31話 さまざまな話
明海三年 9月11日 高須賀海軍基地所管兵学校
今日はここで、実戦経験やら教訓やらを語ることになっている。
ここは、基地から近いということで、実際の軍人からも教員として活用(という名の人材不足解消)ができるということを利点としている兵学校である。
50分の講義のうちに、前説明5分、まとめ5分以外の40分ほどを語る時間に充てるらしい。
風切隊四人であるため、一人10分で話すらしい。
話す順は一番機から番号順ということで決まった。
「ご紹介に預かりました、千鶴型航空母艦二番艦、飛鶴所属の第二〇五戦闘飛行中隊、風切隊の一番機、一応隊の隊長を務めます、相坂 慎太郎と申します」
適当な出だしで始め、飛行機乗りとは何か、隊長としてどのような心構えをするべきかなどを話した。
二番機の小川は、被弾したときや、墜落する可能性が出てきたときの対処法や心構えを話した。
あとは不時着したときの対処法と心構えを話していた。
特に彼が編み出した、戦場に落ちた場合、どうやって逃げ帰るかという話は、案外小川の話術もあってか、かなりの好評を博していた。
二回も不時着したことで、こういう場での話のタネになっていることを考えると、これも悪運の一つかと考えてしまう。
三番機の生機は通常の戦闘も、兵学校で習うことの応用でしかないということなど、基本的なことを大切にするようにと、比較的ありきたりなことを言っていた。
四番機の杉は隊の中での補佐的な立ち回り、状況確認の大切さを語っていた。
これで一段階階級が上がるのだから、安いものである。
第一次浜唐戦争を経て、今年度から海軍軍用気球研究科から一部分かつ形で開かれた航空学科。
あの教室を見て、その学科は期待できると改めて感じるのであった。
9月12日 高須賀海軍基地飛行場
「昨日はお疲れさんでした。ということで、今日は新型機の試乗をしてもらいます!」
倉田が大声で叫ぶ。
朝から元気が良いな、こいつ。
「お疲れと言うくらいなら、一日くらい開けても良いんじゃないか?」
「儀礼的に言ったけど、特に疲れてもいないだろ?」
「人前に立って喋ることはそうそうないから緊張して本当に疲れたんだがな」
「あ、そう?」
聞く気ないな倉田。
「まあ、それは良いとして、なんで俺たち風切隊だけじゃなく、戦拓隊の皆までいるんだ?」
小川が倉田に気になっていた質問をぶつけた。
「そうだな。練度の低い俺たちは必要か?天貫隊とかの方の奴らに頼んだ方が良かったんじゃ?」
戦拓隊隊長、久米 正治中佐も聞いて来た。
「今回はとある機の……まあこれも新型っちゃあ新型だが、飛行特性が比較的桐山と近いッスからね。比較的ってだけッスけど」
比較的近い……?
「説明すると、今回の新型機は、完全新型機で、風切隊が試乗する、戦闘機 旋風。それと、輸送機晴空の改造機、司令偵察機の積雲の二つだ」
「司令偵察機?」
「偵察機の役割に、空で司令部としての役割を担わせる飛行機って訳だ」
「どうやって司令部としての役割を?」
「新型戦闘機旋風は、無線の受信機が積まれていて、船や積雲から指示を受けることができる様になってるっス」
「旋風に送信機は乗ってないのか?」
「まだ小型化・軽量化が出来てなくって……それらはまた後の奴でってことで……」
少しばかり、倉田が狼狽える。
技術者として、恥と感じているのかもしれない。
「しかし、積雲には、無線と言っても、モールス信号の送受信機だけではないッス」
「他には何が?」
「電話ッス!」
「電話……ということは」
「そうッス!声も電波に乗せることが出来るっス!流石に戦闘機乗りが一人で乗っていて、モールス信号を解くのは難しいと判断されたので、基本的には電話で指令を出す方針ッス」
「そりゃ凄い」
思わず声が出る。
「という訳で、積雲には通信士が複数人乗ってもらうッス。後で紹介するッス」
そこは適当なんだな、倉田は。
……。
そして、空に舞う。
運動性は良好。
純粋に機関の馬力も増えたようであり、通信機器が載っているにもかかわらず、天風以上の運動性があることが、軽く飛んだだけで解る。
そして運動性のクセもない。
一通り運動性能確認を終え、今度は通信機の確認である。
編隊を組み直し、積雲から一定の距離を保ち、待機する。
『―――。こちらツミグモ。カザキリ各機、聞こえているなら翼を揺らせ』
その言葉の通りに、翼を揺らす。
『全機、聞こえていることを確認した。続けて、秘密回線の試験を開始する』
秘密回線とは、今聞こえている回線とは、周波数を変え、特殊な回路を組んで、放送する方式である。
積雲には、暗号化器と復号化器が搭載され、旋風には復号化器のみ搭載されている。
『こちらツミグモ、秘密回線。聞こえているなら翼を揺らせ』
再び翼を揺らす。
『全機、確認した。続けて、モールス信号の試験を開始する』
暫く待って、ツーツツーといった音が流れ出す。
『各機、モールス信号が聞こえた機は翼を揺らせ』
また、翼を揺らす。
『全機、確認した。次は、運動中の通信の確認を行う。各機、自由に一分ほど行動し、一分したら戻ってこい』
そして、全機が好きな方向へ向かい、しばらくすると、声が聞こえて来た。
『この声が聞こえる機は、直ちに戻ってこい』
直ぐに積雲の近くへ戻ると、他の機もやって来た。
『行動中にこちらの声が聞こえた機、翼を揺らせ』
そして、翼を揺らす。
『まただが、自由行動だ』
これをあと二回繰り返し、恐らく秘密回線とモールス信号を試したのだろう。
二回目はモールス信号が聞こえてから、声の指示で戻るように指示されたからだ。
そして試験を終え、着陸した。
旋風から降りると、倉田が待っていた。
「どうだ、新型は」
「なかなかに良い機だと思うが、積雲はもともと陸上機の改造機だろ?大丈夫なのか?」
「それは空母に載せるにはってことか?」
「ああ」
「それは大丈夫だ。これをもとに、新たな司令偵察機を開発する計画があるからな。それに合わせて、通信装置の小型化をして、さらに次かその次くらいの戦闘機にも、通信の送受信機を取り付けられるようにしておくさ」
それでいいのか。
自分の機は投入される兵器の内で、中途半端にならないか心配だな。全く。
9月15日 万京 株式会社丸菱本社
「つまり、私たちにあれを作れと」
「政府としては、あなた方が無理なら、他に当たることも考えていましたが、家電、造船、産業機械などの分野で実績があり、この間新規参入した自動車業界でも比較的成功しており、その他にも資本的余裕のある財閥であると考えると、第一候補は丸菱であると」
「まあ、分かりますがね。我々でも、作れるものなら作ってみたいとは考えてはいましたが、何せ、自動車業界で地盤を築くためには、航空業界への参入は時期尚早かという意見も社内では多く」
「なるほど……。しかし、政府からの要求を受ければ、最新の輸送機を数機、無償供与を考えていますが」
「なぜそこまで?」
「政府としては、民間企業を伸ばし、輸出した国家に先行させ、航空産業の主導を我が国から手放したくはないという考えもありましてね」
「成程……分かりました。お受けいたしましょう」
「良いのですか?周りの人はいませんが」
「別にいいですよ。私がなんとしても周りの人々を説得して、絶対に通します。これでも最高経営責任者です。こんなにいい話なら、我儘だと言われても、最悪話せば彼らは頷くことになるでしょう」
「そうですか……ではこの話は社外には内密に」
「勿論分かっております」
この話の後、丸菱は航空業界への参入を発表、軍の輸送機の量産、民間機の開発を行い、政府の民間向け輸送業に貢献する旨を示した。
またこれに合わせ政府も、万京湾の一部を埋め立て、万京国際空港の開設すること、また逢坂湾の一部を埋め立て、上方国際空港の開設することを決定した。
更にその後に、丸菱は輸送機晴空を民間機として輸送機型と旅客機型の天馬と呼ばれる航空機を製作するに至るのであった。
9月某日 唐国のどこか
「こいつを渡せば、支援をしてくれるんだろうな?」
「勿論だ。それに、こいつらは三つもあって、その内の一つは貴様のとこが持っておくんだろう?ならいいじゃねぇか」
「そうだが……」
「なんだよ?」
「俺たちも、金はあればあるほど良いからな……」
「ま、苦労して得て、その上で貰った礼に、そこそこ色は付けて渡すつもりさ」
「そうか……」
様々な場所で、様々話が進んでいくのであった。
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