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凪の中の突風  作者: NBCG
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47話 煤羅射の飛行機、戦力化

明海八年 3月2日 極東煤羅射 某所


「ふぅ……なんとか、Pp-1の量産体制を完成させられるな」


「ええ。首都の方では十分な戦力として仕上がったものが飛行機部隊としての能力はあるようですが、こちらではギリギリと言ったところしょうかね?」


「そうだな。こちら側の陸軍に納入されているのは、見本と共に送られてきた数機と、量産体制が整っていないときに製作した数機、それに初期量産型の十数機程度ですからね」


「浜綴は流石に飛行機を作った国。戦力としてはあと二百から三百程度は欲しいところだろうからな」


「最低限欲しい数を二百として、今までに生産した数を出すと大体あと……150程度ですか?」


「ああ。正式量産型は確か二十機ほど作ったからな。それくらいだろう」


「パイロットも首都の方から来て、習熟自体はほぼ完成しているらしいですが、数が圧倒的に足りませんよね?」


「そこは現地の軍人どもがどうにかするんだろ?足りない分は俺たちが作るしかないが、そうじゃない部分は俺たちが関わるべきところじゃない」


「そうですね、俺たちは自分の仕事をするのみですね」


同年 3月17日 極東煤羅射 某陸軍基地


「いいか!?聞け!新人共!貴様らは今までの座学で見せた、この飛行機、Pp-1、ゴルボイに乗ってもらう!仕事はさっき言った様に偵察だ!座学で習った通り、こいつで偵察し、敵の情報を探るのだ!」


煤羅射人は基本的に冷めている印象を他国人から得られるらしいのだが、この教官らしい軍人は如何にもな熱血漢である。


「我々が今戦っているのは浜綴とか言う小国だ!しかし!小国だと侮ってはいけない!彼の国は、この飛行機というものをいち早く生み出し!当時列強の唐国を二度も破った国だ!一日の長がある!だからこそ!我々が、その飛行機の優勢を覆すべく!戦うのである」


「あの~」


一人の若い新米軍人が手を挙げる。


「どうした、新人!?」


「我々の任務は偵察ですよね?」


「ああ、そうだ!」


「ならなぜ、“戦う”と?」


「それはだな、もしこちらの飛行機による偵察を行っていたとき、偵察を行う飛行機と遭遇した場合、敵はどのような行動をとるか、分かるか?」


「我々の偵察を妨害する、ですか?」


「そうだ。その妨害を対処するために、我々も戦うのだ!」


「しかし、敵は交戦の意思があるのかどうかは……」


「馬鹿者!そんなの、極東の子猿どもが、互いを尊重するといった文明的なことをすると考えるのか貴様は!?」


「い、いえ……」


「野蛮な子猿ども必ず我々の偵察の妨害をするために、攻撃を仕掛けて来るだろう!だからこそ!我々が先手必勝であると!攻撃をこちらから仕掛けるのだ!分ったか!?」


「は、はい……」


「声が小さい!」


「はい!」


「そうだ、それで良い」


教官らしい軍人は一呼吸置いた。


「で、だ。そんなお前らには、今日からのあの飛行機に乗ってもらう。我々教官の指示に従って、な。まあ、この国でも飛行機が作られたばかりだから、心配するかもしれない。だが!我々も初期生産型や初期量産型の飛行機にて、先に練習してある。指導ができる程度にまではな。だから安心して指導を受けてくれ。では、これより飛行機を使った訓練を始める!」


同年 4月20日 極東煤羅射 同陸軍基地


「貴様ら新米も今日から憎き浜綴を滅ぼすために、戦場に出て戦うことになる。いいか!いくら子猿共が相手でも、敵は我々より飛行機の習熟が完璧であると考え、最大の警戒と、自分を持って戦え!いいな!?」


「「「了解!!」」」


「解散!」


「「「ハッ!!」」」


……。


「エゴロフ少尉、一か月丸々実技演習を行わせましたが、彼らは大丈夫でしょうか?」


「我々が知ることではない。我々はただ、新兵を飛行機乗りとして、十分な技量を持つ者に育て上げる事のみだ。そこに一切の感情を持つのは意味がない」


「そうですか……」


「こちらの飛行機部隊は飛行機も足りないが、飛行機乗りも足りないからな。育て上げないといけないことに変わりはないな」


「教官は我々のみでしょうか?」


「特に優秀なものは教官にしても良いが、それはある程度部隊が整ってからだな。今は数十人を四人で育て上げていること自体無理があるが、それでも現場はもっと飛行機乗りを欲しているはずだからな」


「そうですね……。それにしても、我々も数奇な運命にあるものですね」


「そうだな。我々は一兵士……それも兵学校の卒業時に下から二番目の成績の者ばかりだ」


「まさか最新兵器の教官になるとは夢にも思いませんでしたね」


「ま、上はある種の左遷だと考えているはずだけどな」


「保守的な上層部は新兵器の投入で、自身らが責任を負うのを嫌がりますしね」


「これが栄えある煤羅射帝国陸軍か……笑えてくる」


「ならせめて笑ってくださいよ」


「まさか。まあ、我々が実戦に駆り出される事態にでもなったら笑うさ」


「……」


「笑えないか?」


「ええ」


「飛行機分野では我々が後れを取っているのは事実だしな。駆り出されるのも案外早いのかもしれないな」


「冗談じゃないですね」


「事実だからな」


「とにもかくにも、育て上げた連中が確実な戦果を挙げることを期待するのみだ」


「確かに」


「さ、次の新兵どもを叩き育てるとしようか」


「本当は教育期間に二ヶ月は欲しいところですがね」


「そうは言っても敵は待ってはくれん。仕方ないだろ」


「はぁ……考えるだけでも疲れますね」


「考えて疲れるなら、考えないことが一番の解決法だな」


「考えの解決法が出ていないのが欠点ですがね」


「案外時間が解決してくれる場合もある」


「こういう場合は稀では?」


「解決法が必要でも、考えても仕方のない事だってあるだろ?」


「本当に考えるだけで疲れますね」


「なら考えずに次の新兵を育てるだけだな」


「はぁ……そういうことにしておきますか」


同月 28日 極東煤羅射 バストーシナヤ・ジミリア港 近海上空


「敵の飛行機も船もないですね。隊長」


「しょうがないさ。浜綴は今、繰鈩諸島の防衛と、佐波鈴島の侵攻に力を入れているという情報があるから、こちらには来ないんじゃないか?それに、敵がいないことは良いことだ」


「そうですが……なぜここに来ないんでしょうか?」


「これは俺の考えだが、流津・流先の機雷敷設に失敗が関係していると考えられるかもな」


「それで恐れていると?」


「それもあるだろうが、態々比較的に遠い敵地に向かって行くことより、近いところに侵攻したり、遠いところに来たのを迎え撃ったり、そうした方が早いという考えがあるんじゃないか?」


「だが、海軍が港の近海で戦ったことを考えると、そうも言っていられないんじゃないか?」


「……もしかしたら、その海戦で思ったような戦果が得られなかったか、逆に、これで我々の侵攻を遅らせるには十分という戦果を挙げたかのどちらかじゃないか?」


「後者なら、いつ来ても可笑しくはないと思うが……」


「ま、遭ったときは遭ったときだ。戦うしかないだろうな」


「いやだな……あれはなんだ?」


「……言ったそばから……敵機と思われる。迎え撃つぞ!」


「了解!」


こうして、初の飛行機対飛行機の空戦が着々と、始まろうとしていた。

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