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白狼との和解? ―side リーシャ―

 スッキリさっぱりな逆転劇は?


「……ガアアアアアアアアァァァァァァ!!!」


 ヤバい。白狼くんだんだん気合い入ってる。


 そして、あれが再来。

 ……くっ! げっ? また吐くつもりなの? 明らかに怒ってきた。吹雪の準備入ってる。


 逃げるのに懸命過ぎて吐きそうだった。


 走りながら、カッコ悪いポーズで狼のくせに吹雪第2弾がきたー!! もうだめだー!!


「――ブオオオオォォォォォォォ!!!!」


 よく見るとすごい強烈なんだね。この隠し技。怖い。


 調子にのらないで!!


 吹雪の到達点を予測したわたしは、軽やかなステップでそれを全ていなす。

 まあもろ浴びても凍結耐性で多分致命傷にはならないが念のため。


「白狼くん、知ってる? わたしに2度同じ技は通用しな――」


 辺り一面が猛吹雪。視界が遮られた。

 だけどもうその技は既に見切ったわ。わたしには通用しないはずだ。

 そして吹雪がやや薄まり、その先の白狼の悔しそうな吠え面を拝もうとやや立ち止まった。

 あれ? 白狼が消えた……


 ――その刹那、上空から鋭い爪が飛んできた。

 吹雪の轟音と、吹雪での視界不良を利用して、白狼は上空へ軽やかに飛んでいたのだ。

 えっ!! 吹雪は陽動だったというの!?

 気付くのが遅れたわたしは咄嗟に飛びのいたが、またもや今度は右腕をもがれてしまった!!

 更に振り向きざまにさっき生え変わった左腕までも噛みちぎられてしまった。

 万事休す!


 やばい! 口含みポーションは白狼と話そうとしていて解除していたし、念のため両手に持っていた2つのポーションもわたしの命令系統から離れた。

 ピンピーンチ!!


「やばい。ギャー、痛い! あれ。痛くない。でも……痛いはず!! 逃げ……! ギャー」


 早くポーションを飲まなければ、まず蓋を……

 あー!! そういえば両手ともなかった!!

 焦る! 焦るがないものは仕方ない。

 飲まなきゃ生えてこないじゃん!


 走る勢いで、押し上げられたバッグを口に咥え、そのまま頭を突っ込んだ。

 あった!!

 ポーションだ。

 わたしは歯で瓶を砕き割り、破片ごとそのままポーションを飲み込んだ。

 いったーい!!

 口に広がるトロピカルな味……

 いや、血とポーションの苦みのハーモニー。

 もう必死だった。


 ――そしてとうとう見つけた。

 進む先に迫る光る洞窟。

 白狼くんは、相変わらず何考えてるのか分からない。


 何とか洞窟になだれ込んだ。

 宿敵白狼に地獄の鬼ごっこに付き合わされ、体力も精神力も限界だった。何せ正味15分くらいは、凍結と爪の襲撃で、いつでも簡単に死ねる状況が続いたからだ。


 セーフティーサークルは、唯一白狼の相手をしないでいられる、ありがたい結界だ。文字通りここにいればいつまでも安全だ。


 白狼はしばらく洞窟周りをぐるぐるしていたが、やがてのっそりとこちらを覗いてきた。

 大丈夫。

 もしセーフティーサークルに入ろうものなら、一瞬で魔物はその形を維持できず消し飛ぶだろう。


「ざまぁみなさい!」


「……くぅ~ん」


 ――あれ? なになに?

 えっ! 白狼くんめっちゃ入ってきてるんですけど!

 どういう事なの?


 白狼はセーフティーサークルをもろともせず踏み込んできたかと思うと、くいッと顎を上げ、更に洞窟の奥を見つめた。セーフティーサークルの外。

 そこには豪華な装飾の施された小さな宝箱が置かれていた。


 もう何がなんだか分からない。

 ただセーフティーサークルに入って何ともないってことは、この白狼くんは魔物ではないってこと?

 今は、足を折りくつろいだ状態だ。


「……あなたは何者?」


「…………」


 これじゃ拉致があかない。

 殺そうと思えば瞬殺されるんだ。もう動じるだけ損だ。

 そうだ。お腹空いたから食事にしよう。

 セーフティーサークルの中は外と違い快適な温度だった。

 食事を外でとろうとすれば瞬時に凍り付くから、どうしようかなって思っていたんだ。


 バッグから取り出したのは、おにぎり2つ。

 簡素だ。でもないよりはまし。

 水を用意し、くつろいだ。

 もう白狼は怖くない。


「……あなたにも分けてあげたいけど、こんなおにぎりじゃお腹の足しにならないよね」


 そう言った刹那……

 体長10メートルの白狼が眩い光を発し、体長20センチに満たないサイズに様変わりした。


「うは~!? あなた体長変えられるの? すごい……」


 今なら倒せるんじゃ? いやダメだ。この子にもう敵意はない。

 もしかしたら、ひとりぼっちで遊び相手が欲しかっただけかもしれない。

 ちょっとばかし、その内容がハードだっただけだ。


 こぶりな白狼と一緒に、おにぎりを美味しく食べた。

 うん! 美味しい!

 やっぱり一人より二人だよね?


 考えれば考えるほど、不思議な白狼。


「白狼くん。君はどうしてここにいるの? わたしを食べなくてもいいの?」


「くぅ~ん」


 イイみたい。


「……腹ごしらえも終わったし、あれ開けてみようかな」


 洞窟の奥の宝箱に視線を向けた。


「あなたは、あれを開けてもらいたいの? びっくり箱とかじゃないわよね?」


 コクリと頷いた白狼くん。


 何だろう? 胸騒ぎがするけど、重要アイテムかもしれないし。


「分かったわ。あれ開けてみるわね。あなたはここで待ってて」


 わたしはおそるおそる宝箱へ近づいていった。


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