67話 新型機試験と新情報
明海九年 2月23日 浜綴航空技術研究所本部 試験飛行場
試験飛行場といっても、今その滑走路に居る訳ではない。
ここはその近くにある施設であり、今は機体などの説明を受けている。
「そしてこの『突風』は、新型機として現在建造中の最新鋭空母に搭載予定であり、旧式の空母に搭載可能であると判断された艦には、そちらにも搭載される予定だ。そして君は新型空母、索冥型空母のその一番艦、索冥に新たに配属されることとなる。戦闘機の部隊は四機二部隊か、二機四部隊を編制することになる。そして新たに艦上司令偵察機が二機搭載予定であり、実戦では作戦任務の確認、航法の支援、索敵の支援を担当することになる。話を戻すが、君の役割は既に飛行試験を終えているあの機体で行う試験とは、模擬着艦試験と模擬発艦試験、長距離飛行試験、その他諸々の試験だ。これで一通りこの機体の操作と試験内容、この機体の開発経緯を説明したが、何か質問はあるか?」
「いえ、有りません」
「では、昼食を済ませたのち、試験を開始する。昼休憩に操作の再確認や便所を済ませておけよ」
「了解しました」
その説明の中には、自分の新たな配属先や登場する艦などの話も含まれていた。
その話に於いて、飛行試験員として知る、重要な情報などもあったが、それほど驚くようなこともなかった。
しかし、試験後、自分は新たなことを知り、驚くこととなる。
同日 試験後
「相坂少佐、試験、お疲れ様でした」
「いえ、試験員としての義務ですので」
「あぁと……先ほど言っていた君の部隊なんだが……」
「どうかしましたか?」
「少し前から話があったらしいんだが、君の僚機になる人物が試験中に決まったらしい」
「本当に突然ですね」
「私も驚いているよ。今彼がここにいるらしいから、会ってみるか?」
「そうですね、顔合わせは重要ですよね。会います」
「今は会議室にいるらしいから、会議室に言ってくれ。話は通してある」
「わかりました」
こんな突然に顔を合わせることが出来るとは、不思議なものだ。
会議室
戸を叩き、入室する。
「失礼します」
「どうぞ」
そこにいたのは、自分も良く知った顔であった。
「お前は……!」
「よう『隊長』、久しぶりだな。俺が隊長の僚機、二番機を担当することになった。また宜しく頼む」
「小川……」
そう、小川灯仨九、以前の風切隊の二番機であった男である。
「死んだはずじゃ……」
「酷いな!……まぁでも、あれを見たら普通死んだと思うわな」
先の部隊が壊滅したあの戦いで、機体を捻らせながら落ち、とても助かったとは、軍の誰もがそう思っていたようだが、どうやら違うらしい。
「実はあの後、稈を倒して姿勢を持ち直して、無事、不時着水したって話。その後、戦闘領域だってのに漁に出ていた不法漁船に助けられて、漁を黙る代わりに陸まで引き上げて貰ったって訳だ。着いた土地が北海島って驚いたよ。あそこの海流ではそんなところに行くはずはなかったみたいだからな。せめて本州に着いてればって思ったよ」
変な所で悪運が強い、なんとも小川らしい話だ。
そしてその後は陸路で津刈海峡近くの港に行き、船で本州まで戻り、軍関係者ということで説得し、飛行機で高須賀まで戻って来たらしい。
閑話休題。
兎に角、二機編成が可能となったらしく、新生風切隊の再始動となった。
同年 3月20日 空母索冥 飛行甲板
未だ蓮都攻略が膠着状態のまま、自分たちは前線から退いて、新鋭艦に搭乗している。
戦闘に疲弊している前線と早期に交代するため、新型空母である索冥と栄龍の戦力化が急がれている。
その一環で、一部の飛行機乗り達は艤装中に発着艦訓練、公試航行中にも同訓練や艦内生活の慣らしを行うなどしている。
そしてそれは、自分たちも変わらない。
そして航行中の発着艦訓練や艦内生活の慣らしを一時的に行った後、一度高須賀に行き、更なる艤装や人員、航空機などの搭乗、搭載が行われた。
今現在は戦闘機突風や新型爆撃機尖山、偵察機祥雲が搭載されているのみであったが、今回は新たに新型攻撃機輝星と新型司令偵察機青雲、そして新型空母索冥型の大きな特徴と言っても良い装備が搭載される。
それは揚陸艇である。
新たに空母に陸戦隊と、揚陸戦の為の揚陸艇を搭載するのがこの新型空母の特徴である。
同時期に竣工された栄龍型空母の特徴は真龍、浜龍などの設計思想を引き継いだ、制空型と呼ばれるが、索冥型は異なる。
主に航空機による航空支援の下、揚陸を行う戦闘艦という役割であり、航空機による攻撃と言うよりは、この艦一つで揚陸作戦を遂行できるようにと考えられた、揚陸支援型と呼ばれる設計である。
勿論、随伴艦ありきで対艦戦闘を任せて、という前提条件は付くが。
閑話休題。
自分の興味も揚陸艇にあり、陸戦隊の人たちと衝突無く交流が出来るかという考えも持っていたが、その考えはある人物が乗り込んで来たため、その興味は失せてしまった。
「よう、相坂少佐」
「生機大尉……」
「おっと、今は実は少佐なんだ」
「失礼……」
この飛行甲板に居たのは、車椅子姿の生機元隊員であった。
「何故生機が……いや、何故除隊されたか、とかじゃなく……」
「それはな、実は、俺は新たに資格を取って、ここの新たな部隊に配属されることになったからだ」
「あ、新たな部隊……?」
「ここに今日、二機入れられる機体があるだろ?」
「まさか、青雲の……?」
「そういうこと。部隊名は海眼隊だ。また風切の皆で飛べるのは嬉しいよ。あ、機体の戦術名も同じく海眼だからそれも宜しく」
敢えて、杉大尉……今は二階級特進で中佐となった彼のことには触れない。
そして、「風切の皆」という言葉を誰も否定しないのは、皆の心に彼がいることを示しているのだろう。
「と、いう訳で、俺は司令偵察機から後方でぬくぬく指示をしていくことになるから、実戦ではまた宜しく頼む!」
自分と小川は苦笑いする。
こうして、新たに新制風切隊は第一一二航空群、第一一〇二戦闘飛行中隊風切隊として生機が指示員として登場する海眼は第一一一航空群、第一一〇九司令偵察部隊海眼隊として、進みだすこととなった。
そしてこの後の新たな戦況の変化によって、急遽自分たち、空母索冥と栄龍が中核と成す臨時艦隊が戦場に投入されることとなるのである。
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