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異様な事態なのに、ただキモイ

 俺達4人はコーネリアダンジョン出口の森に再び訪れる事になった。


「すごい! クロード様は時空魔法が使えるのですね。初めてみました。この世界に使える方がいるとは……」


「いえ、それほどでも。それより急ぎましょう!」


 俺は不穏な空気を感じていた。ここは魔物が多く生息しているはずだ。特にグリズリーは手強い。

 俺の左右の腕に絡みついてきたリーシャとマール。

 なるほど! これはテンションあがるわ!

 2人とも腕を絡ませるというより胸ごとくっついてくるのだ。

 可愛いし、嬉しい。

 豊胸度合いだけで言えばマールの方が豊かなのだが、リーシャはとても良い形の胸なんだ。

 必ずしも俺のランキングに胸の大きさはあてはまらない。チッパイでも美乳とかいるじゃん。


 エドワードは、そんな俺達を見ても警戒を怠らず先導してくれるナイスガイだ。

 なんという凄まじい好青年なんだろう。


 なるほど……早速森の奥から、俺達の匂いを嗅ぎつけてきたのか、サーベルタイガーが4頭姿を現した。

 ここにもともと生息している魔物だ。凶暴そうだが、この森の主はグリズリーだ。


「エドワードさん、マールを頼みます!」


「はい! お任せを」


 話を聞くとエドワードは、近衛兵の中でも相当剣の腕はたつらしいので、戦闘力のないマールを守ってもらうのが最適だった。本当にありがたい。

 なぜリーシャとマールを同行させたのか? エドワードがいる事と俺のテンションが爆上がるする事があげられる。あとはもしも要救護者を発見した時速やかに治療できるからだ。

 やはりいろんな要素を鑑みると、リーシャとマールにはいて欲しい。

 こんな危険に晒すなど勇者失格だろうと揶揄されようが、大丈夫。俺は自分は守る必要はない。

 二人だけをとにかく守ればいいのだ。


 あと何となくだが感じるんだ。リーシャは知らないうちに武闘家顔負けの強さになっている気がする。たった一度のダンジョン探索では、収穫はなかったのでは? と思ったが、その一度が大当たりだったようだ。とんでもない精神力の獲得と、凍結耐性、更には神獣のテイムまでやってのけたのだ。ポチは相変わらずリーシャの頭に張り付いているが、肝心な時に本領を発揮するタイプだろう。


 そしてある日の夜、見た事があった。暗部級の実力を持つエミリーを筆頭とした格闘家の侍女たちを同時に相手をしていて、瞬時にのしていたことを。

 スリットの入ったドレスを履かせての回し蹴りとか最高なんだけどなー。


 さて、俺は綺麗に磨き上げたシルバーダガー2刀を構えた。

 機敏性を妨げない事を考えると、やはり長剣より扱いやすいんだ。


 サーベルタイガー4頭は理性のままに広い足場を利用し同時に襲い掛かってきた。


「【刹那なる一閃(ディー・クイック)】さみだれ!」


 4連撃どころではない。2刀でそれぞれ10連撃を加えた。恐るべき速さの多段切り。

 しかも防御力無視、回避不可能の時空魔法の付与がついている。

 一瞬で4頭が細切れになった。

 ついに手加減が難しくなった次元に達したのかな。

 これはこれで不都合極まりないのだが。


「クロード様。失礼ですが、あなたは人間なのですか?」


 まあ、そういう反応だろうな。


「あのーエドワードさん。いつもの事ですわ!」


 リーシャはよく俺にくっついて狩り行くからな。


「まあ。あのトラさん達が細切れですわね。ちょっと可哀そうです……」


 マールはこういう時何を考えているのだろう。


 そしてその時だった。

 エドワードがはっとした表情をした。


「――今、元伯爵令嬢メルの気配が消えました」


「えっ? それは死んだって事?」


「おそらくは……わたしの千里眼は劣化はありますが、気配感知の上位互換の性能と、本質を見抜く能力はしっかりありますので」


 まあ、メルが死んだからといって、心が痛むとかは全くないのだけど、やはり当事者でケリをつけないと胸糞悪いよな。


「バカ殿下の方はまだ健在なんだよね。なんかいやな役だけ押し付けられたような感じだけど、最期の言葉くらい聞いておいてあげようか?」


 森の奥に、やがてダンジョン入口があり、周りを岩が囲んでいる。だが俺は知っている。この岩の丘陵を回り込んでいくと海に続く砂浜に出るんだ。


 予測通り道は狭くなり、片側がついに崖になった。

 もう少し進んでいくと人一人がやっと通れる幅の道になる。


 従来はここでスカイドラゴンの餌食になる構図なのだろうが、生憎今はいない。

 何故ならあれはSS級。無限湧きしないんだ。せいぜい10年に一度の復活だろう。


「リーシャ。俺がマールを背負うから、後に続いてくれ。エドワードさんはしんがりの警護を頼みます」


 マールの運動神経が残念なのは、もちろん知っているしこれからも期待できないだろう。逆に筋肉ムキムキになってもらっても俺がいやだ。


「クロード様のおんぶ! 生きていてよかったですわ!」


 背中に感じる胸の柔らかさがたまりません。全然重くないしいっその事、これで生活しようか?


「クロード様。わたしも凄くひっつきたいのです! 夜は覚悟してくださいね」


 その刹那、またもやエドワードの表情がひきつった。


「――たった今ですが……ルディーの気配が完全に消えました」


 遅かったか……

 まー実際それぐらいにしか感じないのだけど、エドワードが気になる言葉を更に発した。


「――何か異様な……人間でないものの気配を今感じました」


「魔物ってこと?」


「分かりません」


 現場まではもうすぐだ。警戒しながら進む。

 視界がついに開けた。広大な砂浜だ。

 さざ波の音が静かに聞こえる。


 ただし、見た光景は異様だった。

 明らかに切り刻まれた肉片がいくつも転がっている。


 そして、その近くには汚いぼろきれを着ているが、幾重にも切り刻まれた元バカ殿下ルディーの遺体がうつ伏せに横たわっていた。顔だけ横に向けてアデュー! って感じの死に顔が凄く嫌だ。

 えっ? これもしかして持って帰るの?

 俺の心配は異様な状況より、むしろそこにあった。


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