33話 年末年始
明海三年 12月24日 相坂家
今日は少しばかりの休日である。
今日と明日25日に休日を取れたのは、アイナの実家、フレーザー家はイェムス教であり、イェムスの誕生日である明日25日を、Xmasとして家族を集めて祝うからである。
前年に於いて自分は第一次浜唐戦争後のごたごたと、後輩となる飛行機乗り達の為の教科書の作成の助言などで結局年始三が日くらいしか休めなかった。
今年はそれを今年から入った新人にも任せてあるため、この日に休みを取ることが出来たのである。
そして今は、フレーザー家がこの家に来るため、その準備を行っている。
椅子やら何やらは、既に準備しておいた。
今日用意するのは主には料理と飲み物、酒などである。
料理に於いては煮込む料理などを準備して、その他の料理は当日作る予定である。
目の前の鍋で、鶏の腿肉が茹でられている。
アイナ曰く、七面鳥の丸焼きを浜綴りに来るまでは毎年食べていたようだ。
調べてみると、七面鳥とやらは北銀連邦が独立した時の独立祝いのものとして食べられたものらしいが、その文化が北銀だけではなく、雄州にも伝わって祝いものとして食べられているらしい。
というか、大成帝国からの独立で、その文化が大成帝国に伝えあっているというのは成会矛人として良いのだろうか?
まあそれはそれとして。
残念ながらこの浜綴と言う国には七面鳥の丸焼きという物、若しくは七面鳥丸々一匹という物を取り扱っている店は少なく、またここ高須賀海軍基地の近場にはそのような店は存在しない。
その代わりと、鶏の腿肉が茹でられているという訳である。
今作っているのは鶏のカレー煮込みと言う料理である。
カレーとは、東音打から取り寄せたと言われる香辛料を多く混ぜ、煮込む料理のことを言う。
音打では普通の料理らしいのだが、ここでは手に入りにくい上、香辛料ということもあり、
薬局で扱われる高額の商品でもある。
海軍少佐の飛行機乗りともなれば、そこまで痛い出費ではないのだが、それでも一回の夕食に使うには結構な出費ではあった。
鶏肉に塩胡椒、黒胡椒、酒を、下準備をしてから加え、さらに昆布出汁、醤油、カレー粉、またそこそこ高額な薄力粉、そこそこ値を張る蜂蜜、これまた薬局で買ったターメリックをよく混ぜた調味料を投入し煮込む。
主菜と汁物はこれで完結し、前菜もとい副菜には野菜も当日に盛り付け、食前酒と食後の菓子として出す予定の水羊羹も、当日出せば良い。
正直、主菜兼汁物が飛びぬけて一番、手間がかかり、高額なものとなっている。
どうしてこうなった。
「シンタローサン、オ鍋ガ沸いテイマスヨ?」
「おっと、ありがとう」
火を止め、蓋をする。
「これで料理は大丈夫だな」
「ハイ!」
ま、完全な満足とはいかないだろうが、そこそこ美味しくは出来ただろうか?
ハモンドさんは良いと言っているのでいいのかも知れないが。
一応アイナにも聞いたが、
「シンタローサンが作ったモノナラ、ナンデモオイシイデスヨ!」
とのことなので、当てにはならないだろう。
というか、あらゆる意味で拙い気がする。何がとは敢えて言わないが。
兎にも角にも、結果は明日じゃないと分からないな。
翌日 25日
そして、当日。
用意していたものを調理する。
“家族の”休日であるとされているため、ハモンドさんは来ていない。
まあ、計4人なのでそこまで問題ではない。
今日は、駐在していたアイナの父、エリック准将は良いとして、アイナの兄である、ケイに関しては、一度軍役の為に帰国していたため、態々こちらに来てもらったらしい。
本当に長旅だというのに、大丈夫だろうか?
こちらが心配するようなものではないのかもしれないが、やはり心配にはなる。
そんなことを考えながら料理を済ませた丁度そのとき、玄関の戸を叩く音が聞こえた。
「アノー、フレーザーデスガ」
と、いう訳で、所謂晩餐会というか、食事会が始まった。
「オイシーデスネ、コレ」
「It’s delicious!」
ケイもエリックさんも、どうやら満足はしてもらえたようである。
「シンタローサンノオカゲデスヨ」
「アイナが頑張ったからだと思うけど……」
「二人トモ、マルデフーフノヨウデスネ」
「?」
「……」
「フ、フーフ……ハイ!」
エリックさんがとんでもないことを言い出したので思わず自分は黙ってしまう。
アイナもアイナで、何かを肯定していた。
ただ一人、ケイだけが浜綴語を忘れたらしく、理解せずに、頭に疑問符を浮かべていた。
「~~~~?」
「~~~~,~~~」
「~~~~!」
エリックさんが説明したようで、ケイはどうやら理解して苦笑いを浮かべていた。
そんなことをわざわざ親から横やりを入れられたなら、確かにそのような顔になるな。
そして、食事は終わり。
「本日は集まって頂き……」
「イエイエ、マァソノ……」
話ながら、エリックさんが口を耳に近づけて来た。
(コノ様子ダト、本当ニ、“家族”ニナルかも知レマセンシ)
「は、ははは……」
思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「トイウ訳デ、今日ハアリガトウゴザイマシタ」
「Keep smile!」
まあ、こんな日があっても良いかとは思えたので、良しとしておこう。
全てを納得したわけではないが。
この件が考えの一つの要因となったかどうかは分からないが、浜綴と成会矛の間で結ばれる、浜成同盟が、後にエリック准将が強く推し、結ばれることは、また別の話である。
明海四年 1月8日
年が変わり、冬の寒さは一層のこととなった。
しかし、軍はそれで訓練を止める訳にもいかないので、今日も今日とて訓練に明け暮れる。
「風切隊、演習終了。整備士、片付け用意!」
そんな日も、空母を運用し、訓練を行っている。
今月の中旬までは空母を港から出さないらしいが、訓練自体は存在する。
「相坂君、ちょっといいか?」
「し、司令!どうかしましたか?」
突然司令に話しかけられ、動揺する。
「ま、ここではなんだし、会議室にでも行こうか」
空母飛鶴 第二会議室
「つまり、異動するかどうか、という話ですか」
「そうだ」
「それは、旧四四計画の方の空母ですか?」
「そうなるな」
「それは……貴族の連中は?」
「かなり倍率は高いらしいな。今いる奴の全員が新型空母の配備を望んでいるし、次の年度の航空学生も、多くがそこを望んでいる。航空学生は全員貴族華族の出身でね。君たち庶民出は特別でね、飛鶴と嶺鶴のとこだけだね。少なくとも再来年度までは庶民出を取らないとまで、お上は言っているらしくてね。多くの実地試験は、君たちと、後から入った嶺鶴の人員のどちらかが担当することになるだろうね」
「それはまた……」
「お上も、貴族出に拘る連中がいるというだけさ。悲しいことにね」
「いえ……」
「取り敢えず、隊員と一度、話をして決めてくれ。勿論、航空学生よりは、君たちの希望を優先するが、今の千鶴、白鶴の連中の意見が通りやすいかもしれないが……」
「いえ、司令が気にすることでは……」
「いいんだ。恨まれるのは上の役目さ。取り敢えず、言った件に関しては、今月末までには決定してくれ」
「分かりました」
結果、風切隊の連中に聞くと、全員、ここが良い、とのことで、全員一致で飛鶴に残ることが決定した。
また、飛鶴の他の部隊に於いても、全員が継続で飛鶴からの異動を否定し、来年度もまた、全員がこの艦に乗り続けることが決まったらしい。
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