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凪の中の突風  作者: NBCG
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22話 空対空戦闘

明海三年 7月5日 天心から燕京におよそ70㎞ 上空


「あれが唐国の……飛行船!」


爆撃機被弾の報告から僅か一日でその目標らしき敵が、目の前に現れた。


「隊長、どうします?」


「交戦を許可する。敵を落とすか、こちらの燃料が帰りの分になるまで、又は銃弾が尽きるまで、交戦を続けろ」


「「「了解」」」


今日ここで、明確な空対空戦闘が始まったのであった。


「それにしても……あの色はなんだ?」


四番機杉が言った。


あの色。


飛行船の、軽い気体を収める部分が鈍く輝いている。


「鉄か何かで装甲板を張っているのか?」


「一度撃ってみろ。分かるはずだ」


「了解。発射!」


二番機小川が機銃を発砲する。


甲高い音。


どうやら小川の予想は当たり、気体貯蔵部分に装甲板が張られているらしい。


「穴は!?」


「空いてないな。どれだけ厚い板を張ってやがるんだ」


「明らかに軍用だな」


「相坂隊長、どこから攻撃する?」


三番機杉が尋ねてくる。


下部は人が乗っているから、恐らく武装されているよな……それに、上からなら重力加速も加わって、貫通できるかもしれない。


「上だ。自分から行く。各機、着いて来い」


「「「了解」」」


機体を上昇させ、上から攻撃しようとする。


「あれはガトリング砲!?」


唐国の飛行船の気体を収める場所の上部分には、ガトリング砲台が設置されていた。


「前と後ろで二基のみだが……」


「ガトリング砲台を優先して破壊せよ。飛行船自体は後で攻撃する」


「了解した」


カァン!


命令を下したその直後、翼から弾けるような音。


「撃ってきやがったな」


「高さによる有利さが飛行船に載せることによって失われているな。もっと高度をとれるか?」


「……このあたりが限界らしいな」


その高さは、ガトリング砲台の僅か十数メートルという程のみの高さである。


爆撃機の桐山では、もう少し高くまで飛べるはずだが。


もしかしたら炎上した桐山は、高くに逃げようとして、それでも距離をギリギリのところで稼ぎきれず、被弾してしまったのかもしれない。


「仕方ない。攻撃を」


「「「了解」」」


高さについては諦め、攻撃を開始する。


旋回させ、何度もガトリングに攻撃を加える。


「ガトリング砲台、一基撃破!撃破!」


この間にも、ガトリングの弾の数発が機の胴体や主翼、尾翼などに当たっている。


「あとは後部の一基のみか……」


「隊長!小川機、弾切れです!戦線を離脱します!」


「生機機もだ!戦線を離脱する!」


二機が戦線を離脱。


これは非常に手痛いな。


「一番機相坂から四番機杉へ。戦闘中止!帰還する!」


「こちら四番機杉、了解」


唐国側は、ガトリング砲台一基破壊と、装甲板に被弾多数。


浜綴側である、相坂の飛行体、風切隊は、被弾多数、燃料弾薬の大幅な消耗。


どちらも戦力低下を起こしたが、壊滅状態にはあらず、どちらの側も生き残る結果となった。


若干の差では、ガトリング砲台を一基失った唐国側が遅れをとるような結果だが、しかしその差は小さなものともいえる。


つまり、史上初の空対空戦闘は、引き分けに終わったのであった。


同日 空母飛鶴 第一会議室


「つまり相坂、君は、あの飛行船を撃ち滅ぼすには一個爆撃大隊と、それを護衛する戦闘機中隊が数部隊必要であると?」


艦隊司令が訝しげに尋ねてくる。


「はい。この戦いに於いて、私が感じたことは、機銃の威力が、敵の飛行船の装甲板を貫通するに足りず、滅ぼすには爆撃大隊が必要だと感じました」


「しかしだな、相坂。敵の飛行船はこちらの飛行機の速度より遥かに遅く、脅威にはあまりなっていないと、私は考えるが」


「確かに現状、こちらへの大した被害は少なく、その被害も全て航空機によるものであり、飛行機に於いては、見つけ次第回避すれば、それほどの脅威になるとは思えません。しかし、近い将来、あれが量産され、搭載されたガトリング砲台から放たれる重い銃撃が同胞の陸戦隊や陸軍の被害が増えるかもしれない可能性を考えると、早急に破壊するのが手かと」


「そうか……」


「それに、もしあれが、唐国軍の士気を支えているものであるのならば、それを目の前で破壊すれば、燕京までを阻止せんとする兵士の士気を下げ、首都攻略の作戦を早められるかもしれません」


「成程な……。分かった。敵飛行船破壊を主とした作戦を艦隊司令部として立案しよう」


「自分の具申をお聞き入れ頂き、誠に有難うございます」


「これも、浜綴の全ての国民の為だ」


唐国首都燕京


「皇帝、あの西洋から仕入れた、飛行船、再び浜綴の飛行機部隊を迎撃し、撃退させたとのことです」


「そうか。やはり、あれらを仕入れて良かったというものだ。小浜綴は小さな飛行機を開発して喜んでいるようだが、やはり大きさというものは正義だな」


「はい。以前に皇帝が仰っていたように、大きさは正義、大きさは強さにございます」


「よもや、あれら飛行船がやられることはあるまいな?」


「勿論にございます。それに、先の戦いと、この戦いには間に合いませんでしたが、あれらの部隊の教育も既に終え、飛行船への搭載作業も、もうすぐに終えます」


「やはり数も正義だな。たった一台のみでは、それらの教育と、航空防御を成し得なかったやも知れぬ」


「複数台の購入を決定した陛下に置かれましては、誠にご名決にあられました」


「そう褒めるな。まだこの戦争に勝った訳ではない。勝つまでは気を抜くな。勝利とは、気を抜いたところで足元を掬われることになる」


「はっ。申し訳ありません」


「別にいい。勝った訳ではないが、負けた訳ではない。気を抜かず、最後まで戦い抜くのだ」


「勿論にございます。絶対に、奪われた港の奪還と、太平洋に繋がる浜綴の地をせしめるまで、この汗と涙と血を流し続ける所存にあります」


「うむ。頑張りたまえ」


「有りがたきお言葉。一層の鍛錬を積みあげましょう。そして、あの憎き浜綴と、その新鋭兵器である飛行機を用いた部隊を今度こそは殲滅して見せましょうぞ」


浜綴と唐国。両国共に、敵の航空戦力を駆逐することに、その闘士を燃やしていたのだった。

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