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凪の中の突風  作者: NBCG
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73話 終戦の陰で

明海十年 1月12日 煤羅射帝国 ポポフ設計局


ここ、ポポフ設計局は、アルノルド三世から認められ、航空機の製造を担当していた。


しかし、事実上の煤羅射敗戦と、それに伴う混乱が、彼らを襲った。


「Pp-1とPp-2の製造独占権を破棄、ですか……」


局長のポポフは、呆然としたまま、それ以上何も言えずにいる。


「ええ、最新鋭のPp-3とPp-4は良いのですが、国は外貨獲得を優先せねばなりません故」


淡々と使者はそう言った。


「製造独占権を失った後は、我々はどうなってしまうのですか……?」


「別にそこまで怯えなくても良い。造っても良いし、売っても良い。だが、その技術を国が保持し、それを外国に売るだけだ。何、その二つは前線では殆ど役に立たなかった旧式機じゃないか」


確かにそうだが、彼らにとっての最初に造った飛行機と、最初に設計を行った機体である。


例え他国からのものであったとはいえ、惜しさはある。


「わかり、ました……」


局長はそう言うしかなかった。


同年 2月4日


「なぁ、君たち」


ある日、局長が、数名の開発者の数人に声を掛けた。


「なんでしょう?」


「君たちには、この設計局を出て、新たに設計局を造って欲しい」


「それは、どういった意図で……?」


開発者の一人が尋ねた。


「私たちは数週間前に、Pp-1とPp-2の製造独占権を失った。またこのような事態に陥ったとして、次、私たちがこのまま一つの設計局だったら、製造権を失うか、もしかしたら襲撃され、煤羅射という国の航空分野が失われてしまうかもしれない」


開発者達は無言で頷いた。


「それは栄えあるこの国にとって、大きな損失となると考えた。だから、君たちに声を掛け、この国から航空分野を失わせないために、新たに設計局を建てて欲しいと考えた。君たちに声を掛けたのは、君たちなら、私がいなくても、どうにかなると考えたからだ」


そして、それを聞いた開発者達は言った。


「「「分かりました」」」


こうしてこの後、2月24日には主に民間機製作に力を入れる航空機識別記号Kd(Кд)のコロドコ設計局が、3月5日には突飛な機体を作ることに力を入れる航空機識別記号Shv(Шв)のシクロフスキー設計局が設立された。


ポポフ設計局含め、この三設計局は煤羅射の三大設計局として歴史に刻まれる設計局となっていくのであった。


同年 3月17日 藩泥流帝国 首都ベアリーン


「遂に奴らが作っていたPp-1、Pp-2と呼ばれる飛行機の設計図と、製造権を取ることが出来たか」


「はい。金をチラつかせれば、今の彼らには藁をも縋る思いで差し出すでしょうからね」


「残念な話だが、飛行機の開発には苦労していたからな。これは好機だ」


「はい。飛行機製造と開発ノウハウを手に入れ、新たにこのユーシア、引いては世界を制するために、国民が一丸となることが重要だな」


同月 19日 大唐帝国 (臨時)首都重京


「煤羅射の奴ら、かなり困っているようだな」


「そうですね。しかし我々には、奴らを攻める余力は有りませんね」


「それ以前に奪われた土地の奪還がなぁ……」


「しかし我が君、この度の戦いで実質浜綴が勝ったというのは、つまりは煤羅射に対し、我々が勝てる可能性があるのでは?」


「お前、本当にそう思うのか?」


「……」


「本音を言ってみろ。流石に言って殺しはしないさ」


「……それ以前に、やることがあるかと」


「そうだな。文華民国と名乗る勢力を、削ぎ落すことが重要だな。だがそれも出来るか、私には分からんよ」


「我が君、そう言えば、彼らについてとある噂を聞きました」


「何だ?」


「彼らは白白一(Pp-1)のみならず、白白二(Pp-2)の製造権と設計図を買ったとか」


「……我々が、白白一の製造権と設計図しか買っていないというのにか?」


「……はい」


「本当にどうすれば良いのやら……」


皇帝と呼ばれる男は、この悩ましい状況の中、更に頭を抱えることとなった。


同月 22日 北伊銀出連邦 首都ワトキンスD.C. ホワイトハウス


「ふむ……」


その国の長たる大統領が、とある資料を見て、唸り声を漏らした。


「どうしましたか?大統領」


「いやな、かの浜綴が贈呈してくれた飛行機なのだがな、少しこの先の国家戦略にどうするべきかで悩んでな」


「と、いいますと?」


「太平洋に浮かぶアラカイ共和国という国があっただろう?アラカイ諸島からなる」


「え?えぇ」


「それをどう我が国の準州に組み込むのか、という考えの中で、砲艦外交を行うこと自体は決定事項なのだが、船はいいとして、飛行機をどうするか……」


「確かに、以前のまま、布製翼の飛行機を浜綴が渡して来れば、軍用機として採用した新興会社、ライト社の飛行機を飛ばせばよかったものですが、選択肢が増えてしまいましたね。それも、悪い意味で悩ましい」


「そういうことだ。性能で行けば、恐らく浜綴の飛行機の方が上だろう。しかし、我が国が開発した飛行機でないと、国民やアラカイの民が納得しないだろう。しかもそれさえ、もし浜綴が我が国に対抗して支援をすれば……」


「今はイシア移民に国籍は渡らない様にしていますが、もし活発にロビー活動や賄賂がなされれば、実績と根幹の力で競争に負けかねませんね」


「国籍が無い、か」


「はい」


「……それに我が国にもアドバンテージがあるなら、すぐにすればいいかもしれんな」


「国産機で行くと?」


「浜綴は今、戦後処理で忙しい。だからその隙に、アラカイで軍事パレードを行い、我が国の力を見せつけ、即座に準州に迎え入れさせるようにすれば、行けるだろう」


大統領は机の新聞に目を落とす。


「しかし……浜綴は、とんでもないものを隠していたな」


「エアクラフト・マザーシップ、ですか。私は正直言って、これがそれほどの脅威であるとも思えません。爆弾を載せると言っても、それほど乗せられるとは思えませんし、それに浜綴の戦果なんて、黄色人種の書いているものに信頼性などないと思いますし」


「確かにそれも一理はある。しかし、この件についてメラシアの政府は一切の声明を出していないということだ。いくら国内が混乱しているとは言え、嘘を言われれば、流石になにか言い返しがあるはずだ」


「なるほど……。それはそれとして、大統領、アラカイに向かわせる艦隊ですが、艦種はどういたしましょうか?」


「うぅむ……。戦艦4、巡洋艦4、駆逐艦8、輸送艦が、主に食料を運ぶための艦が2、飛行機や、飛行場設営隊を載せた輸送艦が1、っといったところだろう。まあ輸送艦は民間の輸送船でもいいと思うがな。戦時ではあるまい。飛行機は一機と、予備機として二機の計三機くらいか」


「飛行機部隊や設営隊の習熟度は如何ですか?」


「もう少し時間を取りたいな……両方、あと二ヶ月以内に習熟させ、その内に艦隊を組み、彼らを乗せ、出すことになる。つまり今から、三か月弱で到着予定ということになるな。当地での準備を踏まえて、丁度三か月後に観艦式を行うか」


「陸軍によるパレードは……言うまでもないですかね?」


「まあ、そうだな。正直、現地軍で何とかなるからな、それらは」


「それでは軍にはそう手配を」


「ああ、頼んだ」


伊銀出連邦は領土拡大に向けて、密かに動き始めていた。


同月 30日 大成帝国 首都マッドフォード


「首相、陸軍情報局からイギンダ連邦の動向が報告されました」


「アラカイ共和国のことかね?」


「は、はい。首相はこのことをもう既に?」


「いや、ただ単に予想していただけだ。報告を頼む」


「分かりました。彼の国はアラカイ共和国に戦艦4隻を含む艦隊を、18ないし20隻派遣し、飛行機能力を見せつけ、準州に迎え入れさせる布石として打つようです」


「やはりか。しかしまあ、中々に派手なことをしてくれるな」


「如何いたしましょう?」


「このことを浜綴に伝える」


「他には?」


「これだけだ」


「はあ……。お言葉ですが、これで大丈夫なのでしょうか?」


「流石に我が国の艦では間に合わん。マルシアにある船に空母は無い。そしてここで研究してある改装空母では言わずもがな……。せめて我が国が介入できる程度にまでは引き留めさせないとな。それに、恩を売っておくに越したことは無い」


「分かりました。では、これを送りに行ってまいります」


「頼んだ」


浜綴が知らないところで、様々な話が進んでいた。

良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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