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凪の中の突風  作者: NBCG
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59話 佐波鈴島制圧

明海八年 12月10日 佐波鈴島北部西河海岸上空 北緯53度 風切隊


「あと一つの拠点を制したら、遂に蓮都攻略だな」


「気を抜くな、小川。陸軍の戦闘機が、たった一機に機体の安定性が失われるほど被弾したという話を聞いただろう?」


「分かっているけど、それは陸軍が気を抜きすぎたんじゃねぇか?」


「例えそうだとしても、だ。自分たちが気を抜いていい理由にはならない」


「へいへい。すいませんでした」


「佐波鈴の最北端、屋端オハ半島には殆ど人なんかおらず、制圧に海軍は必要ないとも言われているんだから、最後位気を引き締めろ」


「了解」


『こちら、戦拓隊。風切隊、もうそろそろ敵施設群に到着する』


「こちら風切隊、了解」


『そろそろ最後の拠点だ。敵の対空防御も激しいものとなる可能性がある。気を付けて、対空兵器を破壊してくれ』


「勿論だ。何としても戦拓隊の機を落とさせはしない。安心してくれ」


『毎度のことだが、頼もしいものだな。今回もよろしく頼む』


「ああ」


そして自分は息を整える。


『敵施設を確認。作戦を開始する』


「風切隊、了解。風切隊隊長より風切隊全機、散開。対空兵器を各自破壊せよ」


「風切隊二番機了解!」


「風切隊三番機、了解した」


「風切隊四番機、了解」


四機の戦闘機は散らばり、高度を下げ、空に向けられたガトリング砲台などを破壊する。


同地区 地上陣地


「敵の飛行機だ!伝令を後方に!」


「了解!出ます!」


「陣地西ガトリング砲台が破壊されました!陣地正面ガトリング砲台も攻撃を受けています!復旧に時間が掛かります!」


「クソ……一応、後退は出来るが……。しかし、ここで後退すれば『次』が無くなる……」


「伝令からの報告!南東より、敵の陸軍兵と思われる一個旅団単位程度の戦力を確認!」


「西方より、更なる大型の飛行機を確認!」


「陣地東ガトリング砲台、破壊されました!予備を出す許可を!」


「敵、大型の飛行機、爆弾の投下を開始!陣地西方壊滅!すぐにここまで来ます!」


「東倉庫破壊されました!予備のガトリング砲も破壊された模様!」


「やはり敵の飛行機は強い……こちらの航空支援はどうした!?」


「Pp-1及びPp-2による航空阻止は西方に駆り出されていて、こちらに出せる機は無いとのこと!」


「それを先に言え馬鹿者!撤退だ!サハリン北部最終防衛陣地にまで撤退する!」


「了解しました!撤退用意!」


「撤退用意了解!撤退準備を行え!とっとしろ!死ぬぞ!」


「敵飛行機反転!こちらに来ます!速くここを出て下さい!」


「分かっている!全員撤退しろ!余計なものは置いていけ!」


「ほら!速く出るんだ!警備はもういい!出ろ!」


そして、全員が陣地から出てすぐのこと。


後方に爆音。


「全員無事か!?報告を!」


「軽症者複数あり!詳細な集計は無理です!今のところ死者はいない模様!」


「そうか、なら急げ!」


「了解!速く急いで撤退しろ!」


「敵陸軍、行動速度を上げました!」


「報告も見張りももう良い!お前も撤退をしろ!」


「りょ、了解いたしました!」


「取り敢えずみんな急げ!急いで撤退だ!……クソ、敵は寒さにやられて行動速度が遅くなっていると聞いていたが、どうなっていたんだ!?」


佐波鈴島北部 煤羅射陸軍要塞陣地


「何!?ここを除けば最後の陣地の西側、陣地の中でも最大の陣地だっただろう?そこが落ちたというのか!?」


司令は声を荒げる。


「はい。既にかの地の陣地は全て撤退を始めています」


それに冷静に返す副官。


「しかし、進攻速度は遅くなっている、と報告があったが……」


「Pp-1とPp-2の損耗が激しく、既に稼働できる機が少なくなり、敵航空戦力が投入されると判断していたため、東側に残存機はそのあたりに投入されています」


「はぁ……成程な」


「更に、敵もそろそろ佐波鈴攻略まであと僅かだと、士気を上げている、若しくはそうプロパガンダを放されているのかと」


「事実だからプロパガンダではないな……はぁ」


「どういたしましょうか?」


「我々も彼らが到着次第、撤退を開始する。大陸側にな」


「分かりました。船は次の輸送船もあることですし、問題は無いかと」


「まさかここで敵の進攻速度が上がるとは……」


「ええ、敵もサハリン制覇目前にて士気が上がり、ある程度の進攻速度の上昇は予測の範囲内でしたが……ここまでとは」


「こちらの飛行機の消耗と敵軍の支援の複合的な戦力上昇と戦力比の拡大を予想できなかったことが一番の問題だな。大陸に戻れば、そのことを報告せねばならないな」


「またもや、待つしかありませんね。今度は、反攻ではなく、撤退の準備で、ですが」


「はぁ、悲しいな。だが、それでもやっておかなければならないことは、最低限行っておかなければならないな」


「既に防御・迎撃用の兵装配置を考案しております。次の会議ではその事項について話し合いを行う予定です」


「まぁ、妥当だな。問題は敵どれくらいの速度でこちらにやって来るか、だが……」


「それも込みでの兵装配置の案です」


「それも考えてあるのか、なら良い。因みに、敵が最速でこの陣地の戦力と交戦を開始する時間はどれくらいだ?」


「最速の見積もりで、およそ今日から三日、乃至四日程度です。今日撤退を開始した兵士たちがここに到着する予定が二日後ですので、彼らを信用して用いることが出来るのは、約〇一日程度ですね。しかし、彼らの疲労度を考えると、彼らは先に撤退させる方が賢明かと」


「そうだな。疲労している兵士など、只の足手まといにさえなり得るからな。……それはそうと、今港にある、今日中に出せる輸送船などはあるか?」


「比較的小型の輸送船は有りますが、それは今、最後まで居座った民間人の避難と、一部将校、技術士官、軍医、軍の研究者の撤退を優先して行われています」


「そうか……」


「如何なされましたか?」


「もう士気が低いことこの上ないからな。一部のやる気のない兵士を送り返すこともしておきたいのだがな。先の話の続きの様なものでもあるが、疲弊した兵士や負傷した兵士もそうだが、戦意の無い兵士も他の兵士の足を引っ張るからな。それも、疲弊した兵士や負傷しただけで、戦意自体はある兵士に比べたら、本当に悪意に満ちて、戦場の“空気”が悪くなり、秩序が乱れ、兵士の稼働効率も悪くなる。そいつらもどうにかしたいものだ」


「……一部、輸送船に余剰自体はあるとは思いますので、疲弊した兵や負傷兵と共に、士気のない兵を優先して返すことも検討しておきましょう」


「頼む。はぁ……祖国の危機だというのに、全く以って士気の低い連中がいるもんだな」


「地元の人間や、士気が高く、志願したものは兎も角としても、全く関係の無い、それも式の低い、徴兵されたものは特に士気の低い傾向にありますね」


「まあ、考えれば仕方のない話ではあるとは思うが、それでも戦況に悪影響を及ぼすほどの士気の低下や無さにはほとほと困った話だ」


「このことについても、上層部に研究対象として、解決策などを調べさせる必要がありますね」


「やることが沢山だな。仕事は無い方が良いというのに。ただでさえ上層部は戦術や戦略の考察で、なにも無くても忙しいというのに」


「心中、お察しします」


「取り敢えず、撤退用の輸送船について、誤りが無いか、再度確認しておいてくれ」


「了解しました」


「全く、頭の痛い……」


司令はまたも溜息を吐いた。


同月13日 佐波鈴島北部 煤羅射陸軍要塞陣地


「遂に……か」


「はい。敵の主力も、恐らく既に出撃しているかと」


「今日を以ってサハリンの支配を一時的に停止する。本土に撤退だ。足止めの為の戦力以外は全て即座に撤退だ」


「……はい!」


「……はぁ。昇進がとても、難しいものになってしまったな……」


「司令?」


「すぐ行く。なんでもない」


この2日後、佐波鈴島は煤羅射の支配から浜綴のものへと移り、浜綴は佐波鈴島へ定常的な基地を据え、その為の工事も着工され始めた。


そして暫くして、浜綴は、佐波鈴島の近くから大陸、極東煤羅射に侵攻し、蓮都を南と東の海から、そして北からも攻め入る計画を立案し、軍部はそれを採択。いずれ実行されることとなったのである。

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