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凪の中の突風  作者: NBCG
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48話 飛行機対飛行機

明海八年 4月28日 バストーシナヤ・ジミリア港 近海上空


大浜綴帝国海軍 臨時緒穂湊所属艦隊 空母飛鶴所属 海軍航空隊 第二二航空群 

第二〇五戦闘飛行中隊 風切隊


『……こちら、空母飛鶴所属、第二〇一偵察飛行中隊、海鷹隊。哨戒に当たっている近くの戦闘機部隊全機に連絡。敵の飛行機に見つかった。現在艦隊に戻っているが、彼らもこちらに向かっているようだ。振り切れてはいるが、いずれ艦隊に見つかる可能性が高い。支援を頼む』


「……だってさ、隊長」


「風切隊全機に連絡。海鷹隊を支援する」


「「「了解」」」


……。


「前方に不明機」


「敵機の可能性、海鷹隊の可能性、どちらの可能性も考えられる。気を付けろ」


「言われなくても」


「国章確認、浜綴のだ」


「こちら第二〇五戦闘飛行中隊、風切隊。そちらは海鷹隊か」


『そうだ。我々はこれから艦隊に帰投する。追いかけて来る奴らの対処を頼む』


「了解」


『健闘を祈る。では』


「……ふぅ、そろそろか」


「だな」


近辺空域 煤羅射帝国陸軍 極東第一飛行群 第二飛行偵察隊


「さっきの飛行機、完全に見失ったな」


「これ以上先に行かずに、戻って報告に行った方が良いんじゃないか?」


「いや、できるなら、敵の飛行機が、どこを基地にしているか知りたい。海の小島に滑走路を造られていて、それを見落としたら、戦略的に大敗だ」


「それもそうだが、……待ち伏せに遭うかもしれないぞ?」


「大部隊で来たら引き返すが……」


「あいつらは俺たちを引き離した。敵の飛行機が俺たちのよりも優れていることは明確だ」


「まあ、そのときはそのときだ」


「楽観的だな」


「飛行機分野だけが優れているとは言え、小国の浜綴だ。我々が総合的に優れていることに疑いはない」


「まあ、隊長がそう言うならそうなんだろうな」


「だからこそ心配するな。過度な心配は全力を阻害するぞ」


「了解。……不明機が四機、こちらに向かってきています」


「先ほどと同じ数……引き返して来たか、別の部隊か……」


「どうしますか?隊長」


「3対4、数的不利だが、この程度なら、そこまでの差は無いと考える。敵の援軍が来たら引き返すことになるだろうが、それまでは彼らを迎え撃つ」


「了解。敵の援軍が来るか、敵を殲滅するまで戦えばいいんですね?」


「そういうことだ」


「全機、自由行動を認める。敵を殲滅せしめよ!」


「「了解!」」


同空域 風切隊


「不明機、浜綴機の可能性無し。……初めて、飛行機と戦うことになるな……各機、交戦を許可する!交戦開始!」


「応よ!小川交戦開始!」


「杉、交戦を開始する」


「生機、交戦開始!」




明海八年、四月二十八日、蓮都品野染里港から東南東におよそ20㎞、浜綴海上空にて、この世界で初めての、飛行機対飛行機の空戦が始まった。




互いの飛行機は互いに撃たずに一度すれ違い、風切隊は上昇し、煤羅射の第二飛行偵察隊は右や左へ旋回した。


杉機が上昇後旋回し、杉はあたりを見渡した


「こちら杉。敵機三機は連携を取っていないように見える。こちらは上から、一番近い奴を狙う」


「相坂了解。こちらは最も南側の一機から狙う」


「こちら小川。じゃあ俺は北側の一機から狙う」


「こちら生機。では真ん中の機を狙う」


「相坂了解した」


「小川了解」


「杉、了解した」


風切隊は上空に上昇してから散開した。


それぞれがそれぞれの機を狙い、向かって行く。


相坂は、南の機を狙い、旋回する。


旋回中だった煤羅射の飛行機は、機動性の低さから、なす術もなく、すぐに背後を取られてしまう。


「照準に捉えた。撃ち方用意」


相坂は引き金を引く。


「敵機一機を撃破、爆発し炎上、墜落している」


呟くように報告する。


「こちら相坂、小川の援護を行う。杉少尉、生機少尉の援護に回ってくれ」


「杉、了解した。生機機を援護します」


「頼む」


相坂は小川の近くへ行くために旋回し、杉も上空から生機の方に旋回と降下を始める。


同空域 煤羅射帝国陸軍 第二飛行偵察隊


「一機やられたか……隊長も俺も狙われている……どうすれば……」


煤羅射の飛行隊は三機一隊としているため、一機の喪失は手痛いのである。


「くっ!後ろに敵が!」


狙われた隊員の一人は撃たれない為に急旋回を行う。


「まだ付いてきやがる!」


彼の乗るPp-1ゴルボイは、設計は旧式の天風とほぼ同じである。


機関の馬力出力は旧式天風より少し劣り、機動力も旧式天風より少しだけ改善しているか、という程度のものである。


それで最新式である、黍風には性能として、勝る点は重量と通信装置の有無から来る生産しやすいかどうかの差以外は無いと言っていい。


もちろん、機動性についても同様である。


「くそっ!これで!」


彼は桿を反対に傾け、逆方向に旋回する。


その機動性の低さを戦術で補おうとしている。


「もう一機を振り切れば!」


そして完全に振り切る為に、旋回から急上昇に切り替え、再び急旋回を行う。


同空域 風切隊


「操縦技術は未熟だが、それでも飛行機の歴史が本当に始まったばかりの国の飛行機乗りとしては上手い方か?」


杉は言葉に出して考える。


「そうだな。俺は低空で待っている。その機を追いかけて低空に追いやってくれ」


そのほぼ独り言に、生機少尉が答える。


「了解」


ただ淡々と、戦闘が行われている。


同空域 煤羅射帝国陸軍 第二飛行偵察隊


「上手い……敵機役をやっていた、どの教官殿の機体よりも!」


第二飛行偵察隊の隊長は焦っていた。


「機体の性能、飛行機乗りの腕、何もかも違い過ぎる……」


追う機を振り切る為に、必死に操縦桿を動かし続けるが、それでも敵機を振り切れない。


「アイツは……まだいるか……」


隊長は生き残っていた隊員に意識を向ける。


「こいつらを振り切れなくても、アイツを追っている機を落とせれば!」


隊長はそう思い、操縦桿を傾ける。


「!?」


その時、目の前にある風防が、真っ赤に染まった。


同空域 風切隊


「よっしゃ!小川、一機撃破!」


「残るは一機。杉、生機、そちらはどうなった?」


「こちら杉、こっちの敵機、低性能機ながら頑張っているな。逃げることに精一杯になっているんだろう。こちらの背後を取ろうという気が見えない。どうする?このままでも恐らく敵機は逃げるだけだと思うのだが」


「いや、ここで片を付ける。活動を悟られない為にな」


「了解した。どうする?」


「小川、杉と生機と共に追い込んでくれ。そちらで片が付くなら片を付けてくれ。自分は敵機が追い込まれてスキが生まれたところを狙う」


「小川了解。杉機と生機機を支援する」


同空域 煤羅射帝国陸軍 第二飛行偵察隊


「隊長機が……!クソッ!」


逃げながら、彼の隊長の機が煙に包まれているのを確認する。


「逃げて、報告しないと……!」


操縦桿を傾け、ジグザグに逃げる。


「くっ……もう少しだけ……!」


時々弾ける、敵の弾丸が期待を跳弾する音がさらなる恐怖を植え付ける。


「?」


そんな中、機体に影が覆った。


「……!」


彼が最期に見たのは、自分の機の上に、宙返りをする敵機の機体がこちらに向き、そしてその光る銃口であった。


同空域 風切隊


「敵機全ての撃破を確認。全機、居るな?」


「二番機小川、居ます」


「三番機生機、居ます」


「四番機杉、健在」


「実戦だってのに、今日は小川が居るな」


「笑い事じゃねぇ……」


「ならいつも戦い終わった後も居るようにしろ」


「へいへい」


「交戦終了。全機帰投する」


「「「了解!」」」


浜綴と煤羅射の間で行われた、初の飛行機同士の空対空戦闘は、浜綴の圧勝と言う形に終わった。


煤羅射帝国陸軍では、偵察に出ていた第二飛行偵察隊の記録が、今日この日を以って不明となり、軍、特に飛行機部隊の責任者達は血眼になって捜索するのであった。

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