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凪の中の突風  作者: NBCG
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30話 空に二人

明海三年 9月9日 輸送機晴空


「ソウイエバ」


「ん?」


「ワタシ、シンタローサンのタンジョービ、シリマセン」


「あー、そうだったっけ」


「一年以上も一緒にイタノニ……、ソレニプレゼントモ渡せてイマセン」


「別に良いけど。この国に誕生日を祝う風習は無いし」


「ワタシガヨクアリマセン!」


「……そう?そうかな……」


「一方的ナモノハ、アトノフ……フーフセーカツデ、問題ガ出てくるト、ワタシノ国デ聞くコトがアリマシタ」


夫婦と言う時に、言葉を詰まらせ、そして頬を染めていた。


先ほども言っていたように、どうやらアイナにとっては、結婚することは絶対的というか、確定していることなのだろうか。


まあまだ子供だし、そう考えているのだろうか。


「へ、へー。あー、確か誕生日は、2月の……17日かな?」


そのことを考えるだけで、軽い腹痛がして、そのためぶっきらぼうな返しをしてしまう。


「フ、フーフと言えバ、ヒンテイデハ、何歳カラ結婚デキルのデシタッケ?」


「あー、確か15……いや、今年からは16歳からできるんだったかな」


「16……あと8年デスネ」


「そうだね……」


未だあまり実感が湧いていないようであると感じられたのか、それを意識させ、感じさせることを敢えて言っているのか。


「8年か……その時には、もう自分は27歳か」


それならそうと、こちらからも少しでも冷静に考え直すように言って密かに促す。


「ソウデスネ……」


考え直してくれるだろうか。


「キット……モットカッコヨクナリマス!」


予想の斜め上を行った。


「そうかな?」


「ハイ!ソウデス!」


その根拠は一体何処からくる何なんだろうか?


まあいいや、取り敢えず、簡単に自分の評価を下げていこうと考えても、安易に評価が下がらないということが分かって良かったとでも考えておこう。


「シンタローサンハ、ヒコーキ乗りと聞きマシタが、前の戦争デハ、ドノヨウナ仕事をシテイマシタカ?」


「まあ、偵察とか……かな」


流石に外国人に戦闘機の有用性に気付かれてはいけないので、暈す。嘘もついていない。


「ソウデスカ……」


「……」


会話が途切れる。


「シンタローサンハ、ワタシがヒコーキ乗りにナルニハ、ドウスレバ良いト思いマスカ?」


しかしそれでも話題を絞り出し、話を続けたいらしい。


「どうだろう……この国ではまだ軍用しかないから、軍か、軍学校に入隊・入学するしかないと思うけど」


「Mmm…難しいデスネ」


……そういえば、なんでアイナは自分のことを好きになったのだろうか?これを問うてみたら、案外理由を考えてしまって、熱が冷めるかもしれない。


「まあ、学校を出るときにでも、また考えれば良いと思うよ」


「ソウデスネ」


「アイナはさ」


「ハイ?」


「なんで自分のことを好きになったんだ?初めて会った時は、感謝をされるのはともかく、そこまで好きになるような理由もなかったような気がするけど」


「オハズカシイと思いマスガ……、」


「?」


「一目惚れデス……」


この回答を考えなかった訳ではないが、少しでも好感度の低下と言う、希望的観測を持った自分が悪いのかもしれない。


「そう……」


「ケーベツ……シマシタカ?」


「いや……そんなことはないが……」


ただの自然消滅という可能性が、また一つ消えただけである。


「アリガトウゴザイマス!モットシンタローサンのコト、スキにナリマシタ!」


「へぇ……」


その上で、好感度が若干上がってしまうという失敗を起こしたという自分に、多少の失望がある。


というか、だんだんと自分が泥沼に浸かってきているような気さえする。


「そろそろもう飛ぶのはいいかな?」


「ハイ!十分に楽しめマシタ!」


そして、長いようで、短かったような遊覧飛行は終わった。


「大丈夫?気を付けて」


「アリガトウゴザイマス」


降りるときは、飛行機の形状上、段差は避けられないので、支えの為に手を伸ばす。


ただいざこざを避けるために蔑ろにしたい気もあるにはあるのだが、アイナ自身は、それはそれで結構な身分である。雑に扱うと内外から暗殺されたりしかねない。


本当に何とかならなかったのだろうか?


「そ、そこまでくっ付かなくても良いんじゃないかな?」


「少し足元がフラついてシマッテ、腕をオカリしてもイイデスカ?」


「それなら、まぁ……」


やはり流されている気もする。


「お帰り、二人とも」


すると格納庫から確認されていたのか、倉田がでてくる。


「これはこれは、お二人は空の散歩でさぞ仲がさらに良くなったような」


明らかに茶化してくる。こいつめ。


「ハイ!」


それにアイナが元気よく答えた。


「お前なぁ……」


「別に良いじゃねぇか、相坂。どっちに転ぼうが、大国の貴族と縁が出来ていることには変わりはないしなぁ」


「そういうことではないんだがな……」


……。


「と、いうことで、今日の見学は以上ですっと」


「お前は本当に客人として扱う気はあるのか……?」


「相坂……お前と俺の仲だろ?」


「そういうことじゃない」


「すまんすまん……その仲はアイナちゃんとの仲のことだったか?」


「本当にお前は……はぁ。まあいいや。今日はどうも」


「アリガトウゴザイマシタ!」


「はいどうも。あ、そうだ相坂」


「なんだ、倉田?」


「休暇後の新型機の試乗だが……」


最後には仕事上の話を少しだけして、そして家へと帰った。


相坂家


夕飯も振る舞い、食事と風呂も終わり、基地で倉田から貰った新型機の試乗に関する大まかな計画概要の載った資料を居間で広げる。


家にはアイナが居り、また、夕方までとは言え、ハモンドさんもいるので、そこまで重要性の高い情報は乗ってはいない。大まかな場所、大まかな時間割、大まかな活動内容の程度である。


「オ風呂、イタダキマシタ」


それらを見ていると、アイナが風呂からあがってきたらしい。


「ソレは、ナンデショウカ?」


「ああ、これ?これは、軍の情報が書かれた物だよ。家に持ち帰れるくらいの、そこまで重要ではない情報が載った」


「ヒコーキのモノデスカ?」


「そうですよ」


「ワタシモイツカ、アナタト一緒に、世界中の空ヲ、巡ってミタイデス!」


「そうだね……」


自分の中でも、飛行機乗りを志しているという人物としてなら、一緒に飛んでもいいかと考えてみる。


その程度なら、まあいいかと。


「フゥ……ソレニシテモ、ヤッパリ浜綴のオ風呂ハ、ワタシノ国ノオ風呂ヨリ、トッテモ気持ちノ良いオ風呂ダト思いマス……」


「……ん?こっちの風呂に入ったの?」


「ソウデス。一緒に入った日カラ、トキドキ入るヨウニナッテ、今デハ殆ど毎日入ってイマス。駄目ダッタデショウカ……?」


「いや……、別に良いけど」


ま、これくらいのゆったりとした毎日なら、過ごしても良いが……。

良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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