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凪の中の突風  作者: NBCG
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75話 女王の再臨

明海十年 5月21日 アラカイ共和国 首都ホロホロ


「ありがとうございます」


この国の、野党最大派閥、「王室派」党首が、現地語で浜綴の将校へ感謝の言葉を述べながら握手をしていた。


観艦式の翌日、浜綴からアラカイへ戦勝記念と支援に対する感謝の印として、旧型飛行機、早風6機(機関取換、翼布張替)、太刀風6機(2機:機関取換、翼布張替、4機:新造)、が譲渡される記念式典が取り計らわれた。


これは白豪主義者による圧力を避ける為、アラカイの政府に知らせてはいなかった。


そして、それと同時に、飛行機を運用するための飛行場建設の為の援助を行う旨を知らせた。


また、旧式であり、用途廃止で練習戦艦にもならなかった、藤型戦艦の内の1隻と、船速が現在の戦闘に向かないとして旧式となり退役する予定であった駆逐艦の内の2隻が与えられることとなった。


アラカイの軍は、陸軍や警察が銃剣憲法から再編されたため、共和派が多く、海軍は「変革のための」再編はなされず、王党派が多い。


つまりこのことは、浜綴が王党派を支援しているということを遠回しに伝える形となり、更に先の観艦式から、原住島民の中でも仕方なく共和派になるしかないと考えていた者も、再び王党派に呼び戻すことに成功し、アラカイが共和制に移行した一年後に起きた武力蜂起以来のクーデターの意識が高まっていた。


また、白人の中にも、飛行機を見て感化された人々が、親銀派の与党、共和党から親浜派の王室派に鞍替えする人々まで居る始末である。


世論が大統領選を行うべきという風潮が日に日に強くなり、そして遂に大統領選が行われることとなった。


結果は明白、最大野党、王室派の党首ヒリナイ・マブットが大統領として選ばれることとなった。


与党共和党の党首であり、初代(前)大統領のサルマン・ドールが選ばれなかったのは、理由としては元王党派の島民が王党派に戻ったことはもとより、海軍が勝手に軍事演習を始めたこと、彼の従弟が社長を務める、ドール・フルーツ・カンパニーの株が浜綴企業らによって51%以上持たされてしまったこと、アラカイ共和国の主要産業である、サトウキビが観艦式の内に、浜綴海軍に対し破格で飛ぶように売れ、その地主である白人の中にも親浜派の大きな派閥が生まれたことなどが理由として挙げられる。


反対する白人は、差別意識が非常に強い者達と、銀系アラカイ人だけというものであった。


同年 7月11日 アラカイ共和国 首都ホロホロ


「ここに、王制復古を宣言いたします!」


大統領選で、王党派が与党となってから一か月、党首であり、大統領であるヒリナイが、そう宣言した。


ここで共和派や、多くの白人から反対の声が上がるが、次の言葉で静まり返った。


「しかし、これは王室復活であって、『国王は君臨すれども統治せず』を実施する形となります」


つまり、実質続けて共和国であるが、国号は王国に戻り、国が公に国王、王室を認めるということである。


これには国号に拘らない多くの市民が納得し、また、アラカイを北銀連邦の領土としたい政治家たちは苦虫を噛み潰したような顔をした。


国民が納得する形であれば、共和派が何と言おうと国民がこちらへ投票したり、ましてやクーデターに参加したりするなど望めないからである。


どの道、これを言われてしまっては打つ手がなく、反対派の声はあまり上がらなかった。


その後、共和化後に私邸と宮殿から大量の銃器が発見されたことによって逮捕されていたコアカヒリ女王が所有銃器の7割を近衛兵への提供、及び奉仕活動によって早期釈放を許され、即位式が行われた。


これを以って8月15日、アラカイ共和国はアラカイ王国に王制復古した。


そしてその後、大浜綴帝国と太平洋同盟が締結され、その国際関係はより強固なものへと変わった。


同年 8月17日 イギンダ連邦 首都ワトキンスD.C.


「はぁ……やられたな」


「ええ、彼らのおかげで我々の太平洋での活動圏は西海岸と一部中銀の事実上保護国の西海岸側、そしてフェリペのみになってしまいました」


「ま、これは予見できた失敗の中でもまだマシな方だろうな」


「ええ、植民地支配宣言でもされたら、我々は空母の少しもないままに浜綴と戦う羽目になっていたところです」


「さらには太平洋の利権を狙うセイアンも後ろから狙ってくるかもしれんからな」


「彼らがアラカイを彼らの完全保護国や、領土としなかったことも、彼らが我々に対する意見、主張なのかもしれませんね」


「ふむ、その心は?」


「彼らも戦後処理の余波から完全には立ち直ってはおらず、我々との戦いを望んではいない、ということなのでしょう」


「成程な。引いては『まだこれで良かった』、『マシだ』と思わせることが目的なのだろうな」


「その可能性は高いですね」


「してやられるところだったな。ま、その内彼らを抑え、太平洋覇権を我が国のものとしてやる。詰めの甘さを後悔させてやらねば」


「ええ、いつかは」


「彼らの動向は今後も注意だな。特に、こと太平洋に関しては」


「分かりました」


「ああそれと、陸軍技術部には支援の見返りとして得られた飛行機の研究と技術抽出を急がせろ」


「了解いたしました」


「頼んだ」


同日 大成帝国 首都マッドフォード


「……つまり首相、アラカイは政治的には共和制を維持したまま、国号を王国に変え、政治の指向性を改めて示すこととなった、という結果になりました」


「成程、しかしそれでいて、浜綴が完全な保護国であることを全面的には出さないあたり、衝突は避けられたということか」


「はい、そうなります」


「これでよかったな。こちら側に混乱が起きると、『ヤツら』三国同盟側に再び極東利権に再び付け入らせることになる可能性もあったからな」


「このイギンダとヒンテイの対立の和解、一時的な収束は、三国同盟側の利権を封じることを完全なものとしました」


「全く、新興国というのはどいつもこいつも血の気が多くて困る」


「全くです」


これにて、戦後の不穏な動きも解消され、安定的な“戦後”を迎えることになった。

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