32話 パッとしない新型機
明海三年 12月22日 高須賀海軍基地の近くのとある茶屋
この日、新型戦闘機、旋風が制式化されて丁度一か月が経っていた。
だが、この戦闘機、可愛そうなことに、前の戦闘機から順当に性能は上がっているのだが、主に通信が中途半端と言う理由だけで、評価が悪くなっているのであった。
「お~いおいおい……」
そんな時期のとある茶屋で、泣きながら御手洗団子を食べる男と、その前に座る男。
「泣くなよ倉田」
倉田と相坂という男たちであった。
「だって、だって~」
「こんなところで泣いていたら、ぽっと秘密でも漏らしそうで怖いんだよ!」
思わず怒鳴ってしまう。
「はぁ……お会計します……すいません。おい、出るぞ倉田」
「お~いおいおい!」
「もうそろそろ泣き止めよ……一本目食い始めてからずっと泣いてるじゃねぇか」
と、まあ、こんな感じで泣きっぱなしなのである。
寮 倉田の部屋
「で、なんて言われたんだっけ?」
「『良い夫婦』の日に作られたのに、通信はずっと片思いだって……」
「……そういえばお前、酒入ってないのに何でそこまで泣けるんだよ……」
内心、とてつもなく面倒くさい。
が、一応友人の好、聞いておこう。
「まあ辛いのは分かった、取り敢えず落ち着け」
「うば~~~!!!」
本当にどれだけ泣くんだこいつ。
「ここは寮だから聞かれるぞ」
「上層部も飛行機乗りも、全員開発部を責めるんだよ!」
「分かった、分かったって!他の人に聞かれるから」
「知ったことかそんなもの!」
「寝てる奴もいるかも知れないだろうが……」
「知ったこっちゃねぇ~~~~~!!!」
「えぇ……」
本当に大丈夫かこいつ。
さらに詳細を話すと、早風から天風への機種転換は、機体寿命がそもそも短い早風から、機体寿命もかなり増し、程度戦闘と言う実用に耐える能力のある天風は、爆発的な進化とも言えた。
見た目も布製翼から金属翼へと変わり、大きな違いがあった。
そして天風から旋風は、無線と機動力、最高速の向上以外には目立った向上はなかった。
その向上した能力すら目を見張るようなものでもなかった為、あまり使用されていない。
早風と太刀風と天風、それぞれ納入した数は、早風80機、太刀風50機、天風120機である。
機体の損傷・喪失などで追加された数は、早風25機、太刀風12機、天風8機程度である。
それぞれ計105機、62機、128機の納入であった。
それに引き換え旋風の納入は56機である。
陸軍の喪失機の補填、海軍は研究用機と第一航空戦隊の戦闘機部隊以外は新たな納入はされなかったためである。
もう一方の新型機であった、陸上機である司令偵察機積雲は、通信設備が充実しているため、偵察機であるにも関わらず、当初製作側の20機前後という予想から大きく上回り、結果は予想の倍以上の46機の納入となった。
このように、他の航空機の納入数と比較され旋風の評価は良いという物は無く、無視されるという、総合的結果的に見れば、どちらかと言うと批判が多くなっているものであった。
爆発的な進化から安定的な進化に変わったので、確かに今までの成長を見れば見劣りするが、批判されるほどのものかといえばそうでもなかった。
そこでこのようなことで叩かれていたため、倉田はこのように荒れていたのである。
「あー、自分はまあ、そこそこに良いとは思っているぞ、旋風」
「Zzz……」
「もう寝やがった……」
今までの介抱や説得は一体何だったのか。
同月23日 万京 軍務省
「本日はお忙しいところ恐縮ですが、時間を割いていただき、誠に有難う御座います」
「そして、話とは?」
「ひと月前ほど、丸菱が政府から支援を受けて、航空業界に参入したと聞きましてね」
「ほう」
「そして我々、中村熱気球も飛行機業界に参入したいと思いまして、お話だけでも伺いたいと存じまして」
「成程。して、あなた方は何を望んでおられますか?大型航空機か、それとも比較的小型の航空機なのか」
「まあ、飛行機の能力を手に入れるには、余り大型のものは我が社には手に余るものと考えますし、何せ大企業、丸菱と競合してしまうことも考えられますので、比較的小型の航空機の開発に着手したいと思います」
「こちらとしても、国営事業の民営化を進めたいと考えておりまして、その第一の矢を丸菱に預けました。しかし、複数の企業にするには、その利点も副作用も考えた上での検討になります」
「と、言いますと?」
「政府は、他企業への航空機製作の委託に慎重になっている、という話です」
「はぁ……」
「今のところ、第二の企業に委託を行うかどうかにも慎重になっている、ということです。競合による品質悪化、海外への技術流出など……。まあ、中村熱気球は政府でも検討している一企業である、ということではあるので、今は期待しておいて下さいとしか、言えません」
「分かりました……」
「最後に、これはあくまで希望調査ですが、どの飛行機を研究対象として見てみたいですか?」
「えぇと……敢えて言うなら、最新鋭の軽量な航空機……ですかね。ただの我儘ですが」
「いえいえ。これも重要な情報ですから」
「取り敢えず、今は結論を話せない、ということで?」
「はい。また後日、決定をお伝えします」
このように、名前は知られずとも、旋風に興味を示す企業も現れるのであった。
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