皇子の怠惰な1日
さっそく翌日から皇子のダイエットが開始された。
俄然やる気になった私は皇子の一日の食生活と過ごし方を見る為、3日に渡って皇宮に泊まり込みさせてもらうことにした。
朝は9時ごろに起きてすぐ朝食。それも夕食並みの量で。1日目の朝食にはチキン半身の丸焼き、スープ5人分は入る大きさのスープ容器がそのまま出され、卵料理の付け合わせにはバターでソテーした野菜が少しとソーセージが7本、白くて丸いパンが5個、ミルクとお砂糖をたっぷり入れたお茶、最後に果物がどっさり出されていた。
食後は図書室へ直行して今日読む本を選び出し皇子の秘書官に部屋に持ってこさせる。
昼まで部屋でお菓子をつまみながら本を読んで昼になったら昼食。昼食は四角いパンの上にベーコンやチーズが載せて焼かれたピザに似たようなものが3枚、ポークをトマトとガーリックで煮込んだ大皿が1枚出て来て、茹でたトウモロコシが1本分とマッシュポテトが大きめのおにぎり位の大きさで皿に乗せられて出てきた。
昼食の後は2時間も昼寝をして15時になったらおやつの時間。おやつはプリンが3個とチョコレートケーキが2個とフルーツが少し。
16時から17時まで皇子が担当している政務の報告を受け、17時なったら軽いお茶。
お茶が終わると1日目はピアノのレッスン。2日目はダンスのレッスン。3日目は外国語のレッスンだった。
でもダンスは椅子に座って見ているだけ! あれはレッスンじゃなくて鑑賞だわ‥。
夕食まで時間がある時は自室でゴロゴロして過ごし、夕食以降もほぼ部屋から出ず部屋で飼っている鳥と遊んだり本を読んだりして過ごしていた。
ちなみに夕食は400グラムはありそうなビーフステーキが3枚、色々な野菜が入ったサラダがサラダボウルごと1つ、スープがまた容器ごと1つ、エビのカクテルが10本、サーモンのテリーヌとマッシュルームのゼリー寄せが3切ずつ、ワインがグラスで3杯ほど、レモンシャーベットを1杯、チーズの盛り合わせ、白パンが3つ、フルーツ一皿、その後デザートも出たらしいのだが、私は見てるだけで気持ちが悪くなって部屋から出てしまった。
本来なら剣術の稽古が午前にあるらしい。だが皇子は体を動かすことを嫌がって拒否しているのだそうだ。そうよね、ダンスすら見てるだけなんだから。
皇子の1日はなんとも緩慢に過ぎて行った。帝国の次期皇帝の1日がこんなので本当にいいの?
皇子の肥満は、まず食べ過ぎ。そしてどうも甘い物がお好きなようで、暇があったらお菓子を口に入れている。水分の取り方は平均的。脂肪分と塩分は多めね、食事の味付けがとても濃い目だ。
食事の改善はもちろん、これはもう基本的な生活態度からひっくり返していかないといけないだろうな。皇子は私のダイエット計画を受け入れてくれるだろうか‥。初めて会った時の面倒くさそうな態度を思い出すと不安になる。
私大丈夫かな? やっていけるかしら‥。
まずはダイエットの基本、食事の改善から取り掛かった。
この世界にも大豆に似た豆があったので、それを細かく砕き乾燥させて粉にする。パンを焼くときに少量混ぜて、まずパンの糖質を下げた。
大豆粉が多いとボサボサした食感になるので初めは少しずつ。皇子の食事を作っているコックと試行錯誤しながら作ったパンだ。そのパンの他にも全粒粉を使ったパンなども作り白いパンは廃止。
卵料理はバターたっぷりのオムレツを廃止。かさを増すためにジャガイモやホウレンソウを入れたキッシュタイプにした。もちろん生クリームは抜き。毎日中の具材を変えれば飽きないだろう。
毎食のスープも基本はコンソメにして、都度中身を変える様に指示した。
いきなり量を減らすとストレスになるので、初めは油分カット、塩分カット、糖質カットを心掛けた。
皇子も減量となればまず食事を減らされるだろうと予測していたのか、量的にいつもと変わらない食事が出されると意外そうな顔をした。
「これが・・そのダイエット料理とかいうものか?」
「はい、ですが本格的な物ではなく続けやすいように工夫してございます」
「パンは黒っぽいな。なんだ、バターはこれだけか? こんな物ではとても足りないぞ」
「その量でおしのぎ下さいませ」
皇子は皿に乗ったバターとパンを見比べていたが黙って食べ始めた。だがすぐパンを皿に放り出して言った。「まずい、こんなまずいパンは食べられない」
そうして他の料理に手を付けたが、まずいと思った物は一口食べただけでそれ以上は手を付けなかった。
仕方ないわ。初めからすんなり受け入れられるとは思ってなかったもの。
午後のおやつも大豆粉を混ぜたパンケーキを用意した。普段は生クリームをたっぷり盛り付けてチョコレートソースやキャラメルソースをその上に流しかけるらしいが、今日は半分の量のクリームだけにしてフルーツを少しトッピングした。
「お茶に入れる砂糖は白糖ではなくミネラルが豊富なブラウンシュガーに致しました。ですが量は少しずつ減らして行って下さい。ミルクもいけません」
「なんと! お茶やコーヒーにミルクを入れるなと?」
「はい。いずれはお砂糖も入れないで飲むことに慣れて頂きます」
皇子は朝と昼の食事を残したせいか午後のパンケーキは物足りないと言いながらも完食していた。砂糖が入っていないお茶にも顔をしかめたが、パンケーキには飲み物が必須だものね、仕方なく飲んでいたわ。
まだまだよ! ダイエットの地獄はこれから始まるんだから!
ため息をつきながらお茶を飲む皇子を見て、私は内心そう呟いた。