42話 力、空気、風
明海七年 8月13日 高須賀海軍基地
ここで、船の進水式が行われていた。
新四四艦隊計画の空母であり、その全二隻の計画艦の二番艦。
真龍型航空母艦、二番艦浜龍。
搭載数、75機(補用含む)、飛行甲板260m、最大馬力152,560shp以上、最大速度34.0ノット、艦橋煙突一体型、艦橋左側、機銃は25粍高角機銃3連装4基、連装5基、単装4基の計26挺、爆雷6個を備える最新型の航空母艦である。
正式には、空母真龍の艦橋は右側であるので、この船は準姉妹型であり、改真龍型空母とも呼ばれている。
辰見、辰飛と比べ、搭載数がおよそ倍ほどにまでなっている。
この船が、新四四艦隊計画最終計画艦であり、やがて、次の艦隊計画が始まろうとしていた。
「六八艦隊計画……ですか……」
「はい。主力艦六隻、補佐艦艇八隻による計画です」
「詳細は?」
「もうそろそろ退役の時期に差し迫る藤型戦艦までの代替として、戦艦二隻、空母四隻を主軸とした計画と、その護衛、または駆逐艦、護衛駆逐艦の指揮としての巡洋艦八隻の計画です。また、巡洋艦の計画は、一等巡洋艦と二等巡洋艦を4:4の割合にするのか、それとも、2:6の割合にするのかは未だ決定するに至っておりません。また、この計画の中にはさらに、以前の計画には無かった、新型の駆逐艦、護衛駆逐艦、補給艦、潜水艦、掃海艇などの計画も含まれております」
「しかし何故今だ?もう少し遅れたところで変わることもあるまいに。今の計画が一段落して、造船所にも休み位はやらんと……」
「これを見て下さい」
「なんだ……?」
「この資料の通りです」
「……嘘ではあるまいな?」
「こんな首の飛ぶような嘘など吐きやしませんよ」
「本当か……しかし、」
「ええ。あの戦争の混乱に紛れて、煤羅射と藩泥流が飛行機を手に入れていたとは……。しかも報告に依ると、その飛行機は当時最新式の、『天風』に酷似していたとか」
「多くの爆撃機、多くの戦闘機が失われたからな、飛行船によって。爆撃機に酷似した飛行機が無いのは恐らく、大きく、重くて運ぶことが出来なかった可能性も考えられるな」
「この現状を政府は重く受け止め、特に煤羅射に対する牽制として、先の計画が生まれた、ということになります」
「まったく、先が思いやられる」
「同感です」
「はぁ……取り敢えず、その計画には同意するが……予算は大丈夫なのか?」
「政府は得た土地の開発、場合によっては飛行機を売ることによって予算を稼ぐ方針らしいですが……」
「技術流出が懸念されるな」
「しかし、目前の脅威に対応しないと、我が国の明日は暗いものになるかと」
「そうだな」
同年 9月18日 空母飛鶴 第一会議室
「単刀直入だが、ここに君たちに集まってもらったのは、この空母を含め、重要な機密に関わる情報を知らせ、また君たちにその決断をしてもらいたいからだ」
会議室が騒めく。
「静かに。まず始めに、あと二年でこの型式の空母、千鶴型全ては旧式化し、一番艦千鶴及び二番艦飛鶴、つまりこの船が練習空母になることが決したからだ」
再び会議室が騒めいた。
「静かに!まったく、君たち学生じゃないんだから……」
司令は溜息を吐いて再び話し始めた。
「そこで、次期空母開発が確定されたが、君たちには異動に対する考えが問われることとなった。一つ、この空母に留まり、航空教官として発着艦訓練をする航空学生を助ける。一つ、新型空母に乗り、最新鋭の空母で最前線に立つことになる。一つ、辰見やら、最近就役した真龍型やらに異動になる。一つ、空母を降りて、地上勤務になる。地上勤務は基本的に航空教官か航空基地防衛配備かのどちらかだ。今年の末まで受け付けるが、それ以降は受け付けないし、願いが出なければこちらで調整する。また、次期空母開発については口外を禁ずる」
今回の発表は珍しく短く終わったが、中々に重要な情報が来た。
同日 休憩室
「どうする、隊長」
「自分は次の空母に移ろうかと思うんだがな。教えるのはあまり上手くないし。小川は?」
「俺もだ。教えるってのじゃないな」
「俺もそうだな」
「ということは、皆、新型の空母に移ることでいいか。俺も教えるのは少し、な」
生機大尉と杉大尉も教えるのが苦手らしい。……皆、感覚派ということなのだろうか?
「全員異動ということで良いか?」
「「「応!」」」
ということで、またしても早く決定したのであった。
とはいえ、新型空母の二番艦が就役するまではここの配備ではあるが。
同年 10月 煤羅射 某所
「陛下、あちらに我らが作り上げた、所謂『飛行機』があります」
「ほぅ……飛ぶのか?」
「も、勿論でございます」
「若しや唐や浜綴の技術を使ってはおるまいな?」
「勿論にございます!確かに、空気より軽いものを使わずに飛ぶという考え自体は浜綴の飛行機からのものであると言えましょう。しかし!我らが開発し、この形に至ったことは、我らの知恵、叡智の末にございます」
「よかろう。なら、開発を続けよ。資金の面では我々が工面する」
「ハハッ!有り難き幸せ!」
「そしてこれらの量産を急げ」
「と、言いますと……?」
「最近、雄州の経済学者の本に絆されて、共産主義とかいう思想から、一部の人間が集会をしたりしているそうだ。しかも、我々を倒さんが為にな」
「なんとそれは……」
「政は簡単では無いのにな……まるで私が豪遊するために金を集めているように一部の市民たちは考えているのだろう。先の戦艦の反乱も同思想を持った者どもによるものだと分かった」
「それとこれと、どのようなつながりが……?私は政に疎いので、お伺いしたいのですが」
「先も言った様に、そうなるということは、市民に不満が溜まっているからだ。つまりそれを解消させれば、大半の違法な集会や、私を倒す計画といったものなどは自然に消滅するはずだということだ」
「つまり……」
「内部への不満を外部へと向ける」
「そ、それはもしや……!」
「今はまだ大まかな概要しか考えてはおらん。だが、これを口の外へ出すなよ」
「勿論にございます……」
「では、これからも飛行機とやらの開発、励み給え」
「分かりました」
「因みに、この飛行機には名前はあるのか?」
「いえ……便宜上製造の代表者としたこの私の名前、ポポフから、Пп-1(Pp-1)と名付けました」
「ほぅ……。別の名前、愛称を私が付けて良いか?」
「勿論にございます!」
「ではこれは……Голубой(Goluboy:ゴルボイ:空色)だ」
「陛下直々により命名頂くなど、感謝の極み!」
「兎も角、この飛行機が浜国に負けない様に生み出し続けるのだ」
「ハッ!」
この頃より、風の噂で煤羅射が飛行機技術を盗んだやら、戦争を考えているやらと、多くの考えが両国の土地を駆けまわり、両国間の関係は徐々に冷えたものへとなっていくのであった。
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