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凪の中の突風  作者: NBCG
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29話 第二次浜唐戦争終結

明海三年 9月5日 高須賀海軍基地


「皆よく頑張ってくれた。本隊の戦果著しい艦の部隊はこれから休暇となる。この艦も他ではない。大いに休んでくれ」


司令が皆を激励した。


小川が帰って二週間後の8月29日、第二次浜唐戦争が終結した。


終結後の利権に関しては、航空機早風、又は太刀風を一か国に付き最大計10機まで、先に輸出されていた国家への輸出が決定され、また明らかに宣戦布告なく国家軍による侵攻が行われたと認められ、他国から口出しされることは無かったらしい。賠償金と、飛行機の輸出額で、帝国の財源はかなりの程、潤っているらしい。


この他に、他国の主権の範囲が及んでいなかった港の全てと、唐国の大陸外の最大の島、高砂島の領土を手に入れることに浜綴は成功したのである。


そして、飛行機を輸出した国家群と、「飛行機同盟」なる軍事同盟を締結するまでに至った。


そして自分たち前線の飛行機部隊も本日帰還した。


初の本格的な空の戦場を経験した自分たちは、その報告書を艦内で作成し、上層部へ提出。


数日の休みを得たのち、再び通常の軍役に戻るらしい。


ま、良かったことと言えば、今回の戦果から全員階級が一段階昇格、この後の特別業務である、新たな飛行機乗り達への講演でさらに一段階上がる予定となっている。


飛行隊の戦果は著しいと判断はされたが、二階級特進は縁起が悪いため、このような体形をとっているらしい。


中尉だった自分は少佐。他三名は大尉となる。


因みに千鶴所属の“彼”については、講演を行わない為、一階級の昇格のみで、少佐から中佐へとなる。


「風切隊は少しだけここに残ってくれ」


最近司令に呼び出されることが多いような気がする。


……。


風切隊操縦士三名と司令、そして倉田が残る。


「まさか……」


「先ほど休暇と言ったところ悪いが、恐らくそのまさかだとは思う」


司令も若干苦笑いを浮かべている。


「開発部が新たに戦闘機を開発していたようでな。詳細は倉田君に話してもらう。倉田君、話を……」


「それでは……ま、いつものことだが風切隊の皆さんには、試乗機乗りとなってもらいます」


「やっぱりそれか……」


「一応、前に言っていた奴を取り入れた形にはなってんだぜ?」


「何か言ってたっけか?」


「無線を空で使えるようにって」


「あぁ~~~、何か言ってたような言ってなかったような……」


「ま、戦場に居たから覚えてなくても無理はないかとは思うがよ……。取り敢えず、新型機の試乗は通常軍役が始まって、で、一連の講演が終わった後になるから、軽く覚えておいてほしいってだけだ」


そんなことかと拍子抜けではあるな。


というか……小川、今の今まで乗れるように天風の訓練をしているんだよな?


これでこれから新型機になるのだったら……。


他人事だが、奴はとことん不幸な奴だな。


そうして、しばらくの休暇が与えられたのであった。


同日 相坂家


「ただいま帰りました」


「シンタローサン、オカエリナサイ」


昨日まで近海練習航海の時のように、アイナの父、エリックさんの家に住んでいたようだが、それを感じさせないほど自然に、言葉を返してきた。


「今日ハ戦争が終わっテ、オ疲レだと思うノデ、食べヤスク、チョットゴーカにシテミマシタ」


「アイナが作ったのかい?」


「少し、Ms.ハモンドに手伝っテモライマシタガ……嫌ダッタデショウカ?」


「いや、少しだけ驚いただけ。ありがとう、すぐ頂くよ」


食卓


「美味しいね」


やはり成会矛料理が駄目だったというだけなのか、アイナの料理は以前のものより非常に美味しいものとなっている。


「Ms.ハモンドや、schoolノ先生に教えテモライマシタ。何ヨリ、シンタローサンニ料理ヲ教えてモラッタノガ、一番オイシクナッタ理由ダト思いマス」


「そうかな」


「ソウデス」


まるでいつもの食卓を囲むように、話をする。


「アイナの誕生日に戦争が終わって良かったよ。何かしたいことはある?」


「シンタローサンの料理をマタ、食べてミタイデス……」


「分かった。他はある?」


「Mmm…特ニはアリマセンが……シンタローサンがいつも働いテイル場所ヲ見てミタイデス」


「軍の基地?」


「ダメデスカ?」


「自分としては構わないけど、軍だから、部外者はあまり入れないと思うけど……あと、用もないのに行くのはなぁ……ま、掛け合ってみるよ」


というか、外交官やらでもない外国人を入れるのは大丈夫なのだろうか?


「アリガトウゴザイマス!」


それから食事、そして風呂を終えて、自室で就寝準備を始める。


「アノ……」


布団を敷いているときに、アイナが話しかけてきた。


「何?」


「イエ……ソノ……頼みタイコト……アリマス……イイデスカ?」


「言ってみて?」


「私ガワガママナノハ、分かっていマスガ……ソノ……」


「?」


「ワタシが寝るマデ、手を繋いデモラッテイイデスカ……?」


手……なぁ……。


「ワタシ……ズット寂しくテ……タクサンノ人ガ亡くナッタト聞いテ、トテモ不安デ……」


そうか……まぁ、自分も、小川が死んだかもしれないと感じたときは、かなり不安になったし、それも自分のことに好意を持っているとなると、相当不安に感じるのだろう。


「疲れているとハ分かっテイマスガ、寂シクテ……抑エラレナクテ……」


「……分かったよ」


「アリガトウゴザイマス!!」


まぁ、こんな日くらいは良いか。


9月6日 高須賀海軍基地


「えと、いいんですか?」


「はい。軍人の婚約者は一応関係者ではありますし、機密保持に指定された場所以外は見学していただいて構いませんよ。9日ですね」


受付の事務員は涼しい顔をして答えた。


「は、はい。……因みに機密保持のための場所というのは……」


「それは当日、案内員を配備しますので。その人に従ってもらえると」


それでいいのか。


「はぁ……分かりました。当日は誰が?」


「まだ決まっておりませんので、当日、またここの受付においでください」


相坂家


「と、いう訳で、9日に行けるようになりました」


「分かりマシタ。ワザワザ私ノ為ニアリガトウゴザイマス」


「そこまで感謝されるようなことでもないとは思うけど……」


取り敢えず、喜んでくれているので良かった。


9月9日 高須賀海軍基地


そして当日になった。


朝飯を作り、食べ、外出の用意をして、そして今に至る。


今回の朝飯は浜綴風の食べ物を食べたいと言っていたので、焼き魚を用意したが、それらは満足してもらえたので良かった。


「相坂ですが」


「お待ちしておりました。案内員は整備士の倉田が行います。少々そこのお席でお待ちください」


「倉田……というのは、あの?」


「はい。予約を承った際、その日は開発などの為にいた倉田整備中尉が申し出たので、宛がいましたが……何か不具合がありましたか?」


「いえ……別に、気になっただけです」


あいつ、茶化すために申し出たな……若しくは新型機についての話をするためか?


「そうですか。それでは呼びに行きますので」


「はい」


……。


「よ、待たせたな、相坂」


「今日は一応見学者という客人なんだがな」


「まさか客人がそんな硬くない口調で、緊張もせずに話せるかよ」


「取り敢えず、紹介を」


「へいへい。私は、この相坂の整備士を務める、倉田栄治整備中尉です。お見知りおきを」


「ワタシは、アイサカ・シンタローサンノ婚約者ノ、アイナ・ザラ・フレーザーと、申しマス。ヨロシクオネガイイタシマス」


「じゃ、適当に回っていきたいと思いますが、アイナさんはどこを見たいですか?」


茶化すかと思っていたが、案外こういうところでは真面目にやるか。自分に対してはかなり砕けた話し方をするだけで。


「シンタローサンが、働いてイルヨウナ所ヲ!」


これは、予想はできたな。


格納庫


「ここが、陸上勤務時、この飛行場から飛行機で飛ぶときの、飛行機を格納しておくところですね」


「コノ飛行機は、シンタローサンの飛行機デスカ?」


「いや、これは只の輸送機だな。相坂の今の愛機は今、相坂の所属する「おい」……あー、これは秘密だったな」


今さらっと機密を漏らそうとしたなこいつ。


空母のことは、外国人については今、秘密にしている所である。漏らせば上から抗浜工作員として捉えられ、拷問されて殺されるのがオチである。


ここで忠言しておいて良かったな。


「まあでも、こいつなら今の相坂でも飛ばせるな?」


目の前にあるのは陸上輸送機晴空。


試作機を試乗したので、ある程度の扱い方は知っているし、そこまで前でもないので忘れている訳でもない。


「飛ばせるな。戦争になる前に、陸上機に慣れる為とかで、一度さらに乗ってはいたし」


「それなら、アイナさん、乗ってみますか?」


「イインデスカ!?」


そういえばアイナは飛行機に乗ったことは無かったな。


熱気球や飛行船に乗ったことがあるとは聞いたことは無いが、どうなんだろうか?


「軍人の関係者だからね。許可自体はとってますよ。どうします?」


「飛んでミタイデス!」


高須賀海軍基地飛行場 滑走路


飛ばすために機関を温める為、その間の数十分間、基地を見て回り、戻ってみると温まっていたので、こうして飛ぶ準備をしている。


倉田曰く「粋な計らい」とやらで、倉田自身は同乗せず、陸上で待機しているらしい。


「それじゃ、揺れるから、安全帯を付けて。後は……そうだな、計器類とか、ここにある鈕とか、には触らない様に。危ないから」


「ワカリマシタ」


「それでは、離陸します」


「ハ、ハイ!」


出力稈を倒し、機体を進める。


輸送機晴空の翼は風を掴み、空へと舞い上がる。


アイナはホア~、と、感嘆の溜息を漏らしている。


「う~ん、そういえば、アイナは他の航空機に乗ったことはある?」


「コークーキ……空を飛ぶモノのコトデスカ?」


「ああ」


「ナイデス。乗ったコト、アリマセン。バルーンモ、エアシップモ」


「そうか」


「シンタローサンハ、何か他ニ乗ったコト、アリマスカ?」


「乗った“もの”、ね、この場合。他には熱気球……バルーンに乗ったことがあるな。もともと熱気球を見て、軍に入ろうと思ったし」


「ソウナノデスネ……」


アイナは、未だ空に魅入られて、眺めている。


自分も初めて空に上がったときは、空をずっと眺めていたっけか。


「ワタシもイツカ、ワタシの力デ空を飛んでミタイデス」


「ああ。いつか、その願い、叶うといいですね」


「ワタシが初めテ飛ぶトキは、シンタローサンを乗せテ飛んデミタイデス」


「……ああ、そうか……」


また何か、約束事が出来てしまったというか、なんというか、結婚からの退路を徐々に絶たれていっているような気がするな……。


二人の遊覧飛行は続く。

良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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