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不穏な日記 ―side ライナー―

28日以降……これ以降は何かを訴えるような文調なのだ。



 ――――――――――


 ・12月28日(水)


 今日は、サーシャお姉ちゃんを公園で見つけました。とっても可愛い恰好でした。

 僕がよく友達と行く公園だったので一緒に遊ぼうよと声をかけようとしたら、物陰に隠れて、その綺麗なお洋服を切り刻んで、なにかつぶやきながら去っていきました。

 とっても悪そうな笑い方だったので、気になってついていくと、畑の肥溜めに今度はダイブしました。


 これは大変だと思ったけれど、とっても臭いので、僕はそのまま声をかけられずサーシャお姉ちゃんを見送りました。

 サーシャお姉ちゃんは笑いながら走ってお城へ向かっていきました。

 すごく凄惨な光景でした。


 気が狂っちゃったかもしれないけど、僕はサーシャお姉ちゃんも大好きです。

 便利な魔法を教えてくれたから、感謝で胸が一杯です。

 でもやっぱり一番はエリシアお姉ちゃんです。



 ・1月1日(日)


 今日は、初等部の皆で集まり、新年ミレニアムパーティーに行きました。

 僕のちょっと気になっているリリアちゃんが、なんと僕のクリスマスプレゼントのウサギを持ってきました。

 当たったのリリアちゃんだったんだ。


 僕はすごく嬉しい気持ちになりました。

 大事にしてくれて嬉しいです。


 僕も出来ればリリアちゃんのプレゼントが欲しかったな。


 夜、エリシアお姉ちゃんが、お城のミレニアムパーティーから、泣きながら帰ってきました。

 お城の王子様に呼ばれて”婚約破棄”という処分を受けたみたいです。

 お父さんとお母さんが、今までないくらい怒っていたのですごく嫌でした。

 喧嘩しないでって言いたかったけど、聞いてもらえませんでした。



 ・1月2日(月)


 エリシアお姉ちゃんが、呼んでも部屋から出てきません。

 一緒にゲームやりたいし、宿題もたまってきちゃったのになぁ。

 今日は、ご飯抜きにされてしまったみたいで、心配だったので、エリシアお姉ちゃんのお部屋の前に、僕のおやつを全部置いてきました。



 ・1月4日(水)


 朝、お父さんとお母さんが、エリシアお姉ちゃんを呼び出していました。1ヶ月後にエリシアお姉ちゃんを何処かに連れていくと言っていました。

 僕には何も言ってくれませんが、きっと修道院という所だと思います。

 リリアちゃんが悪いお嬢様は、みんなそこに連れていかれてしまうと言っていたからです。

 ウサギのぬいぐるみをすごく気に入ってくれて、お礼に教えてくれた秘密の情報です。


 エリシアお姉ちゃんは悪いお姉ちゃんじゃないのに。きっと何かの間違いかもしれません。


 早く帰ってきてくれないかな。



 ・1月5日(木)


 エリシアお姉ちゃん助けて~!

 冬休みの宿題が終わらないよー



 ・1月6日(金)


 もう時間がないんだ!

 こんな宿題僕には無理だよ!

 そうだ!

 サーシャお姉ちゃんに教えてもらった魔法でなんとかならないかなぁ。

 冬休み中ずっと練習していたんだ。


『書かれた文字に込められた記憶や強い思念を読み取る、及び自身の記憶や強い思念を文字に込めて投影させる魔法』


 これを使ってみようかな。


 ――――――――――



 ――日記自体はここで終わっているのだが……

 気になる文言があった。


 ――妙に強調された言い回しがある。


(”なんでも決定的瞬間を押さえられるすごい魔法みたいです”――まさか!?)


 ライナーに宛てたメッセージとしか思えなかった。

 彼自身が使えるわけではないが、ライナーは知っていた。この魔法の読み取り方を。古文書で読んだことがあったのだ。

 対象となるのは、12月28日のサーシャの奇怪な行動。

 子供が日記に取り上げるにはあまりにも不可解な内容なのだ。


 これが強い印象の記憶が込められた文字で書かれているのならば……

 読み取り方は、指先を筆跡にあてて、神経を同調させること。


 ――すると、艶やかなワンピース姿の少女が、くっきり脳裏に浮かんできた。



 ――サーシャ・ノワール。ミレニアムパーティーで、王太子殿下にひっついていたブルーの巻き髪少女だ。


 彼女は寒空の下、公園の物陰で自分のワンピースをカッターで切刻み、


「――これでわたしは最高の王子とお金が手に入るわ……」


 つぶやきながら、ほくそ笑み、トコトコ歩いて行く所から始まり、畑の肥溜めに豪快にダイブし、あひゃひゃひゃと笑いながら走って消える映像が確認できた。



 リオンは練習しなきゃと書いてあったが、見事に筆跡に紐づいた記憶映像を込められる魔法が施してあったのだ。


(――まさか、全ては姉を救う為、こんな遠回しの方法を?)


 ”気が狂っちゃったかもしれないけど、僕はサーシャお姉ちゃんも大好きです”


(全くよく言うよ……ご丁寧に相当強い思念まで込めてあるな……)


 なぞる指から稚拙に書かれた文章とは裏腹に、サーシャとカイル殿下に対する嫌悪がひしひしと伝わってくる。


(どうやらこの時点で既にリオンは、サーシャの策略を看破していたようだな……)

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