イザナミ
銃を手に、立っていました。
銃を手に、歩んでいました。
ニライ・カナイを夢に見ながら、
神の民の国にて、
血に塗れていました。
テレビ画面から流れる歌に、
時折静かに涙を流し、
食堂で食べる懐かしい料理に、
時折故郷に思いを馳せ、
夜、暗がりのベッドの中で、
生きている自分の鼓動を聞き、
いずれも一番傍らに在ったのは、
小さな銃、ひとつでした。
命を預けて命を奪う、
黄泉の女王の名前を付けた、
大事な大事な【娘】でした。
上手く喋れないこの身であっても、
銃は黙して寄り添ってくれました。
いつか私が全ての罪と業を背負い、
空に還るその日が来ても、
この【娘】は一緒に居てくれるでしょうか。
「物は持っていけないよ」と、
笑われるかもしれませんが、
大事な大事な存在なんです。
ああ、ところで、
昨日の夜に不思議な夢を見ました。
【娘】と同じ色の髪をした、
見た事の無い小さな小さな女の子が、
笑顔で私に手を差し出してくれたんです。
その小さな小さな手を握れば、
【娘】と同じ温度を感じて、
ハッ、と、目を覚ますと、
いつの間にか銃を手にしていたんです。
(お迎えが近いのだろうか、なんて)
(【娘】が来てくれるなら、悪くもない)
(嗚呼、なんて贅沢な事だろう)
ニライ・カナイに行けずとも、
この国で、手を汚しながら生きていける。
【娘】と二人きりで、日常を。
【娘】と二人きりで、人生を。