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クリスマスカード ―side ライナー―

 彼がサーシャを本当に大好きであるのならば、たとえ臭かろうが、この奇行を放って見過ごす事などあり得ない。いや、そもそも彼女が自分の洋服を切り刻んでいるのを目撃した時点で、止めに入るだろうから。


 それどころかサーシャお姉ちゃん、便利な魔法教えてくれてありがとー! と感謝までしている。文章上は一切彼女を糾弾せず、あくまで『冬休み日記』として成立させようとしているのだ。”読み取り方”を知らない添削者にはただの子供の日記になるように……


(サーシャも、自分の教えた魔法で自滅とは……皮肉なものだな……)


 だが、何故にサーシャはリオンにそんな自滅の恐れがある魔法を教えたのか?

 何か暗に意図があるとも思えるのだが、今はそれどころではなかったので俺は考えを振り払った。


 当初の考察に戻ろう……


 文章だけならば、子供の都合の良い戯れ言と切り捨てられかねない。

 だが、記録映像付きとなれば、話は変わってくる。


(初見で上手く、女癖の悪い殿下に取り入り見初められたサーシャであるならば、自作自演だろうがなんだろうが、そりゃあ、問答無用で官軍扱いだろうな……相当な勇気がいるであろう肥溜めにダイブした事で、エリシアの脅しが確固たる信憑性を持ってしまったのだろう……)


 俺は行動を起こす事にした。

 ……いや、動かざるを得なくなった。


(――だが、いや待てよ?)


 何故、ここまで物事を狡猾に考えられるリオンが、日記とはいえ余分な出来事まで書いている?

 全ての日付けに何かしらメッセージを込めているのではないか?


 ここで安易にエリシア救出に走ってはいけない気がしたのだ。


 リオンが魔法を覚えた直後となる、

 ”でも約束通り、帰りにしっかりサーシャお姉ちゃんには魔法を教えてもらいました”

 以降の文章をより詳しく読み解いてみる。


 12月25日(日)……”1枚のクリスマスカードだけポツンと入っていただけでした”


 そこを指でなぞった瞬間、俺は凍り付くような衝撃を受けた。

 内容は、クリスマスカードなんて、めでたいものじゃなかったのだ。



 ――――――――――


『遺書』


 これを受け取ってしまった方、先に謝らせて下さい。

 本当に……本当に……お気を悪くしてしまうものですので。

 でもこうでもしないと、平穏な死が迎えられない気がして……


 僕は、ルシェ王国第3王子のルークです。

 12歳で、今年貴族学園中等部に上がるはずでした。


 今こうして遺書として様々な秘密を暴露してしまうのは、王位継承権がほぼないから悔しくてというわけではありません。

 今までお兄様たちには、それなりに優しくしてもらっていました。今、第1王子のルディー兄さんは、行方不明だけど。

 そして……お父様にも、愛情を感じていたはずなのですが……


 でも見てしまったのです。その本性を……

 ――ほんの出来心でした。

 昨夜、夜中におしっこがしたくて、お付きの侍女さんにも内緒でトイレに行こうとしたら、お城の地下の辺りから女の人の悲鳴が聴こえました。

 好奇心には勝てず、おそるおそる悲鳴の聴こえる場所に行くことにしました。

 どうやら囚人や、捕虜を閉じ込めるための地下牢獄からでした。

 今までもトイレで起きてしまう事はあったのに、どうして今日だけ?


 ガッチリ閉まった扉でしたが、僕は実は開け方を知っていました。

 その奥で見てしまった”凄惨な光景”がこの遺書を書くきっかけとなりました。


 とてもではないですが、これ以上の悲劇は見たくありません。

 王家の者として、力不足の僕を許してください。


 不幸にもこれを読んでしまった方。

 どうか子供の戯言としてこれを見た事読んだ事は、そのまま流して気にせずお過ごしください。

 ”読んだだけ”では、決して有効活用できるものではありませんし、”凄惨な光景”は見ずに済みます。

 その場合はどうか、読んだら必ず速やかに破り捨ててください。


 ただしもし、あなたがノワール家に伝わるあの魔法で、その効力を感じとる事ができたのなら、僕の死を以ってその信憑性が保証されると思います。


 このクリスマス会に来ていると言う事は、あなたは僕と同じ子供であり、子供特有の純真無垢な目で事態を判断できると思ったのです。

 そして、これが元で国が滅びるとしたら、それが王家の運命だったと証明できるでしょう。


 ――――――――――


(――嘘だろ?)


 今まで王家文官として必死に働いてきた。

 陛下には1点の曇りも感じられないどころか、国民の信頼は厚い名君だった。

 それが、その信頼が、もろくも崩れ去った。


 ただし……ここで全てを見過ごし踏みとどまる事にすれば、今まで通りの保証された生活ができるだろう。

 リオンは決して、俺に解決を強制はしていないのだ。

 何故なら、自身は読み取ったであろう『遺書』の核となる”凄惨な光景”を日記には開示していないから。


 “もう時間がないんだ!

 こんな宿題僕には無理だよ!“


 1月6日で彼が言及している宿題というのは、明らかに国家の闇を暴くという、とてつもない難題だった。1月5日の子供の宿題に対する口振りと、齟齬があり過ぎるのだ。子供のリオンにはいくらなんでも難儀過ぎる”宿題”だろう。


(……だが、ここまで導いてくれたリオン、君は間違いなく英雄だ)


 “何だか、よく学園に授業を教えにきてくれるいつも怖顔の文官様にそっくりになってしまいました。

 でも僕にとっては正義のヒーローみたいにかっこいいです“


 熱い言葉が痛い程、胸に突き刺さった。


(……分かったよ。リオン。俺がその宿題やりとげようじゃないか。先生としては失格かな?)


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