27話 決戦、唐国首都燕京!
明海三年 8月8日 唐国首都燕京東部上空
「じゃあ、一番近くに居る方からガトリング砲台を無力化したらいいな?」
「ああ、倒せるものから倒す」
「了解。近いほうの飛行船のガトリング砲台から攻撃を開始する」
先の飛行船との損耗は戦闘機が受けた数発の被弾のみであり、現在、大浜綴帝国軍の飛行隊の数的な減少はない。
近くに熱気球が複数台あり、更に今は風向きが変わり、上昇気流があって、滑空機が恐らく積極的に戦闘に参加することが予想される。
しかし、ここまでの自分たちの損耗の低さから考えると、それらの要素を敵が有していても、十分に蹴散らせることができるだろう。
「ガトリング砲台、一台目を破壊」
「良いぞ。その調子だ」
「了解!」
「滑空機が上昇してきます。滑空機からの攻撃に気を付けて下さい!」
「分かった」
滑空機が上がってくるが、敵ではない。
自分たちにとって邪魔なものは落し、そうでないものは無視するだけである。
「あれ……?奥の飛行船……、飛行船にしては、かなり速い速度でこちらに向かってきているぞ!」
「落ち着け。まだ脅威になるほどは近づいてはいない。奴らが近づく前にこれを片付けるぞ」
「わ、分かりました!攻撃を続けます!」
「ガトリング砲台を一基、陸軍機がやったみたいだ」
「陸軍だけにいい顔をさせるな。こちらも破壊するぞ」
「勿論です」
「更に陸軍機がガトリング砲台を一基破壊!」
「負けてられないが……滑空機、かなり多くなってきたな……」
「ああ、足元を掬われない様にしないとな」
そこで横切る一筋の黒煙。
「言ったそばから陸軍機の一機が堕ちた!」
「滑空機に気を取られて、ガトリング砲の餌食になったようです」
「阿保が……」
「り、陸軍の爆撃機が飛行船に向かっています!」
「なんだと!?まだガトリング砲台の破壊が終わっていないのに!しかもこんなにも高い所を飛んでいるんだ、十分射程内だから弾丸が当たるぞ!何故だ!?」
「考えるのは後だ!陸軍の爆撃機を支援しろ!ガトリング砲台の兵士の意識をこちらに向けさせろ!!」
「くっ……駄目です!最初から爆撃機のみを破壊するつもりのようです!」
「分かった!なら今すぐガトリング砲台を破壊しろ!意識が爆撃機に向いているならこちらから一方的に攻撃できるはずだ!」
「了解!攻撃を再開し、ガトリング砲台を破壊する!」
そしてしばらく、ガトリング砲台との攻防。
「ガトリング砲台を更に一基撃破!」
「爆撃機が爆撃を開始する!巻き込まれるぞ!飛行船の近くから離れろ!!」
「爆撃機が爆弾を投下しました!……爆弾、全て命中せず!」
「陸軍の爆撃機が被弾した!煙を噴いているぞ!」
「陸軍の爆撃機、一機が損傷により戦線離脱!……クソッ!」
「早くガトリング砲台を破壊して、爆撃機が安全に進入できるようにしろ!新手の敵飛行船は足が若干早い!合流して撃破が困難になる前にこの飛行船を落とすんだ!」
「そんなことは分かっている!風切隊、敵飛行船のガトリング砲台に対する攻撃を再開する!再攻撃開始!」
「「「風切隊、了解!」」」
爆撃機の攻撃が一旦終了したことにより、再び全ての戦闘機部隊がガトリング砲台に対して攻撃を始める。
「滑空機が鬱陶しくてたまらん!」
「風は唐国を味方しているな……」
隊員たちが弱音を吐いている。
現状、二台の敵飛行船が現れてから、未だ敵飛行船のガトリング砲台を二基破壊と、滑空機数機の撃墜という戦果しか挙げられていない。逸る気持ちも分からなくはない。
「もう一台の敵飛行船、さらに接近!我々を敵のガトリング砲の射程に収めます!」
更に、もう一台の敵飛行船が今戦っている飛行船の近くにまで現れたのであった。
「あれは……嘘だろ……」
その姿に、思わず小川が声を上げていたらしい。
その飛行船の上部には、八台ものガトリング砲台が取り付けられていた。
そして鉄の暴風雨が多くの飛行隊を叩きつけた。
「陸軍の戦闘中隊が全滅した!堕ちるぞ!」
「風切隊全機、一時的に退避し、敵飛行船のガトリング砲台の射程を確認しろ!ガトリング砲台自体も性能が上がっているかも知れない」
「了解!二番機小川、一時的に離脱する!」
「杉了解!」
「生機了解」
一時的に退避し、新手の飛行船を観察する。
「確かにこれじゃ、陸軍が大規模な損失を被ったのも頷ける」
「射程も連射速度も今までの飛行船に載っていたものと桁違いの性能だな」
「今までの戦い方では、ただただ戦力を損耗するだけだな」
機関の音と、戦場の音が五月蠅いが、皆が溜息を吐いたのが分かるような空気ではあった。
そんな折、三番機の生機少尉が提案出して来た。
「高い速度域を保ち、降下しながらガトリング砲台に攻撃を加え、すぐに離脱……というのを繰り返すのはどうか?」
「ふむ……分かった。その案で行こう」
「最前線も陸軍だけでなく、海軍の戦闘機にも影響が出ている。すぐに戦線復帰しないと」
「ああ」
すぐさま戦線に復帰し、戦闘に加わる。
先に戦っていた飛行船の上部のガトリング砲台は全て破壊し、あとは爆撃機の攻撃の為に、他の戦闘機部隊が滑空機などの対応に当たっている。
問題は、滑空機のその多さと、新型の飛行船に搭載されたガトリング砲台の性能である。
上昇気流が発生し、そのため滑空機が多いため、爆撃機が滑空機の搭乗員が放つ銃弾で、損害を受けている。
そして地味に唐国の熱気球が撃つ銃弾も、時に少なくない損害をこちらの機体に与える為、そちらの方にも気が抜けない。
「再度爆撃機が飛行船に爆撃を行う模様。上部は無力化されているため、護衛の戦闘機は滑空機に対して攻撃をしてください」
「「「了解!」」」
まずはこの飛行船の破壊が優先される。
大型の兵器が無力化されるのは、大きく戦意に関わる為だ。
「爆弾投下しました。爆発に巻き込まれるから、敵飛行船からはある程度離れろ!」
そして激しい爆音。
唐国の首都を守る二つの要塞の内、一つが墜落していった。
「良し!飛行船、一台撃墜!残るはあの重武装な飛行船だけだ!」
小川も自らと周囲の人間の戦意を上げる為なのか、大きく叫び宣言する。
「風切隊、各機、先ほど生機少尉が述べた戦術作戦……、これをこれから一撃離脱というが、それを行う。いいな?」
「「「了解」」」
風切隊の四機全ては息の合った飛行で編隊を組む。
「攻撃開始!」
四機が急降下を始め、新型の飛行船に搭載された八基のガトリング砲台の一基に集中砲火を浴びせる。
「ガトリング砲台の一基、破壊を確認!先に攻撃して一基減っていたな……これで二基目か……」
「調子いいぞ。もう一度、反転して再攻撃を行うぞ」
「滑空機やガトリング砲で爆撃機が心配だな……早くしないと……」
「そういや、海軍の爆撃機が一機足りない様な……拙いな」
この戦闘の中で、いつの間にか爆撃機が数機減っていたことに気付き焦る。
「隊長、焦るな。焦ってはこの戦いには勝てず、命さえ落としてしまいかねないぞ」
「心得ているし、気を付ける。上昇し、再度攻撃を行う」
一度、爆撃機が上空に退避している近くまで行き、急降下を行う準備をする。
「あの桐山、飛んではいるが、銃創が酷い。深いものもあり、そして多すぎだ。本当に早くガトリング砲台を破壊しないとな……」
もうあれほどの深い銃創が見られるということは、搭乗員にも死傷者が出ている可能性は非常に高いだろう。
「再攻撃開始!」
自分の逸る心と不安を振り切り、戦闘に集中する。
「三基目と四基目を破壊した!三連続で俺たちの隊が貰った!!」
「残りは五基だが……それにしたって滑空機が多いな」
「上昇気流も強くなっている。もっと上がってくるかもしれん。気を付けろ」
「そっちこそな」
「風切隊、再反転し、上昇した後に再攻撃する」
そして再び上昇する。
「あれを一回行っただけだが、友軍もかなり減ったな」
「陸軍機もかなり減ったが、海軍機も爆撃機が二機減っているな」
「敵討ちだ。攻撃態勢整ったな?再攻撃を開始する」
こうして、次々とガトリング砲台を破壊していくが、友軍も少しずつ減っていく。
「五基目破壊!残りは三基だ!」
「海軍機が六基目も破壊した!残り二機だ!」
「どこだ?天貫隊か?」
「いや……千鶴所属の戦闘機部隊、貴海隊だ」
「あいつらか……口利きで入ったとは言え、流石初の空母所属部隊。だが癪は癪だな」
「口利きで入ったような奴や、陸軍の臆病共には遅れを取りたくないな、隊長?」
「冷静になれ。それこそ足元を掬われるぞ。自分たちの敵は目の前の唐国の飛行船だけだ」
「失礼した。了解、眼前の敵に集中する」
再び飛行船に攻撃を仕掛け、状況は徐々に改善していく。
上昇気流もあるにはあるが弱くなり、滑空機はその数を被弾と滑空で少しずつ減らしていく。
「ガトリング砲台を全て破壊!やりました!」
「爆撃機に進路案内しに行くぞ。これで飛行船を落とせば、状況もかなり改善する」
「ああ!」
そして爆撃機が、爆弾を投下する。
「着弾まで、5、4、3、2、着弾、今!」
「うおっ!!?今までの飛行船より一回り大きい分、爆発も一段と大きいな!」
「良し……、これより、残りの滑空機と熱気球の破壊を行う。誰かの銃弾が無くなるまで撃て。作戦部隊自体の損耗は大きいが、早くに終わったため、燃料は大丈夫なはずだ」
「二番機小川了解。残党を討滅する」
「三番機生機了解」
「四番機杉、了解した」
そして残弾が無くなるまでの暫くの戦闘。
撤退戦を始めた気球を落とし、戦果を荒稼ぎする。
滑空機は機動力が高いため、たまたま目の前に来た時のみ攻撃していく。
「四番機杉、残弾尽きました!」
その言葉で、残敵掃討を終了する。
「最後は大体、一人4、5台といったところか」
「そうだな。ま、あの戦いの後だから、数は多くても落としきれないな。それに、熱気球程度なら陸軍の戦闘機部隊だけでも十分だろ。俺たちは明日から海の上を哨戒するだけで済むな」
「気を抜くな小川。自分たちはまだ戦闘域にいる」
「仕事は終わったんだ。だから……」
その先の言葉を小川が発する前に、銃声が遮った。
「どこからだ!?」
そこからか来た銃弾が小川機に当たったようである。
「お、小川少尉!?大丈夫か!?しっかりしろ!!」
敵を探すことに夢中になっていたが、生機少尉の声が気になり、小川機に目を向けると、操縦席付近が一部、赤くなっている。
「小川!?」
「下だ!滑空機がまだ居たんだ!」
「滑空機……周囲を確認し、自分たちに攻撃を仕掛けてくる機は無いか確認しろ!」
「あいつは降りて行くだけのようです」
「他は……いませんね」
「そうか……小川!大丈夫か小川!」
周囲を確認した後に、小川に声を掛け続ける。
しかし、小川は声に反応することなく、機体が緩やかに下がっていく。
そして小川機が地上の森へ突っ込んだ。
「小川!!」
「隊長!これ以上高度を下げるのは危険です!!」
「しかし小川が!!」
「他にも落ちた友軍はいます!捜索隊が派遣されるはずですから、位置を覚えて、帰って報告しましょう」
「そうか……、そうですね……失礼、血を見た所為か、取り乱しました」
「いえ……」
「隊長、少なくとも小川は銃創を負っていました。速やかに報告することを具申します」
「了解。……風切隊は直ちに帰還する」
この決戦は、なんとも後味の悪い結果となってしまった。
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