マールの想い ―side マール―
わたくしには、青天の霹靂でございました。
「アーク。ここらでどうだ?」
「……そうだな」
あのSS級ダンジョンクリア直後に、言い渡された追放の言葉が。
どうもギルドや人目に付く場所では、もし他人に聞かれては、わたくしの立場に影響があると考えて、ここらでという配慮のようですが、あなた達は間違っています。この森も魔物が出て危険なのですよ。
こんな時なのに、やっぱり抜けているアーク様、ドイル様、ミミちゃん。
わたくしは、このパーティーが好きでした。すごく楽しかったから。
だからまさかここでこの場面で、こんな事言われるとは思っていませんでした。
「君は聖女と言う立場でありながら、その豊満な身体を利用して毎晩男を貪って『性女』として君臨しているそうじゃないか!」
「ギルド内でも噂になっているんだ。『華麗な御業を持つ股に定評のあるマール』ってな。これをどう説明するんだ? 俺達は仮にも勇者パーティーだ。そんな風紀に抵触するような仲間はおいておけないんだ」
風紀勇者のアーク様からすれば、涙を飲んで、三下り半を下す決断だったのでしょう。
わたしが意外とパーティーに、貢献しているのを重々知っている上でのことですので。
でも、誤解なのです。
アーク様達の天然っぷりが、まさかこんな場面で牙をむくなんて……
「アーク。ここで嘘かほんとかを知るには、マールの股を調べれば、すぐわかるんじゃねーか? 本物の聖女ならまだ未使用のはずだ」
わたくしはそれで、無実の証明が出来るのであれば、それも厭わない気でおりました。
だってこのパーティーほんとに好きでしたので。
ドイル様も、はしたない気持ちで言ってはいないと思いますわ。
そこへ、あなたは現れてくれました。
そして、烈火のごとく口撃のみで、わたくしを窮地から救ってくれたのです。
――麗しのクロード様。
わたくしには輝く王子様にしか見えませんでした。
そして勇気を振り絞り出てきてくれたリーシャ様。
「あなた方! お一人を寄ってたかって虐めて、恥ずかしいとお思いにならないのですか?」
正義感が強くて素敵な方なんですね。
そのリーシャ様が、王子様のような眼でみるクロード様。
わたくしにも、そう見えました。
全てを導いてくれる王子様。
この人について行きたい。
一目惚れかもしれません。
そして最初で最後の大恋愛かもしれません。
だって聖女にとっての恋は、特別な物なのですから。
そんなクロード様が放ったお言葉。
「これだけは自信を持って言えます。あなたは清楚な聖女様です!」
……もう……どうしようもなくお慕い申し上げます。
クロード様。恰好が良くてそれでも、困り顔の時はすごくかわいくて、愛くるしくて……
キュンキュンします。
――こんな気持ちになれた事。そしてこんな王子様に出会わせてくれたあのおとぼけパーティーには、不謹慎ですが、やっぱり少しだけ感謝しちゃいました。