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首を洗って待っているがよい ―side ルディー

 俺の脳裏におびただしい記憶が舞い降りた。

 なんだこれ?

 ぐわっ!

 流れ込む様々な記憶を脳内で紐付けていくと、どうやら俺の前世のようだ。


 そして出た結論は……


 誰だ! このクソ俺様王子は!? まあ、どうあがいても自分なんだけど……


 俺の前世マジクソだな、おい!

 18年分の制約とやらで前世の記憶が、今まで消えていて良かったのかも。

 よくよく考えてみると、今日は俺18歳の誕生日だった。奇しくも今日その制約が解けたんだ。


 口調や性向的には今の俺とは、かけはなれている気はするけど。いや、どうかそうであってくれ!


 ん? あれ、身体がやけに軽い。

 さっき指輪の呪いが解けて、スリムボディにはなっていたが、今見るとダイヤモンドのようなスーパースリムボディになっていた。


 しかも……


 身体が軽く超高速で動き回れる。

 高速で動くラルク達より確実に速い。


 反芻すると、王女の指輪の呪いで日に日に愛情を受け続けた俺は、太り続け、それを払拭するため、死ぬ程つらい修行をしていた。だが、18年とやらの強化無効縛りがあり、それが身体に反映されなかったようだ。どおりでラルク達と違い、成長がなかったわけだ。


 その縛りが解禁された今、その溜まりにたまった修行成果を今日一気に受けとる形になったんだ。しかも縛りの年数はデブという足枷がついた間の研鑽。既に常人ではあり得ない成長チートぶりなのだ。


 ……こうとなれば、もうただ重いだけのミスリルセットなんて必要ない。

 俺はぶかぶかの鎧一式を脱ぎ、半裸になった。


 はっはっは!


 見よ! 我の華麗なるスーパーストロングボディを!


 前世の俺様キャラに結局完全に塗り潰されたようで心地よかった。口調も元々はこれなのではないか!


 ……おっと、こうしてる場面ではない。

 俺には行くところがあるのだ。



 …………………………



 ――その頃、王城内王の間では……


 ラルク達一行が、魔王を討つべく出立の準備を整え、国王に謁見に来ていた。


「……勇ましい勇者よ。魔王を討伐すれば、褒美として我が娘シェリーを嫁にやろう」


「……魔王の討伐には向かいますが、その褒美は不要です。ですよね? シェリー王女」


「……え?」


「――国王陛下、魔王討伐の褒美として、シェリー王女との婚約を用意されたようですが、それは不要にございます」


「……どういう事かな?」


「魔王討伐は、命の限り果たします。代わりに、シェリー王女のルディーとの婚約破棄を取り消して頂きたいのです」


「褒美とは言えないのだが、そんな事でいいのか?」


「……はい! それが俺達の総意です!」


 目を見開いて、驚くシェリー王女。


「……勇者様、一体あなたは?」


「――あなたが死ぬほど愛するルディーの親友です」


「……ルディー様の?」


「はい。あいつとは1年間、行動を共にしました。その間、あいつとの会話の中にあなたが何度登場した事か……数えきれません。それにあなたの愛の深さは図り知れません。ご存じではないかもしれませんが、あいつが嵌めていた婚約指輪……実は呪いの指輪なんです。身に付けさせた相手への想いが憎悪であれば、衰弱死させる事が出来ます。ですが、それが溢れる愛情であるならば……あいつ随分、幸せ太りしてますよ」


 ラルクは、ミーア、エミルと頷きあい、王の間を後にした。


「……あーあ。ラルクったら素直じゃないんだから」


「……それがリーダーでしょ」


「……ああでも念を押しておかないと、ルディーは絶対ついてきちゃうだろ? 正直俺達全員死にに行くようなもんだろ? あんな健気な王女を悲しませるわけにはいかないからな」


 パラディンであるラルクは、呪い、博愛に関する魔法具には詳しく何故、ルディーが研鑽しても、太る一方なのか知っていたのだった。


 貶すのも、追放するのも全てはルディーがついて来ないようにするため……



 …………………………



 ――必死に走って、門兵の制止も聞かず王城内へ。

 何とか取り次いでもらい、王の間へ。


「……ルディー様!」


 シェリー王女が駆けよってきた。


「シェリー! あやつらがここに来たのであろう?」


「……はい。魔王討伐を果たすから、ルディーとの婚約破棄を取り消して欲しいって言って……」


 ……くそ! あいつらめ、余計なことを……


「国王よ! 我はあやつらを……ラルク達を助けに行って参る!」


「……何か偉そうだな……それに何故半裸……まあ、いい。全て彼らから、聞き及んでおるよ。今のお主であれば大丈夫であろう。それにしても何と壮観な美青年であることか。必ず生きて戻ってきなさい。こんな輝くような美青年が次期国王であるならば、我が国の未来は明るい」


「わっはっは! 我の魔王討伐の吉報を首を洗って待っているが良い」


「…………」


 ん? 何故黙るのだ。だが、この国王は、前世にいた性根の腐った俺の親父より何百倍もましだ。


「シェリー! 一つ大事な事を言っておく。心して聞くがよい。もし我が無事に帰ってきたら、我と結婚するのだ!」


「はい! 喜んで! 偉そうなあなたが大好きです! それと首を洗ってではなく、せめて首を長くして待っております」


 シェリーが半裸の俺に、黒衣のコートを掛けてくれた。可愛いやつめ。


 これ以上ない盛大な死亡フラグを立て、俺はラルク達を追うことにした。


 ハッハッハ! 首を洗って待っているがよい!

 ラルク、ミーア、エミル!


 お前達のいない結婚式には、絶対したくないのでな。


 今や機敏で打たれ強い最強の俺様系パーティーメンバーは、遅ればせながらも、魔王討伐に向かうのだった。


 ………………


 ルディーを涙ながらに見送ったシェリー王女は、想い出に浸り……


「ルディー様〜。わたし今日ほど嬉しい日生まれて初めてでございます。あなたに身も心も救っていただいたのですから!」


 つい声を張り上げていた。あ~あ、前世はすっかり洗脳されちゃって、こんな言葉しか出なかったなぁ。

 でも、今日のこのくだらない言葉は、心からの本心です。


「何度生まれ変わろうと、ずっと一緒ですよ。ルディー様」


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