69話 反攻の狼煙
明海九年 4月21日 1000時 浜綴海 臨時艦隊 空母索冥 飛行甲板
自分たちの作戦開始時間となった。
「風切隊、発艦開始!」
その言葉で、二機の突風が飛び立つ。
『風切隊、空母索冥を一回周回した後、作戦場所に移動せよ』
後方で司令偵察機が指示、支援を行うために、電波の感受範囲内に留まっていないといけない為、艦上空で一時的に待機してから移動する。
こうして、「空母索冥所属」風切隊初の作戦が始まった。
浜綴海某所 上空
『こちら、司令偵察機海眼。電探に感。複数の航空機が回転運動をしている模様。戦闘をしているものと見られる』
自分たちの任務は道中の脅威の排除と、敵精鋭制空戦力の排除である。
つまりは敵が奥の基地から戦闘機を向けて来ることが考えられるため、それらが揚陸作戦の妨害を行うことを未然に防ぐ為に行う。
航行艦隊の航空部隊は地上攻撃も行うが、航空基地に焦点を向けて攻撃するという意識は持っておらず、陸海空問わず敵戦力を削ぐことを目的としており、また黍風のみの戦闘機しか持っていない為、敵精鋭に航空戦力で対抗できるとも考えられない。
栄龍の戦闘機部隊は対地爆撃部隊の護衛と艦隊の直掩である為、積極的には敵戦闘機に対抗しようともしていない。
そして自分たち索冥所属部隊は揚陸艇、爆撃部隊などを護衛する部隊と、敵戦闘機、特に精鋭を呼ばれる有力な敵戦闘機を撃破する部隊である。
空母索冥には戦闘機部隊が三部隊あり、四機からなる部隊で、護衛部隊の任に就いている、第一一二航空群、第一一〇一戦闘飛行中隊の海奈隊、そして敵精鋭を撃破するための、それぞれ二機編隊であり、同航空群第一一〇二戦闘飛行中隊風切隊と、第一一〇三戦闘飛行中隊の覇海隊である。
特に自分たちは積極的に敵を捜索して撃破する部隊であり、覇海隊は索冥の直掩として周辺を飛行し待機している。
閑話休題。
『周辺空域の戦闘部隊に支援が必要か聞いてみる。少し待ってくれ』
「「了解」」
『……支援は必要ないとのことだ。このままの方位で進むぞ』
「了解。方位そのまま」
「二番機了解、方位そのまま」
そしてそのまま突き進む。
蓮都 周辺空域
「こちら、風切隊隊長機。陸地を目視で確認した」
「こちら風切二番機、同じく陸地をこの目で確認した」
『海眼了解。確認する。……距離、方位を確認したところ、ここで良いらしい。敵国領海内に既に入ったし、敵機も確認されていたが、ここから更に敵の目が厳しくなってくるだろう。気を付けろ』
「「了解」」
二人は淡々と答えた。
『……と、そういっていたら電探上に不明存在が急速にこちらに接近している。敵機の可能性が高い。数は3、方位280』
「戦闘は?」
『積極的に行え』
「相坂、了解した」
「小川、了解」
改めて気合を入れる為か、自分の名を入れてその意思を示した。
『不明存在、さらに接近、戦闘を許可する』
「「了解!」」
「敵機、目視にて確認。増槽投下、散開」
「了解!増槽投下!」
そして、久々の空戦が始まった。
敵は三機、こちらは二機。
数的不利だが、この数はとても差が開いているという訳ではない。
「小川、一機撃墜!」
暫く戦線から離れていたが、その腕は歯が立たない程鈍った訳でもない。
「相坂、一機撃墜」
『小川機、背後に着かれているぞ!』
それに今は、戦況を冷静に捉えている目もある。
「相坂、更に一機撃墜。周囲確認、敵機確認できず」
『了解した。方位を戻し、再び奥地に行くぞ』
「了解、風切隊、方位戻せ」
「方位修正、戻しました」
「速度を巡航速に」
「巡航速、了解」
この日はあと二戦し、無事、帰投することとなった。
二戦後
『戦闘終了を確認。燃料のこともある。帰投する。方位090へ』
「「了解、方位090」」
『相坂』
「なんだ?」
『腕は大丈夫か?』
「今日は調子が良い。痺れもない」
『本当か?』
「こんなところで嘘は吐かない。配慮、感謝する」
『了解。躰の不調があれば言ってくれ』
「了解した」
「おいおい、相坂のことは心配して、俺には何もないのか~?」
『小川は別に後遺症の残るようなことはなかっただろう?』
「これでも極寒の海を数時間は泳ぎ続けたんだけどな……」
『はいはい、小川大尉も大丈夫か?』
「“ついで”の心配、ありがとう」
『どういたしまして。ただ、一応上官だ。戦場では敬語を使え』
「これまた失礼、少佐殿」
『はぁ……。改めて帰投する。周囲の注意を厳となせ』
「「了解」」
こうして、新生風切隊の任務は終わった。
揚陸任務の方は、どうやら成功したようである。
航行艦隊や栄龍の航空機部隊に多かれ少なかれ損害があったようだが、揚陸部隊やその支援部隊に損害はなかったようだ。
空母索冥 休憩室
「お疲れ」
空の戦場から帰り、事後報告を終え、休憩室に入ると、そこには倉田が居た。
「久々の戦場は疲れたよ」
「腕の方は大丈夫なのか?」
「気遣いは有りがたいが、その方は怖いくらいなにも無いな」
「そうか……。心の方は?」
「どうだかな……。特に生機少佐と戦場でどう話せばいいのかが困るな。昔は部下だったけど、今や階級は同じ、それに事実上の上官だ」
「そういうことで迷えるってことは、多分だけど大丈夫だな」
「そんなもんか?」
「案外そんなものだと思うよ。多分」
「多分が多いな」
「俺は医者じゃないからな」
「それもそうだな」
「機体の方はどうだ?」
「悪くないな。慣れない部分もあるが、使っていけば慣れるだろうな」
「悪くない……か……」
「巡航装置以外は余り、革新的な部分は無いからな」
「それもそうか……」
「多分もっと自分が若かったら、その『慣れない部分』で辛辣な評価をしていたはずだから、これでも言葉は抑えたはずなんだけどな」
「じゃあ、その慣れない部分ってのは?」
「機体が大きくなったことで、ほんの少し、黍風と機体の扱い方や瞬時の判断で旋回するときに、稈を動かす時期が少し異なることだな。具体的には、黍風よりは少し早めに動かさないといけないところだな」
「確かに、飛行機に愛着が湧き始めた時だったら、もっと辛辣な言葉が出ていたと思うな。まあ兎も角、その意見も今後の改善に活かして行くよ。ありがとう」
「どうも」
揚陸作戦が成功し、この後は蓮都制圧作戦となった。
また、自分たちは引き続き、遊撃して敵有力戦闘機部隊との戦闘を続けて行うこととなった。
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