王城へ
「綺麗な顔してやがる。これ……死んでるんだぜ!」
「一応はわたしを助けようとして、やられたという事にしておいてあげて下さい」
アヤネは一応このバカ殿下に感謝してるんだろうか?
「君はこのルディー元王太子に感謝してるんだね。それを聞けば……少しは――」
エドワードが優しく聞き直した。
「そう堂々と言われて、この清々しい顔見ると頷けなくなります」
なんだ、やっぱダメじゃん。
「……実は、あの時、リーシャ様を連行する際、ルディー元王太子に仰せつかっていたのです。密かに保護して公爵家に連れていけと……
俺の考えだと、親父は公爵閣下に平謝りするだけのはずだからと……深い他意は分かりませんでしたが」
このルディーがその時何を言いたかったのか、今更分からない……
「もうここにいる意味はありませんわ。あらぬ疑いをかけられぬうちに引き上げましょう。
メル……いえ、アヤネちゃんも回収出来た事ですし――」
この惨状には確かに長居したくないなー。血生臭いよ。
背中のマールはこんな中でもスーピー可愛い寝息をたてている。
マナのドレインってそれほど、体力を削るものなのだろうか?
まあ可愛いからいいや。とにかく背中に柔らかい胸圧を常時感じられるメリットは相当でかい。
「じゃあ、【空間連鎖】出すぞ」
「クロード様、お待ちください。あれを忘れてます」
「あーそうだった。もう忘れてたよ」
「大丈夫です。わたしが背負っていきますので」
こんな時にも真摯なエドワード。これは女だったら惚れるな。
バカ殿下を背負ったエドワード。嫌な顔一つしない。さすがはナイスガイ。
「【空間連鎖】!」
とりあえず子爵家本邸へ。
アヤネの恰好をどうにかして、風呂も入れてやらないと陛下に会わせられないからだ。
一瞬で空間移動した事に驚きを隠せないアヤネ。
この魔法使えるだけでも、時空魔法使いになった価値はあるからな。
「着いたぞ。ここが俺達の邸宅だ」
「立派なお屋敷ですね! わたし……やっぱり転生したんですね」
「さっきも転生って言ってたけど、アヤネちゃんは一度死んでしまったってこと?」
「アヤネでいいです。16歳だったので……。はい。まず間違いなく一度死んでいて、ちょうどメルさんの身体が空いたのでわたしが入ったのかと思います。神様がそう言っていました」
全く要領を得ないのだけど、嘘をつくような子にも思えない。頭も身体も不幸な子なんだろう。
ひとまずバカ殿下は外に放置して一休みする事にした。
子女たちに頼み、アヤネを風呂に入れ、服装を見繕ってもらう事にした。
「あれ? もう終わったのですね。さすがクロード様」
マールが眼を覚ました。眠そうなのだが一つ聞いておくことがあった。
「マール。お前マナを供与する人数が増えると眠くなってしまうのか?」
「いえ。クロード様の背中が気持ちよすぎて寝てしまいました」
なるほど。パーティー人数が多すぎてマールが疲弊するとなると考え物だが、そこは大丈夫みたいだ。
しばらく待つと、すっかり綺麗になった新生メルこと、アヤネが顔を出した。
服は、ちょっとした貴族です! って感じのギンガムチェックのワンピースだ。
へー。映えるもんだな。
「クロード様、では陛下に報告に向かいましょう!」
エドワードに促され向かうことにした。
外に出ると、バカ殿下の遺体に二人の変態がたかっていた。
あーこいつら、ここにいたの忘れてたよ。
一応、ここ守ってくれてるんだよな。まあ、ありがたいといえばありがたい。
ふと見ると、なんとバカ殿下にべったりと化粧が施されている。
文字通りの死に化粧。
で、なんで女装させてるんだよ!
しかも、ご丁寧に綺麗に身体も拭いてある。
こういう仕事あるんだっけ?
「あっ! クロードちゃん。この死体すごく顔立ちがいいから綺麗にしておいたわ!」
アークが嬉しそうだ。
「もともと中性的な可愛い顔立ちだったのよ。もうわたしたち楽しくて……」
ドイルもノッている。
くどいくらいのおしろいに、深紅の口紅をさしたバカ殿下のデスマスク。
初めてみた人から見れば、綺麗だなと、もしかしたら思うかもしれない。
しかも可愛い白地のブラウスに、ピンクのフリフリのスカートを履いている。
どういうチョイスだよ!
だが、俺から見たら、ただの化け殿下にしか見えない。
あれはリーシャ達には見せてはいけない――気がするんだ。
だが俺に続いて出てきたリーシャは見てしまった。
「あら? 変態メークいいじゃないですか? 是非このまま陛下にお出ししましょう!」
予想外の大絶賛。
「この世界では死んだ人に女装させるのですか?」
「いや。そんなおかしな風習はないよ!」
「でも、お似合いですよね。そういえばルディーさんって王太子なんですよね? じゃあこれでいいんじゃないですか? 王様も喜びますよ!」
この元バカ殿下アヤネになに吹き込みやがった?
お前ただの国家追放者じゃねーか!
「じゃあ準備もできたところで、王都へ向かおう。
アーク、ドイル留守を頼むな!」
「お任せを!」
「いってらっしゃい!」
こいつら、気分屋だけど信頼は何故か出来るんだよな。
俺達は王都の王城へ向かう事にした。




