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追放賛成

「あんた見ない顔よね。今まで何してたの?」


 俺はこういう時の為にあらかじめ用意した答えを言う。


「どうも親に勘当されたようなんだけど記憶喪失でさ。それまでは門兵か何かやっていたんじゃないかな」


 俺の出自がややこし過ぎるので、適当をほざくことにした。このレアーヌは馬鹿っぽいので問題ないだろう。


「まぁ。顔はともかく冴えない体つきだもんね。わたしはAランクパーティーのアークウィザードなのよ! こんな可愛くて優秀なわたしと依頼こなせるのだから感謝なさい」


 ――さっき解雇されてたけどな。


 ほどなくして(ひら)けた土地に出た。

 牧場のようだ。ここに併設されている養鶏場に依頼主がいた。


 ここのところ毎日のように家畜が減っているという事だった。

 精魂込めて育て上げたものが日に日に攫われるんだ。気が気でないだろう。


 犯人は奥の森の中に潜むハイウルフの群れ。手に負えなくて困っていたそうだ。


「あんた剣二つもあるじゃない! まぁ言うまでもないけどあんたが前衛やるのよ。

 くれぐれもわたしの邪魔はしないでね」


 さて、ここまではいいとしよう。

 問題はここからだ。このレアーヌの賢さを測ろうじゃないか。


「うん、わかった。俺がハイウルフを引き付けるからレアーヌは自分の好きなように、行動すればいいよ」


「へっ? 何なのそれ? ”この時、魔法下さい”とかないわけ?」


 何だかもう……第一段階以前の問題かもしれない。

 多分だけど、自分勝手に動くのではなくて、ある程度命令じみたものを聞いて、余計な事をしでかして、わたしはすごいんだをアピールしてきたのだと思う。


「じゃあさ。俺が”ここで魔法欲しい”ってここぞという時に言うから……そうすれば大丈夫だよな?」


 まぁ、言わないんだけどさ。


「最初からそう言いなさいよ。狼なんてド派手にやっつけちゃうんだから」


「あー任せるよ」


 本当だったら使う魔法の系統や、万が一後衛にターゲットが移った時の対処とかは相談しておくべきなのだろうが、急造ペアだし、それにさ……


 と考えていたところで、ハイウルフ達が森から姿を現した。


 ざっと十匹ってところかな。


 こいつらは獰猛でアクティブな魔物らしい。俺達を見つけた瞬間襲い掛かってきた。

 ただ連携出来るほどの知能はないようだ。


 動きから推測する。はっきり言って雑魚だな。レアーヌの判断能力測ってみようかな?


 俺は剣を抜かずやられるふりをする事にした。


「あっ! まずい! 剣が錆び付いて抜けないんだ~。いきなりピンチになってしまった~」


 ちょこっと棒読みで言いながらも、十匹のハイウルフの牙と繰り出す爪を全て躱す。

 牙は最小限の身の捻り、リーチがやや長い爪はバックステップを多用しつつ、あとは縮地の応用だ。縮地自体、必ずしも攻撃に使う手段にはならない。

 俺は『多段縮地』という自身で編み出した方法をとっている。

 よし! 身のこなしは全く落ちていない。

 遊んでいるように見えるが、レアーヌを試しているんだ。そして肝心な事、『魔法頼むよ』は絶対言わない。

 レアーヌはと言うと、あんなにわたしすごいアピールしておきながらも、今はしどろもどろしているだけだ。すごい狼狽えようだ。情緒不安定なのか?


 ふー。これだけで何故彼女がいろんなパーティーからはじかれてきたのか理解できた。自分で最善手が判断出来ない。これは冒険者として致命的だ。もし判断を間違っていたとしても反省材料が獲得できるが、その前段階でその機会ですら自分で消してしまっている。


 そう。追放する方が原因ではなくて、彼女自身に原因があるんだ。『銀の翼』だったっけ? 逆によく一ヶ月も我慢できたよな。


 ここでハイウルフの一匹が俺への攻撃は諦めて、レアーヌへ向かっていった。こういう事だって、どんな優秀なパーティーだってあるはずだ。後衛は絶対の安全領域だとでも思っているのだろうか?


 せめて一匹くらい自衛はして欲しいところなんだけど……

 それどころではなかった。腰が抜け、これは……女の子座りでおまけに失禁までして泣いている。


 はぁ。

 仕方ない。俺はハイウルフの攻撃を躱しながら、といっても、こいつら動きが画一的でちっともウォーミングアップにすらならないんだけど、出力を最小に調節して指弾をレアーヌへ向かう一匹のハイウルフへ放った。

 最も俺のものは指弾と言っても、炎指弾(フレイムバレット)なんだけどね。

 ミミから最近炎の作り方を習っていたんだ。彼女は優秀だ。時空間魔法が使える事は伏せておきたいので助かった。おそらく時空間魔法はどんな世界でも脅威として注目されるだろうから。

 ハイウルフの急所を貫き、更に後方の森の木に空洞を空けて、おそらく相当先までの遮蔽物に空洞を空けたかもしれないな。加減が難しい。一応あらかじめ気配感知で人がいない事は確認済みだ。


 あと九匹いるのだけど……高貴なアークウィザード様は?

 ……とっくに失神していた。


 俺は当て身で身体を慣らす事にした。

 結局抜刀はせず、全て多段縮地と当て身、主に手刀でハイウルフの首を跳ねて終わらせた。


 十匹討伐完了したから依頼主に早いとこ報告したいところだけど、あの高慢少女が眼を覚まさない。一応二人で来てるからな。正直あの不埒な状態でのレアーヌ、あれが仲間だと思われたくない。

 と言うことで起こしたいのだけど……一向に起きないぞ。

 あーまさかこんなところで時間食うとは。胸でも揉めば起きるだろうか?

 ただどうみてもボリューム不足だ。これを『おっぱい』と呼んでいいものか迷うところだ。


 それにしても、まさかここまでひどいとは。

 あーごめんよ。レアーヌ。

 悪いが追放賛成だ。食い扶持だけマイナスになるからね。今日だけの臨時パーティーで良かったと心底思ってしまった。

 ちょっとひどい事思ってしまった分、俺報酬三千エリーだけでいいからさ。


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