81話 各国の航空機
明海十二年 2月8日 大成帝国 モスポーツ海軍基地
モスポーツ海軍基地は大セイアン島南部にある大成帝国の海軍基地である。
そこで、新たな軍用艦の就役が行われた。
その名はHMSウラナス。
この国初の正規空母であり、その名前の由来はとある神話における天空を司る神の名前からである。
以前にも改装空母は存在したが、それは軽巡洋艦を改装したもので、布翼製航空機の発艦は可能であるが、着艦は難しい。
金属製航空機などもっての外である。
という訳で、正規空母が就役した訳なのだが、ここでも一つ、問題が発生してしまった。
浜煤戦争におけるその支援の感謝などから、天風が数機供与されたわけではあるが、供与されたからにはそれを運用しようとするわけであり、またその開発もされるわけだが、この艦が進水したのは供与される結構前である。
そして最新の艦上航空機を運用するには聊か飛行甲板や格納庫が小さいということになってしまったのである。
布翼製航空機の発着艦には十分な180m強の飛行甲板も金属翼航空機には足りなかったのである。
就役と同時に旧式艦となったのは、あのドントレスショックを彷彿とさせるものとなった。
さらに布製翼のHawkの艦上型である、Hawk Mk.Ⅱも登場して直ぐに旧型機となってしまったのである。
浜綴が示した航空機の運用から見てこれはかなり全体的に遅れたものであり、軍部はさらなる航空機とその周辺設備を整える必要性が陸海軍問わず出てきてしまったのである。
とはいえ、作ってしまったものは仕方がないので、発着艦練習用兼航空偵察用空母として運用することが決定された。
実戦ではあまり役に立ちそうもないが、実績作りや研究の為には必要と言うことでなんとか運用され、初の正規空母の面子が保たれるのであった。
しかし、空の神の名を付けてしまい、明らかな名前負けであることは確かであった。
「紅茶の温かさと、悲しみが身体に沁みますな」
「はい。この悲しみを胸に、次の航空機の設計図を仕上げてしまいましょう」
この国の飛行機開発者が、紅茶を飲みつつ、Larkと書かれた航空機の設計図を描いていくのであった。
同月 17日 北銀連邦 ノースローリー州 ライト社
「……」
ライト社の社長、ウィルバー・ライトは自分たちが初飛行させた飛行機、フライング・ライト号の写真を見つめていた。
この国初の国産航空機の生産に成功したライト社、特にウィルバーは浜綴に敵愾心を剥き出しにしている。
それもそのはず、この社よりも高性能な航空機を出したのである。
当然比較され、中には心無い声を社に投げかける者もいる。
そしてそれら積もり積もった心を次の航空機開発に注ぎ、熱中して次期航空機案を頭から絞り出している所であり、今は少しその休憩として、コーヒーを飲んでいるのであった。
写真を見ているのは、初心に返り、どうすれば良いかを改めて考える為に、頭を冷やしているのである。
「結局、自分が頑張るしかないか……」
「お、兄さん、休憩かい?」
「オービルか。ああ、そうだ」
「どうだい?出来は」
「まだだな」
「そうか……そう急には案なんて出ないよね」
弟はハハハと笑い、自分が案を出せないことを気にも留めてないようであった。
「そっちは?」
「微妙。前は10馬力も上げることが出来たけど、それから誤差程度しか上がらなくて四苦八苦だよ」
オービルは今、エンジンの改良に力を注いでいるらしいが、芳しく無い様だ。
「そうか……」
「ん?今の兄さんなら説教してくるかと思った」
「そういつも説教しているわけじゃないがな」
「最近は怒ってばかりだった気がするけど」
「まあ、苛々していたかもな」
「そこまで根を詰めることもないと思うけどな。今は戦争ってわけでもないんだから」
「お前は少し気にしろ」
「それもそうか」
オービルは反省しているのかしていないのか、苦笑いしながら言った。
(まあ確かに、根を詰め過ぎると、いい案が出るのも出ないか)
ウィルバーはもう一口コーヒーを飲み、新聞を読みながら、そう考えるのであった。
その新聞には、給炭艦ジュノーを空母化するとの軍部からリークされたと言われる噂が書かれていた。
同月 27日 フランシス王国 国王室
「やっと我が国初の国産飛行機が飛んだと思ったら、今度はさらに高性能な飛行機の登場か……」
「はい。しかも浜綴は、他飛行機同盟を差し置いて、次世代の航空機運用を主眼とした体制をし、それを浜煤戦争で有用性を実証した形となり、極東の島国が軍の技術・運用面で列強の第一に抜きんでて、その規模も技術との掛け合わせによって現在の列強も警戒せざるをえない状況となってしまいました」
「極東利権の多くを浜綴に譲ってしまうことになってしまうな……」
「はい。今後の戦略に大きく関わってくるかと」
「技術ではかなりの差が出来てしまい、北はもう進むところなどなく、南にあるのは南極大陸のみだ。南極大陸は開拓にはとても適しているとは言えない。全く、どうしろと……」
「資源開発などは?」
「それも冬季のみに限られるだろう。夏季は極夜でそれどころではないだろう。今まで本格的に発掘を行った者はいないが果たしてしたところでどれほどの利益が出るのか……」
「しかし、今まで本格的にしたことが無いとなると、発掘出来た暁には、多大な利益が出るのでは?」
「それもそうだが、出るまでが赤字の垂れ流しだ。それまで国民が納得するかというと、また別の話になってしまう」
「確かに……」
「まあ、案の一つとして考えておくか……」
各国は、新たな航空機の登場によって、多くの者が悩まされてしまうのであった。
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