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凪の中の突風  作者: NBCG
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50話 東唐海決戦

明海八年 7月20日 東唐海 煤羅射帝国海軍 バルチック艦隊 第二太平洋艦隊

旗艦 クニャージ・スパルタク


「士気は低いな」


煤羅射帝国海軍第二太平洋艦隊旗艦、ブラギナ級前弩級戦艦四番艦クニャージ・スパルタクの艦長、イズマイロフ大佐は呟いた。


「ああ、確かにな」


そして、艦隊司令である、ザウル中将はそれに同意する。


「だが、まだ我々の第二太平洋艦隊はまだマシな方だ。第三艦隊など、やる気の欠片も見られない」


更に、第三艦隊の士気の低さも批判する。


「だからあれほど私はお荷物でしかない、役立たずの連中など、引き連れるなどしなくて良かったのだ!」


「司令……」


「第二太平洋艦隊すらここまでの士気の低さになるくらいなら、我々第二太平洋艦隊のみでバストーシナヤ・ジミリア軍港に入港すればよかったのだ。その上で、第一太平洋艦隊と合流し、浜綴に攻め入ればよかったのだ!」


「強く否定できないのが、辛いところです」


「それに、このような大艦隊、見つかるに決まっている。見つかったら待ち伏せをされ、ただでさえ士気の低い我々に、より優位な状況で立ち向かわせることになる」


「しかし我々は、進むしか無いのです。陛下から言われた通りに」


「まったく……軍人と言うのは辛いものだな」


「……何と言えば良いのか……」


「質問ではないから答えなくて良い」


「はぁ……」


近海 大浜綴帝国海軍 航行艦隊 旗艦 戦艦香椎


「偵察機より入電があっと、空母千鶴から伝達。南西120㎞に大艦隊を発見。戦艦級8隻、海防戦艦級3隻、巡洋艦級9隻、駆逐艦9隻、他全38隻です」


「こちらの戦力は、戦艦2隻、空母2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦21隻、他全33隻ですね」


「数的劣勢だな。航行艦隊、それも第一航空戦隊のみだから、ここでの戦力は劣るな……」


「後方に控える瀬保海軍基地所属艦隊を加えて、やっと数的劣勢を覆せると言ったところですね。しかしあるのは旧式の戦艦くらいなものです」


「しかしこちらには航空機戦力がある。バルチック艦隊には飛行機自体は存在しても、航空母艦が存在しないから、航空戦力を活かし、情報の優勢を持ち、航空支援を以ってこちらの戦力差をここで覆す。祖国を守るために」


「はい!」


「航空母艦らからはどうしていると?」


「すでに第一次攻撃隊を発艦作業中とのことです」


「そうか、分かった。こちらの砲戦の用意は出来ているか?」


「勿論です。いつでも砲戦が行える状態です」


「我々の救いは、ここで待ち伏せていれば良い事、そしてそれによって兵たちの士気が落ちない内に戦えるということだな……」


煤羅射海軍 バルチック艦隊 旗艦 クニャージ・スパルタク


「飛行物体を確認しました。例の“飛行機”とやらかと」


「その飛行物体の動向は?」


「しばらく現れてから、十数分で去って行ったようです」


「そうか……情報収集か……」


「はい。それが最も可能性が高いかと」


「なら、情報が筒抜けになっている可能性もある。陣形や艦の数を知らせられ、砲の向きを一定の精度を上げかねん」


「陣形だけでも変えましょうか?」


「いや、良い。この艦隊にまだ士気が残っていればやったのだがな……これを見ると……しない方がマシなのだろうな」


「あー……。ではこのままで?」


「頼む」


「了解いたしました」


「駆逐艦ウスコレンニィ(煤:速まる)より伝達。再び飛行物体を捉えたとのこと。今度はこちらにまっすぐ向かっています」


「……なんらかの攻撃を仕掛けて来るやもしれん。気を付けろ」


「飛行機如きに、こちらに大損害を与えるとは思えませんが……」


「念には念を、だ。情報がこちらに来ていないだけで、浜綴は飛行機を用いた攻撃方法を考えついたのかもしれん」


「はぁ……分かりました。兵たちにもそう伝えておきます」


「それに、情報を抜かれることに変わりはない。対海賊用の機関銃で落とせるものは落とせ」


「砲を用いなくても良いのですか?」


「どうせ大型の砲では砲旋回速度が遅くてまともには当てられんし、それでは砲弾がもったいないだろう?」


「了解しました」


「ただでさえ士気が低いのだ。効果的に運用しないと、負けるのは我々だということを肝に銘じろ。小国とは言え、我々がこれから相手にするのは、当時列強の唐国を二度も打ち破った国だ。結果的には勝っても、局地的には負ける可能性もある」


「ハッ!」


「駆逐艦ウスコレンニィから伝達!飛行物体から爆弾の様な物体が落とされたとのこと!飛行物体から落とされたものは着水と同時にマストに昇るほどの水柱を上げています!」


「やはり……飛行機から攻撃してきたか……!」


近海上空 大浜綴帝国海軍 航行艦隊 空母飛鶴所属 海軍航空隊 第二二航空群 

第二〇五戦闘飛行中隊 風切隊


「風切隊各機、爆弾、投下用意」


「二番機小川、投下用意完了」


「三番機生機、投下準備完了」


「四番機杉、投下用意完了した」


「とは言え、やることは蓮都近海のときと同じだな」


「小川大尉、作戦中だ。私語は慎め」


「りょーかい」


「敵艦隊上空に到達。投下地点だ。投下開始。投下!」


「投下!」


「投下」


「四番機杉、投下した」


「風切全機、全て投下完了したか?」


「二番機、全て投下完了」


「三番機、全て投下した」


「四番機杉、爆弾を二回投下したはずだが、どうやら左側がまだ落せていないみたいだ。再び攻撃を仕掛けることを具申する」


「各機、燃料は大丈夫か?」


「二番機小川、そもそもギリギリになる程少ない量はもとより積んでない。大丈夫だ」


「三番機生機、こちらも大丈夫だ」


「了解した。反転し、再び攻撃を仕掛ける。敵に飛行機は無いが、機関銃に狙われて落とされることが無いようにな」


「了解した。再び攻撃を仕掛けます」


「一番機より四番機、爆弾投下の符丁はこちらが出す。二番機、四番機の補佐を頼む。三番機、こちらの補佐を頼む」


「二番機小川了解。四番機の補佐をする」


「三番機生機了解した。命中の可能性が高まる瞬間を観測します」


「臨時作戦を開始する。尚、この作戦が失敗した場合は燃料の有無を問わず帰投する。いいな?」


「二番機小川、了解」


「三番機生機了解」


「四番機杉、了解した」


「確認完了。臨時作戦を開始する」


「「「了解」」」


煤羅射帝国海軍 第二太平洋艦隊 駆逐艦スポコイニィ(煤:長閑な)


「不謹慎だが、こうも水柱が上がっていると涼しいな」


「だな。俺は特に、北の方の出だから、この暑さには耐えられん」


「こんなところまで来るくらいなら、夏の間に北極海を通ってバストーシナヤに行けば良かったのにな」


「そうも行かないんだろう。海峡を通るにもいろんな許可は要るみたいだし、北極海も通るのにはある程度の技量が要求されるような場所らしいからな」


「面倒なんだな……南東から飛行機が!……過ぎて行った奴が帰って来ただけか?」


「いや、報告しよう!南東から飛行機!爆弾を再び落とす可能性あり!」


「本当に来るか?」


「帰るだけなら態々こんな、機関銃の弾丸に当たるかもしれないところなんて敢えて飛ぶかよ。攻撃するわけでもないなら」


「そうか……悪かったな」


「来るぞ!……飛行機が何かを落とした!衝撃に備え!」


そして、艦に大きな爆音が轟く。


「艦前方に被弾した模様!現状を報告!」


「艦首がやられただけだ!誘爆も起こらないだろうし、砲も一部の機関銃以外は問題ない!死傷者はまだ分からん!」


「了解した!戦闘不能になった者が居れば、適当に現場で役割を補い充てろ!いいな!」


駆逐艦スポコイニィに当たったのはたった一発だが、それはこの駆逐艦を混乱に陥れるには十分なものであった。


同海域上空 風切隊


「こちら四番機杉、爆弾は投下できたようだ」


「こちら隊長機、爆弾の投下を確認した。火力の少ない三号爆弾だが、駆逐艦と見られる艦に命中した。沈めることはできて無い様だが、大幅な戦力低下を見込めるだろう。一個戦闘飛行中隊には十分な戦果だ」


「三番機生機。こちらでも確認した。勲章ものだな」


「二番機小川。杉大尉、おめでとうございます!」


「照れるな……」


「隊長機から全機、気を緩めるな。未だ作戦中であり、作戦空域の中だ」


「失礼、相坂隊長」


「風切全機、帰投する」


「「「了解!」」」


同海域 航行艦隊 旗艦 戦艦香椎


「飛行機部隊の支援により、敵の艦隊の一部に被害があり、混乱が生じている模様。これは好機かと」


「そうだな。これより主力艦による砲戦を開始する。本部への伝令の符丁は『敵艦隊、主力艦艇ニヨリ見ユトノ警報ニ接シ航行艦隊ハ直チニ交戦シ、コレヲ撃滅セントス』だ。送れ」


「了解……。最後に『本日天気晴朗ナレドモ浪高シ』とでも加えるか……?」


「司令、もうすぐこの艦からでも目視にて確認できるかと」


「分かった。全ての兵装の無制限使用を許可する」


「全兵装、無制限使用の許可を確認。各艦に伝令」


「了解しました」


「前方に敵戦艦の主砲によるものと見られる水柱が昇りました」


「戦闘開始!Z旗を掲げよ!『皇国ノ興廃、コノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ』、だ!」


「「「「「応!!!」」」」」


これにより、大浜綴帝国海軍の戦艦香椎含む各艦は、非常に戦意が高揚したものとなった。


同艦隊 空母飛鶴


「どうやら、主力が交戦を開始した模様です」


「まあでも、自分たちがやることは変わらん。風切隊、出るぞ」


「了解!」


近海 煤羅射帝国海軍 第二太平洋艦隊 旗艦 クニャージ・スパルタク


「こちらの主砲弾、未だ一発も当たっていません」


「こちらの損害と、敵の損害を報告せよ」


「こちらの損害は、完全行動不能2隻、大破1隻、中破1隻、小破10隻以上です。戦艦、巡洋艦の被害は有りませんが、駆逐艦の大半が行動に支障が出ている模様。敵の損害は、未だ小破複数隻とだけ」


「拙いな……沈んだ船がこちらには無いとは言えど、戦力で言えばこちらが不利じゃないのか?」


「正直言って、その通りかと。こちらの艦隊のほぼすべての艦が、飛行機からの爆弾を恐れ、注意散漫に。そして指揮系統の乱れが見られます」


「敵の飛行機、第二陣、来ます!」


「回避行動をとりつつ、戦線からは離脱するな!」


「了解!回避行動を取れ!主砲は撃ち続けろ!牽制でも構わん!こちらに向こうからの主砲が当たらせない様にするだけでも良い!」


「一等巡洋艦ダニーラ・マヌィチスコイ、敵砲弾により被弾!」


「損害は!?」


「不明です。誘爆の恐れありと」


「敵飛行機第二陣、爆弾と見られるものを投下!投下!」


「巡洋艦ダニーラに爆弾が!」


「一等巡洋艦ダニーラ・マヌィチスコイ、敵飛行機の爆弾が直撃!弾薬庫の近くに落ちたようだ!」


「燃えているぞ!」


「しかし今、こちらから救援に向かうことは……!」


「不可能ですね。それよりも今は」


「分かっている。攻撃こそ最大の防御だ。攻撃を加え続けろ!」


「了解。攻撃を続けます」


「チィッ……」


「巡洋艦ダニーラ・マヌィチスコイ、爆発しました!爆発の原因は不明!現在、巡洋艦ダニーラは戦闘行為を行っていません!」


「巡洋艦一隻の戦闘能力が一時的に失われたか……これは痛いぞ……」


「駆逐艦ビズモルヴィリェ(煤:静寂な)、敵戦艦の主砲弾によって大破!繰り返す、駆逐艦ビズモルヴィリェ、大破!沈没の恐れあり!」


「海防戦艦アドミラル・ウルマノフ、被弾!」


「巡洋艦オブラソワ、被雷した!機雷に接触した模様!」


「戦艦シモン・ヴェリキー被弾!甲板が燃えている!」


「次々と主力艦艇に被害が出始めています!」


「敵魚雷艇も次々と現れています!」


「駆逐艦は何をしている!魚雷艇を駆逐しろ!」


「敵飛行機の攻撃により、そこまで意識が回っていません!手一杯です!」


「クソが……」


「司令!敵艦がこちらに当ててきていますが、こちらは当たられていません!当たっても、致命傷までには至っていません!」


「全艦、敵艦隊旗艦と思われる戦艦に突撃せよ!旗艦がやられれば、敵の士気も下がる!何としても、我々はここで負けるわけには行かない!」


そして海戦は、全ての艦の砲火力の最大出力がぶつかる熾烈な戦況へと移った。

良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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