25話 陸軍護衛任務
明海三年 7月20日 空母飛鶴 第一会議室
上部にガトリング砲台を四基載せた飛行船と戦ってから一週間が過ぎた。
自分たちの部隊はあの後、小川とその戦闘機を回収に丸2日を要した(小川自体の救出は一日目で完了していた)ので、その間と、さらに小川に対する復帰の訓練5日は、戦闘に参加することはできず、飛行船迎撃には他の部隊が当たっていたらしい。
その他の部隊も、程度損耗が出ているようであるし、また、撃墜には未だ至っていない。
戦って2日後、別の方角から無傷の飛行船が表れたことにより、飛行船は最低二台存在すると考えられている。
閑話休題。
本日から復帰だが、ここである朗報が届いた。
「陸軍の飛行機部隊が今日、ここ天心港に入港する。そして、第一航空戦隊の千鶴所属部隊は大陸側の哨戒、偵察を。我々飛鶴所属の部隊は入港する陸軍の護衛、支援だ。まあ、あの鈍足の飛行船が表れるとは考えられないが、一応の策だ。陸軍のやつらが海に沈めばこの戦いは更に長くなることが考えられる。だが、肩の力は抜いていけ。復帰した小川あたりにも十分に肩を慣らせる任務だ」
会場から軽い笑いが漏れる。
司令も冗談などいう人であったのか。
「だから、あまり硬く考えなくても良い。もし敵艦隊や飛行船を発見したら、直ちに部隊を二分し、一つは迎撃を。一つは報告にここに戻ってきてくれればいい。分かったな?私からは以上だ」
こうして、陸軍飛行機部隊とその設営具を乗せた輸送艦を護衛する任務が発動した。
同日 赤海 上空
ここから下の海に見える、輸送艦、会樫及び洲戸本が陸軍飛行機部隊を乗せているらしい。
その周りには護衛の駆逐艦が四隻、航行している。
「あの艦形は……浜風型か?」
「そうだな。流石に詳しい艦名までは、近づいてみないと分からんが」
「そもそもどちらが会樫か洲戸本かも分からない」
「だな」
「浜風型の艦って、どんなのが有りましたっけ?」
「一番艦は言わずもがな、二番艦磯風、三番艦時津風、四番艦天津風であるはずだ」
「分かりにくいな」
「特に何かに関連付けられて付けられた名前ではないからな」
「噂ですが、上層部は元々『あ』から始まる艦名を付けたかったみたいですから、『天津風型』になるはずたったらしいです」
「それが何故四番艦に?二番艦にでもすればよかったのに」
「関係がない名前を付けようとしたら、今ある名前の案が天津風以外、無くなっていたらしいですね。浜風になったのは、この国が浜綴だからだろうよ」
「色々あんだなぁ」
「ま、自分たちが哨戒し続けるのは変わらない。怠けるなよ」
「ほいほい」
「って、もうそろそろ交代の時間だ。他の飛行隊は見えるか?」
「見えます。天貫隊ですね」
「そうだな」
「じゃ、引き継いで帰るとしますか……」
「風切隊か?」
「そうだ。天貫隊だな?」
「ああ。交代と言いたいところだが、途中で唐国のものと見られる飛行船を発見した」
「本当か!?」
「自分たちはどうすれば良いですか?」
「俺たち天貫隊は燃料に余裕がある。迎撃は俺たちがまず始めに当たる。風切隊は飛鶴に戻り、燃料を補給、このことを飛鶴に伝え援軍を頼む。それらが完了した後、再発進してまた来てくれ」
「了解しました。風切隊、空母飛鶴へ向かいます」
「了解。天貫隊は敵飛行船に向かう。方位、260」
同日 空母飛鶴 飛行甲板
「飛行船を交代に来た天貫隊が見つけ、現在対応に当たっていると。分かった。風切隊は補給後、すぐに出られるように準備しておけ。おい!爆撃部隊に伝えて、出撃できるようにしておいてくれ」
「了解しました。戦拓隊に伝えます」
「では自分は、機体に向かいます」
「そうしてくれ。あと、機体は急な対応ができる様に銃弾は少量しか乗せてなかったはず。銃弾は乗せられるだけ乗せておけ」
「分かりました。では自分はこれで」
「ああ……。さて、飛行船か……今度は勝てると良いが……」
赤海 飛行船近く 上空
「風切隊到着した。戦拓隊はもう少しで」
「天貫隊了解」
「現状は?」
「四基あったガトリング砲台のうち、一基を撃破した。時間はあったが、これだけしか破壊できなくて済まない」
「滑空機の方は?」
「恐らく海上だからか、一機の発艦も確認できていない。それらの危険は少ないだろうな」
「了解した。戦闘に参加する。風切隊、交戦を許可する」
「小川機了解」
「生機了解」
「四番機杉了解。交戦を開始する」
「滑空機がないらしいとは言え、ガトリング砲台は健在だ。風切隊各位、気は抜くな」
「「「了解」」」
滑空機がいないこと、対応に当たる戦闘機が多数いることで、いつもより早くにガトリング砲台を破壊していく。
「さっそく一基目を破壊……天貫隊が破壊したものを加えて二基目か」
「了解。残り二基も爆撃大隊が到着するまでに片すぞ」
「勿論。続けて攻撃する」
この大空に、遥かな銃声が鳴り響く。
「天貫隊がもう一基破壊したみたいだ」
「俺たちも負けてられないな」
「では最後の一基は俺たちが頂こう」
そして、風切隊の一機が飛行船へ突入する。
「飛行船上部のガトリング砲台の最後の一基を破壊」
「隊長が持って行っちまったな」
「隊長は黙ってやるからな。悔しいが効率的だな」
「後は爆撃大隊を待つだけか……?」
「いや、できるなら下もやっておこう」
「下?」
「もうそろそろ艦隊に遭遇するかもしれない。下にガトリングとか、砲でも乗せられていたら鉄の雨に艦隊を晒すことになるかも知れない」
「了解した。飛行船搭乗部分に対して攻撃を行う」
「気を付けろ。そういや下との交戦は初めてだ。何も無いかもしれないが、重武装を施されているかもしれない。全ての状況を予想しろ。風切隊、再び攻撃を開始せよ」
「「「風切隊、了解」」」
そして四機が飛行船の下に回り、再び攻撃を始める。
「風切の奴ら……下も制圧する気か?」
「どうします隊長?」
「何、答えは決まっている。俺たちも行くぞ。遅れは取らない」
「分かりました。ではこちらも向かい、攻撃を開始します」
更に四機が加わり、攻撃を始める。
飛行船 操舵席
「船長!小浜綴の奴ら、こちらにも攻撃を加える気です!」
「慌てるな。ここにもガトリングが付いているだろ。それでできる限りの迎撃を行え」
「でも!」
「でももだってもあるか!このまま小浜綴の援軍を呼び寄せたら、我が軍が堕ちるのも時間の問題になるかも知れないんだぞ!それに、あれらより鈍足な我々が逃げてもどうせ落ちるだけだ!港近くに落ちたとして、運が悪けりゃ小浜綴に捕まって殺され、運良く地上軍と合流しても、敵前逃亡でどうせ打ち首だ。分かったらとっとと追い払え!ガトリングの全力射撃を許可する!」
「りょ、了解!ガトリングでの全力射撃を行います!」
同上空 風切隊
「やはりガトリング砲があったか……ガトリング砲を目標に攻撃しろ」
「もうやってますって!」
「って、陸軍を乗せた輸送艦が見えます!早く無力化しないと!」
「……ん?いや、そこまで急ぐ必要が無くなったのかもしれん」
「どうゆうことですか隊長?」
「あれを見てみろ」
「あれは……!!!?」
輸送艦隊 旗艦 会樫 艦橋
「艦長!左舷に敵の飛行船と見られる物体が!」
「分かっている。だが海軍航空隊が対応に当たっているはずだ。もう一度望遠鏡で見てみろ」
「……あ、本当だ……少し混乱しすぎていたようです」
「それに、それより少し右の空を見てみろ」
「あれは……爆撃機桐山!?」
「いくら装甲の厚い装甲飛行船も、爆撃機には落とされるらしいからな。それに、輸送艦の我々には迎撃する手はずもない。彼らと、駆逐艦の皆にでも任せよう」
「は、はい……」
同上空 第二〇七爆撃飛行大隊 戦拓隊
「目標位置に到達。爆撃を開始します」
「これだけ低く飛べるのも、彼らが上部のガトリング砲台を抑えてくれた御蔭だな」
「はい。比較的安全に爆撃できます」
「投下開始!」
「……命中。飛行船爆発。墜落します」
「なんとか間に合った様だな。見渡せば輸送艦隊が見えるところに居るじゃないか」
「そうですね。装甲の厚いあれでは戦闘機では決め手に欠けますし」
「さて、帰るとしますか!」
輸送艦 洲戸本 甲板
艦内までも、飛行船の爆音が轟いた。
「なんだなんだ!?」
「飛行船が爆発したみたいだぞ!」
「飛行船!?ってことは、唐国がすぐ近くまで居たってことか?」
「そうらしいな。でも、海軍の航空隊が落としたらしい」
「もしかしてこの花火を用意するためにこちらに誘導したのかもな」
「その可能性は低いが、どちらにせよ、俺たちに被害に遭う前に落としてくれたのは良かったな」
「お、海軍の天風が来るぜ」
「おーい、海軍、良くやった!」
「浜綴、万歳!」
同上空 風切隊
戦闘後の哨戒前に、艦隊に近づくと、拍手や歓声が聞こえる。
「隊長、陸の奴らとは仲が悪いと聞いていましたが、案外褒めて貰えるもんなんですね?」
「同じ飛行機乗りと言うのもあるだろうし、目の前で花火を見せられたとでも考えたんじゃないか?」
「まさか」
「取り敢えず、そこまで悪印象にならないで良かったな」
「敵を目標前まで案内してしまったようなもんですがね」
「さて、展覧飛行も済ませたし、哨戒してから帰りますか」
「そうだな。風切隊、これより輸送艦隊の近海を哨戒し、その後に帰還する」
「「「了解!」」」
この日の飛行船撃墜を艦内新聞や報告で大々的に伝え、大浜綴帝国軍の士気を大幅に盛り上げたのであった。
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