76話 配置換え
明海十年 9月9日 相坂家
「今年の誕生日プレゼントも嬉しいデス!アリガトウゴザイマス!」
今年はアイナの誕生日に、防寒用の襟巻きを贈った。
飛行機に乗る際、高度が高くなり、寒くなるため、防寒具は必需品であるが、最初は厚手の靴下や股引、外套などをまず用意し、アイナもまたそれらを配給されるなどして持っていた。
しかし襟巻きは配給対象ではないし、今は持っていなかったため、贈り物にそれを選んだ。
因みに去年は勉学のお供にと、万年筆とその周辺具一式を贈った。
去年のものも喜んでおり、今年も喜んでもらえて何よりだ。
「今年君に貰った外套も着心地が良くて早速使っているよ」
アイナは今年、軍属として昨年働いていたため、その給与で薄手の外套を贈ってもらった。
軍服は薄い夏服か厚手の外套含む冬服のみであり、春秋にあった薄手の外套がなかったため、彼女がくれた外套は中々に重宝した。
「イエイエこちらコソ……。そう言えば、来年は浜綴で結婚できる年齢デスヨネ?」
「そうだね」
「今からモウ、楽しみデス!」
その微笑みに、自分からも微笑み返す。
今はもう、アイナとの結婚について、迷うことなどなくなっていたのであった。
同月 17日 高須賀海軍基地 大型会議室
「配置換え……ですか……」
「ああ、今度は飛行教導部隊としてだ」
「どうしてまた……?」
「新型空母……栄龍型や索冥型もそうだが、それらに載せる搭乗員は先の戦争で実戦を経験した比較的新手の操縦士を載せようという話になって、君たちは降ろそうということもあるが、それ以外にも色々あってな」
「色々とは?」
「今まで教導部隊に選ばれていたのは初期の演習で成績が良かった連中の中で配置を教導部隊に志願した者達だったが、彼らの指導はどうにも実戦を経験した人間のそれとは違うからな。実践を経験した人間を教導部隊に入れて欲しいという声が上がったんだ」
「成程、分かりました」
「それで、次の配置は何処になるんです?」
自分も聞きたかったことを小川が聞いた。
「それは安心してくれ。ここの地上基地の教導部隊だ」
「それは嬉しいですね」
「特に陸上ってのが嬉しい」
「海眼の“彼”と別の配置になってしまうのが申し訳ないが……」
「まあそれは、また後で挨拶しておきますよ」
「そうか。それでは、12月に来年度の教導をするための基本的な指導法を教える為、その時に配置換えになるが、今から3か月弱、身の回りのものを準備しておいてくれ」
「ええ、分りました」
「はい」
「ああ、それと、これを機に二人とも昇格だ。おめでとう」
「「ありがとうございます!」」
先の戦役で、自分と小川は中佐と少佐になっていたが、これで自分は大佐に、小川は中佐になった。
同年 12月12日 高須賀海軍基地
「と、いう訳で、彼ら第五〇九航空群、第五〇四二教導飛行隊、風切隊の相坂大佐と小川中佐だ」
「どうも、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「今日から次年度まで、教育の現体系を教えることとなった、第五〇三八教導飛行隊の松栄吾郎中佐です。最初の二日間は現体系を見学してもらって、それからさらに一週間、見学後討論を交えた改善点の抽出、1月からは一週間に一度、演習に参加してもらい、2月から来年度まで、改めて計画を考えることになります。これがこれからの予定です。最初の二日間は現体系の見学のみですが、討論の内容を考えておいてください。討論では、他の教導隊員も参加します。質問はありますか?」
「いいえ、ありません」
「いえ」
「それでは、明日から宜しくお願いします。……施設の案内は……」
「ええ、私たちは大体分かっていますし、それに先ほど改めてしてもらいましたので」
「そうですか。では私はこれで」
「ありがとうございました」
「どうも」
これより、自分は教導隊の一員となったのであった。
同月 15日 高須賀海軍基地 会議室
「これより現体系の討論、及び問題点の抽出を行いたいと思います。宜しくお願いします」
「「「お願いします」」」
「では今日の教導内容をまず振り返って……」
討論などを行い、現体系の疑問点や問題点を述べ、改善案として挙げていく。
「では、今日の討論、問題点抽出はこれで終わります。礼」
「「「ありがとうございました」」」
新たな配属先は今までと違い、どうなるかと緊張したが、何とかなったらしい。
そして仕事をし、いつの間にか年を跨いでいた。
明海十一年 2月1日 高須賀海軍基地 会議室
「今日から来年度の教導案を考え、より実戦に近い形で、より練度の高い航空部隊を作るための案作成を開始します。どうぞよろしくお願いします」
自分が教導隊員として正式な活動をするまでの、最後の段階となった。
だが結局のところ、自分でもあまり実感が無いのか、それとも現教導隊員の面々と馴染んだのか、あまり緊張感がない。
逆に自分の緊張感が無いことが、不安感になっているところがある。
この感覚は、なんとも言えない気持ち悪さがある。
「……今日のところはこれで終わりにしますか。何か質問は?……ないですね。ではこれで終了です。ありがとうございました。次も今日と同じ議題をする予定です。宜しくお願いします」
「「「ありがとうございました」」」
取り敢えず、物事は一応順調に進み続けるのであった。
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