ここはどこ? あなたはだれ?
目を開けてぼんやりと見えてきたのは派手な色彩の天井だった。まるで宗教画の様な天使が描かれている。
窓に掛かったカーテンも室内の調度品もロココ調、成金趣味のごてごてした装飾で一杯だった。
ああ~私ってばテレビ付けっぱで寝ちゃったのか・・ってまずい! 今日は仕事じゃん。一体今何時よ?
慌てて布団をめくってガバッと起き上がると
「▽×ーーーー!」
女性の金切り声が上がった。
ふと周囲を見渡すと天蓋付きのベッドに花柄、レースたっぷりの寝具。同じように花柄にフリフリレースのネグリジェを着ている。
「わっ、何これ?!」
この部屋ひとつで1DKの私の部屋がふたつは入りそうな大きさの豪奢な部屋に、驚いて立ち尽くすメイド服を着た若い女性がこちらを見ていた。
えっ、誰? メイド喫茶で働くお姉さん?・・がどうして私の部屋に? てか、ここ私の部屋じゃない・・。
何がどうなっているのか分からず、メイドのお姉さんを見つめながら必死にこの状況を説明できる答えを考えていると、お姉さんが「○▽ΠΦΓ」と何か言いながら急いで部屋を出て行ってしまった。
何言ってるか聞き取れなかったわ・・そういえば見た目も外人だったし。でも英語じゃなかったな。
そんな事を考えていると、さっきのメイドがまた部屋に戻って来て、その後からぞろぞろと外人が何人も入って来た。
40代位の女性がベッドの上の私に駆け寄ってきた。中世風のヘアスタイルでドレスなんか着ている! 彼女は私を抱きしめ涙を流しながら何かを言っている。
「ΔΓ〇ΧローΠしたΠのよ!」
あれ、ちょっと聞き取れるかも?
傍に立っている同じ40代位の男性ともう一人20代前後の若い男性も目をうるうるさせながらこちらを見ている。
「エリー、医◇を呼んでΔ○Π」
「δい、畏まりまΔた」
さっきのメイドのお姉さんはエリーって言うのね。医者? を呼ぶのかな。私どこも痛くないけど。
「ねえ返事をし×ちょうだい、ど〇してそんな驚い◇顔をしているの?」
「母さん、ローズは状況が分から▽いんだよ。そうだ△でも飲んで落ち着いて」
だんだん何を言ってるか分かるようになってきたわ。
若い男性は母と呼んだ女性に水を飲ませ、今度は私にも水の入ったグラスを手渡した。
グラスを受け取る時に自分の手が視界に入った・・・・これが私の手? うそでしょ・・
白くて綺麗な肌をしていたが、ぽちゃぽちゃと肉が付き、指もぷくぷくしていた。
「か・・鏡・・」
最初に口をついて出たのはこの言葉だった。年上の方の男性がちょっと首を捻った後、手鏡を持ってきてくれた。
恐る恐る鏡を覗き込むと・・。
茶髪・・ええ、確かに染めてはいましたが。
目が青いんですが・・いえ、カラコンは使ってません。
彫も深め・・えええええええっ!
これ私じゃないです。その上・・随分とふくよかです! タレントの渡辺○美さんくらいあるじゃないですか!
私は手にしたグラスの水を飲み干した。同時に自分のお腹がぐうぅぅぅ~~っと鳴る音が聞こえた。