マールとリーシャに挟まれたい
ライナーさんが王城へ帰っていってから2日がたった。
変態アークとドイルは、お色気にゃんにゃんパラダイスより出向という形で、この本邸に住み込みで働くことになった。いざ接してみるとそこまで不快感はない。
気を入れ替えてからは、かなり聞き分けもよく気が利くようになったんだ。2人とも。
しかし問題がある。そもそも男だ。どうしても気持ち悪い。
侍女たちから苦情が来ないか心配だ。
とりあえず女装だけは解除させるべきだな。
精神衛生上良くないんだ。
夫婦3人で勇者パーティーを組む。
かなり異例なようだが、これにはメリットもデメリットもある。
パーティー決壊=夫婦崩壊と言う事だ。
自発的にデメリットにしたい場合など、俺にはあり得ない!
何故なら、俺はマールもリーシャも心から愛しているからだ。
これから、勇者パーティーとしてやっていくには役割は決まっているのだが、肝がマールのマナ吸引に関して理解することにあった。
「マール。いつからそのマナ吸引能力に気付いたんだ?」
アーク達が知っていた事から、それ以前だと言う事になるが。
「多分、気付いた頃にはこう、ぐわーっと気持ちが高揚してきた感じ、それが吸っている時なんですがあったんです」
「ってことはほぼ生まれつきと考えていいかもな」
「昔お母さまから聞いたことがあるんです。あなたは精力をため込んで人を元気にする能力があると。
それが聖女の所以だと」
ん? その精力と精神力の誤認識は母親が原因なのか!
「どういった時にその能力は発動するのですか?
わたしは一緒にいても全く気がつきませんでした」
大体リーシャとマールはセットだからな。一番気が付きやすいはずなんだけど。
「多分ですがわたくしが魔物を認識した時だと思います」
その場合はかなり効率がいい使い方になるな。これを知ったパーティーなら喉から手が出るほど欲しいだろう。だが、風紀勇者の風紀の掟には、勝てなかったから追放された。
仕方ない。変態コンビにも話を聞こう。
「アーク、ドイル。お前たちはどうやってマールから魔力の供与を受けていたんだ?」
「距離ね。近ければ近い程、勝手にマールが精力をつぎ込んでくれるのよ」
「敵と混戦の場合は敵にも享受されてしまわないのか?」
「いえ。わたくしが味方だと判断した方だけですわ」
なんとなく分かった気がする。マナの周囲の潤沢状況にもよるだろうが、マールは勝手に身体がマナをドレインしていて、仲間が近くにいれば勝手に振りわけていたんだ。
これがあれば本人は魔法が使えなくても十分すぎるほどの貢献度だな。
「クロード様。わたしが認めますし、わたしも妻として行います。
パーティー行動時はクロード様を中心に左右でわたしとマールちゃんが、腕を組んでくっついて歩くようにいたしましょう!」
名案だった。そして俺的にはウハウハで勇者稼業ができる。一石二鳥である。
左右二人の胸圧で、パワーアップするかもしれない。いやきっとする。
今まで魔物に相対する事がなかったので、ドレイン効果が、認識できていなかったようだ。
そういえば、マールがそばにいて魔物退治に挑んだのは、婚姻式のカニだけだった。
しかもほぼ瞬殺してしまったので、気が付かなかった。
だがこれだけの情報量があれば、マールの能力をフル活用できるだろう。
実質的には、俺しか戦力にはならないのだが、この勇者稼業には、単純な戦闘力だけが求められる場面だけではないと思われるので、マールのバフ、リーシャの頭脳は非常に強力なスキルと言える。
それと、どちらかというと俺よりも、美女二人をフラグとした勇者パーティーだ。
呼応してくれる人々も多いだろう。
しがない傭兵稼業でくすぶっている俺からすれば、これほどのやりがいを結婚後もらえたのは、本当に嬉しい事なんだ。
「マール、リーシャ! これからお前達を平和のフラグとしてやっていくパーティーだ。悪いけどお願いするよ」
「はい。わたくしもただ単に偽善で引き受けたわけではありません。一番自分の価値が計れる場所がここなのです」
「リーシャ、平穏な生活にならないかもしれない。申し訳ないが……」
「承知の上ですわ。それに人の為になるんですものね。これほどやりがいに満ち溢れた事ってこれからないかもしれませんし、今しか出来ない事ですものね!」
これほど恵まれた妻たちに出会えた俺はなんて幸せなんだろう。
マールはやや天然で天真爛漫、リーシャは理知的で打算が高い部分があるが……
根底は二人とも優しい。
これからがまた楽しみになった。
そして、一週間がたち、とうとう王家からの使者がやってきた。
使者を出すと言ってはいたが、結局来たのは、ライナーさんその人のようだ。気持ちよさそうな表情だからいい報告があるのかな? と思ったのだが……
おそらくは王命の強い効力をもつ依頼だろう。
だからこその定時報酬という対価もあるのだ。
密命だったりするかもしれないが、俺達3人なら何だってこなせる気がする。
だって最愛の夫婦なのだから。