた感じもするから、転生してまで一緒になってたら笑えるかもしれないが。
若干そのメルを彷彿とさせたレアーヌ。ただ、これならば、いやこいつほどのバカならば……変わるのではないか? 残念なところが色々と。
「あんたの言ってた事ってね、実はほとんど以前追い出された、いろいろなパーティーでも言われていた事なの。
味方のピンチを見極めるとか他のやつがやればいい、わたしは詠唱態勢作ってるんだから邪魔しないでとか確かに思ってたわ。
前衛から”今だ魔法頼む”って言われたら、はりきってオーバーキルの魔法を敵がばらけているのに、敵単体に向けて撃ったりもしてたかも。
多分今日のハイウルフの襲撃見ててわかったわ。ああいう時欲しいのは敵殲滅じゃなくてもいいから敵全体の動きを止められる魔法とか? 威力絞れば味方への誤爆も防げるし。
あと後衛は”絶対安全領域”だから敵が来たら全部前衛のせいって考えて、そんな時があった日は、全力で前衛を罵ったわ。とにかくわたしは一番すごいんだってアピールしたかったのよ。
でもそれがパーティーメンバーの反感を買ったのね。
あんたの事何となくだけどわかっちゃったのよ。
わたしを気付かせる為、あんなまどろっこしい事やってるのがね」
正直面白半分で……言うのは止めとこ。
ただし俺の想定以上にひどかったらしい。元わがまま令嬢は伊達じゃないようだ。
「うん、そうだな。今の話を聴く限り今までのパーティーに悪い点は何一つない。全てはレアーヌが悪いな。見事なまでの悪ウィザードだ。謝罪にはお前のその貧祖な体を売っても足りないくらいだ」
ただし自分で気付けたところは救いであり、この瞬間、俺がこいつを気に入った点でもある。
あのまま第二ラウンドのせめぎあいをしていたら、ただの時間の浪費だったからな。
「そこまではっきり言う? わたしは幼気な美少女なのよ! それなのにこんな醜態をさらされたのよ! 一体どうしてくれるのよ!」
また戻ったんだけど、反省してるのか開き直ってるのかわかんないや。
「まぁ。俺としては口論のエネルギー使うのが省けただけよかったかな。これ約束の二万七千エリーな。受け取ってくれ。それじゃあな!」
お前行って失禁して失神して帰ってきただけで二万七千エリーだもんな。いいよなー。
そういえばそんな商売あったっけな。破廉恥プレイショップだったっけ?
「あんた! ちょっと待ちなさいよ!」
あれ? 報酬ちょろまかしたのさすがにバレたかな?
「あー悪かったよ。ちゃんと……」
「……のね。……んであげるわ……」
「えっ? 何言ってんの?」
「だから、パーティー組んであげるって言ってるの! 喜びなさい! このAランクパーティーの優秀な美少女アークウィザードのわたしがあんたなんかと組んであげるのよ! 膝間づいて喜びなさいよ!」
「俺別に間に合ってるからいいよ。組まなくても。じゃあな!」
「えっ! 嘘でしょ? バカなの? 死ぬの? このわたしがあんたとパーティーを組んであげると言ってるのが聞こえなかったの?」
「聞こえてるよ。でもさぁ。連れてっても漏らして失神するだけだろ?」
「分かったわ! じゃあこうしてあげる。報酬割合はわたしが八割であんたが二割にするわ。これなら文句ないわよね?」
ダメだ。頭沸いてるんじゃないだろうか?
「一体それのどこに俺のメリットがあるんだよ? 割合からしておかしいよな。せめて俺が六割、お前が四割だな。それしか受け付けないよ」
「そんな!? わたしに貧乏になれって言うの? ひどいわ! 今日あんな恥ずかしい目に遭わせたくせに。こうなったらギルド中にあんたの悪い噂振りまいてやるわ! 脱がされて襲われたって! 覚悟なさい!」
俺は頭を掻いた。もう付き合いきれないや。
「レアーヌさん。あなたさっきから聞いていれば全部自分のことは棚に挙げて、クロードさんの悪口ばっかり……見てていい気分じゃないです。反省してください」
あれ? ギルドのお姉さんが俺を擁護してる。どうせなら俺この人勧誘したいなぁ。
「ひっ……ひっ……なんで……どうしてわたしばっかりこんな不幸になるのよ……わたしだって幸せになる権利はあるのに……」
ここら辺が限界だろうか。ここからどうするかはレアーヌ! お前次第だ。
「レアーヌ。いいか? 冒険者は皆命を懸けている職業だ。わたしすごいから見て! というそんなあまっちょろい考えじゃ誰にも相手にされない。こんな奴に自分の大事な背中は預けられないと思うだろ? その高慢な考えは捨てるんだ。もしお前が本気で俺と組みたいのなら、明日から剣士になれ! それ以外は受け付けない。例外は一切認めない。いいな?」
もう職業は変えられないから『アークウィザード』のままだが、この世界の魔法職は刀や短剣まで扱えることは確認済みだ。ステータスの上乗せがないだけで身体能力のペナルティは魔法職でもないからな。
俺が何を以ってこう提言したか、果たしてこの高慢な不埒少女は分かるだろうか?
「そんな……わたしまた追放されちゃうの?」
どうしてそう飛躍した考えになるんだろう。そもそもまだパーティー組んでもないのにな。でもこいつは荒療治が必要だと俺は思う。
だまってギルドを出た。正直疲れた。早く宿に行こう。
俺の異世界生活初日はこの高慢少女レアーヌのてんやわんやで激動の一日になった。




