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凪の中の突風  作者: NBCG
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49話 佐波鈴、戦場と成りて

明海八年 5月16日 佐波鈴島 上空


現在、繰鈩諸島においては煤羅射がその領有権を主張しているが、はっきり言って緒穂湊の所属の駆逐隊程度の戦力でも対応可能なほどの戦力しか煤羅射は投入出来ていない。


勿論、先の蓮都近海の海戦に於いて、煤羅射が大打撃を受けたため、艦隊が到着するまで防戦を敷く構えであるので、大規模な戦力投入は行っていない。


しかし、ここ佐波鈴については違う。


煤羅射について、有力な軍港を置いている場所ではない。近くの蓮都品野染里軍港が最も近い軍港であり、浜綴についても有力な軍港は近くには存在せず、最も近いのは先に言った緒穂湊海軍基地である。


しかしながら、煤羅射は艦隊到着まで大規模侵攻は行わないにしても、手薄な北海島北部をじわじわとでも攻めない手は無い。そのための佐波鈴の基地化は急務の課題であった。


そして浜綴に於いては、煤羅射が煤羅射の西側の艦隊が到着しないと見て、近場の手薄な佐波鈴島を攻めない手は無いと考えたのである。


そして煤羅射は、飛行機の戦力化と並行して佐波鈴の基地化を進め、佐波鈴から北海島北部への戦力の逐次投入を決定したのである。


浜綴の現地陸軍が抵抗するも、数少ない規模しかない現地陸軍は劣勢に立たされ、陸海合同の艦隊が支援に向かい、何とか北海島北部から煤羅射の海軍陸戦隊を殲滅したのであった。


それが今月の11日のことである。


陸海軍は煤羅射の兵士が来た場所を佐波鈴と特定し、今度はその投入した陸軍戦力を佐波鈴島に投入することに決定。


大浜綴帝国海軍陸戦隊を投入後、同陸軍による佐波鈴島侵攻を決行するのであった。


しかし、航空支援を行うにも、同島での航空基地設営までの航空支援戦力として、海軍の空母からの支援を行うことが決定されたのであった。


「ふぁ~~~……寒い上に暇だな」


「否定はしないが今は任務に集中しろ、小川。もうすぐ爆弾投下地点だ」


自分たちは、臨時に構築された佐波鈴にある煤羅射の基地への爆撃である。


ガトリングなどといった対空兵器として使える兵器すらない為、一方的な爆撃である。


自分たち戦闘機部隊が爆撃に駆り出されているのは、戦闘機黍風が爆弾を搭載できるためである。


爆撃機真山は大型で、空母に搭載できる数が限られる為、爆撃に利用できる戦闘機部隊が駆り出されている。


「煤羅射の軍基地と見られる人工物を目視にて確認」


「爆弾投下用意」


「爆弾、投下準備」


「投下準備完了」


「投下まで……3……2……投下……今!」


風切隊四機全機から、三号爆弾計八発が投下される。


「投下完了」


「爆発を確認」


「目標への着弾は?」


「外したのが多いな……当たったのは二発、至近弾を入れても三発だ」


「自分たちが爆撃部隊ではないのを込みでも、命中率が低いな」


「対空兵器が無いからな……」


「投下の基礎的な技術が足りないのかもしれないな。普通に考えて」


「訓練に組み込むか?」


「まさか。今は戦争中だ。そんなことが可能なのか?こんなにも忙しいのに……」


「なら戦争後は?」


「有っても良いかもしれないが、戦争後はその前に搭乗空母の変更があるから、その習熟訓練の後になるから、かなり先の話になるな」


「あぁ……それがあったか」


「考えるのはその後でもいいだろう?取り敢えず、今は帰投する」


「「「了解」」」


同年 6月2日 空母飛鶴 第一会議室


「諸君、楽にし給え」


いつものように、司令からの連絡である。


「海軍による対佐波鈴への陸軍上陸支援作戦は以上を以って終了とする。情報によれば、煤羅射の西側の艦隊、バルチック艦隊がこちらへ向かっているとのことが以前よりも伝えられていたが、もうすぐ蓮都品野染里軍港へ到着との見通しだ。ここ、緒穂湊の防衛は旧四四艦隊計画艦全ての完全習熟終了による戦力化より、彼らへ佐波鈴戦線の海上護衛等の任務を引き継ぐことになった。彼らもすぐに緒穂湊海軍基地に着くだろう。そして我々は本来の航行艦隊としての任に戻り、そして海軍主力として、バルチック艦隊を迎え撃つ。尚、この戦いは、瀬保海軍基地所属艦隊が基地防衛の為、後方に展開する形となる。そして我々は浜綴海経由で西海本島南部に展開するため、今すぐそちらへ急行する。そして、その道中、煤羅射の蓮都品野染里軍港の残存部隊による抵抗も見られる恐れがある。全員気を付けろ」


「「「「「応!」」」」」


「そして向かった先で待っているのは列強、それも大国の中でも比較的強力な部類に入る国家の主力艦隊が二艦隊だ。自身をもって戦い、そして打ち勝て。私からは以上だ」


この言葉で、この部屋にいる全員が気を引き締めることとなった。


寒い戦線であった佐波鈴から抜け出せるとは言え、それを喜ぶものは一人としていなかった。


翌日 同3日 空母飛鶴 飛行甲板


「よう相坂、演習お疲れ」


「応、倉田か」


「ったく、上層部も俺たちをこき使ってくれるねぇ~」


「仕方ないだろ?そのための航行艦隊だ」


「そりゃそうだし、戦争中だからそういうのは分かるが、それでもこうも忙しく働かされると本当に疲れるな」


「まあ、そりゃな。自分は演習があるし、整備士に休みは基本無いしな」


「だが、相手は空母の一つもない艦隊なんだろ?演習なんて意味あるのか?」


「敵も対空兵器として使えそうな連射できる機関銃くらいはもっているだろう。その対処の為にも演習は必要ってことだ」


「そのために空戦の演習はいらないような気もするがな……」


「空戦の演習を行っていないと、いざというときに動けなくなってしまうからな」


「そういう意味もあるのか」


「意味のない演習なんてないだろう?」


「そう言われればそうだが」


「それに、この戦いに生きて帰れば英雄だな」


「大国列強の強大な艦隊を押しのけることだからな、それは」


「だから、名誉にもなるしな」


「整備士に名誉は関係ないと思うがな」


「戦闘手当位なら付くだろ?新婚だから何かと入用だと思うが」


「それもあったか、忘れていたな。そう考えると戦い自体も悪くないかもな」


「現金なやつだな……」


「お前の言った通り、新婚だから入用なんだよ。それに、もし子供が生まれていたらと考えるとな」


「あー、確かに遠いし、自分たちは移動が多いから手紙の類が全然来ないもんな。知らぬ間に子供ができることもあるか……」


「父親の顔の知らない子供は作りたくはないからな。頑張ってくれよ、相坂」


「何で自分なんだよ」


「お前が頑張らないと、被害に遭うのは第一に俺たちの気もするが」


「そうか……まあ程ほどに頑張るよ」


「全力であたって欲しいが」


「とは言え、無理な時は無理だからな」


「正論だがなぁ……」


「絶対を保証できない約束をしない主義でな」


「そうかよ」


「それに、今の航行艦隊は煤羅射の艦隊に比べたら数的に不利だと思うしな」


「緒穂湊の戦力化もあるからなぁ……」


「ま、新四四艦隊計画艦の戦力化を待つばかりだな」


「だな」


こうして、航行艦隊に名前が戻った彼らは、まだ見ぬ強大な敵へ向かい、訓練、演習を積むのであった。

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