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凪の中の突風  作者: NBCG
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20話 第二次浜唐戦争勃発

明海三年 6月19日 ユーリシア大陸 “大浜綴帝国” 三灯さんとう半島 翠島港


浜綴が得たこの土地で、銃声が鳴り響いている。


「くそっ!数が多いったらありゃしねぇ!」


一人の陸軍兵が叫ぶ。


「ここだけは何としても落とされるな!俺たちが落ちれば、天心や広連の奴らが帰れなくなる!」


「一時方向にガトリング砲!」


「一時方向のガトリング砲要員に射線を集中させろ!」


彼ら陸軍は、一三式小銃のその高い連射性能を以って迎撃しているが、更に連射性能の高いガトリング砲は有していない。


つまり、敵がガトリング砲を有しているということは、明確な戦況の不利であることは明らかであった。


「翠島本部より通達!天心と広連の人員が退避を始めたとのこと!もう少しだ!あともう少しだけ持ちこたえろ!」


「遅いんだよ!クソが!戦時手当は弾んでもらうぞ!」


赤海 航行艦隊 空母飛鶴 飛行甲板


「第二〇五戦闘飛行中隊、風切隊、発艦します!」


甲板の上で船員が叫ぶ。


そして自分の機が大空へ風を受けた。


自分たち風切隊は制空権の確認と、気球など、敵航空勢力を発見次第排除し制空権を獲得することと、天風の機銃を以って、地上で戦う陸軍の航空支援を行う。


航空支援が爆撃機ではなく戦闘機が行うのは、爆撃機では未だ爆撃の精度が微妙であり、敵しかいない土地や、対艦攻撃以外では味方を巻き込む可能性があるためであった。


「敵気球発見」


港にも気球はあるが、全て観測用の係留されている気球のみであり、眼前にある、自由に浮いている気球は紛うことなく敵の気球であった。


気球の籠の人間は銃を以って浜綴の陸軍に対して攻撃を行おうとしている。


それを阻止するため、機銃の発射鈕を押し、気球に穴を開ける。


「敵気球を一台破壊」


横眼を映すと、二番機小川がまた別の気球に穴を開け、墜落させていた。


「敵航空勢力を殲滅した。制空権を確保。これより、航空支援を開始する」


機体を旋回させ、こちらの陸軍がどこで戦線を張っているのかを見極める。


そして、浜綴の陸軍の制服以外の人間が見えた時、発射鈕を押した。


翠島港


「あれは……海軍機か!」


「遅いんだよな、何もかも」


「民間商船は出港し、その護衛の砲艦も出た。後は俺たちだけだ。海軍の砲艦に乗り込め!」


「俺が殿を務める。早く乗り込め」


「バッカお前、俺たちが最後なんだよ阿保!とっとと乗り込め!海軍の飛行機が今足止めしてくれてんだ!上の奴らの弾がなくなる前に退くぞ!」


「応……格好つけるもんじゃねぇな」


早急な対応により、唐国の急襲からおよそ六時間で大陸全ての港からの退避は完了した。


政府が唐国に対して憂い、瀬保海軍基地所属艦隊と演習をしていたところの襲撃であったということは、幸運だったとしか言いようがないだろう。


逆に、唐国はその数の暴力と、最近購入したガトリング砲を以って帝国軍の排除に成功したともいえた。


空母飛鶴 飛行甲板


「諸君らの活躍により、急で大規模な襲撃にも関わらず、死傷者は数十名程度に抑えることが出来た。しかし、民間人と陸軍の人間の安全を先決したがために、我々は先に得た三つ全ての港を失うこととなってしまった。これにより、大浜綴帝国政府は事実上の宣戦布告を受けたとして、唐国に宣戦布告を行った。これから先、我々航行艦隊第一航空戦隊は、奪われた三つの港の奪還の足掛かりとなる、翠島港の奪還、それから、広連、天心と、赤海に存在する港の奪還を行う。第二航空戦隊は、これより南の港の奪取を行う。後に輸送部隊を送り、陸軍による大陸内部侵攻を開始するらしい。まぁ、唐国の古くからの戦法として『敵を引き込んで補給線を絶ち切ること』をするということも政府も理解しているはずであるため、各地主要な港と唐国の首都燕京を制圧したのちに終戦の用意を始めるだろうとの軍上層部の判断だ。宣戦布告もなく、我々の国民、特に民間人が一人でも殺されたということを胸に刻み、敵を滅せしめよ!明日からの君たちは羅刹夜叉と化し、そして、唐国が我々に再び戦争を始めたことを後悔させてやれ!私からは以上だ」


実際、小さな港町は、陸軍の寄り所では対応しきれず、民間人の犠牲者の多くが出てしまっていた。


明日からはかなりの激戦となるだろう。陸軍が投入できない初期の段階では、我々海軍の上陸部隊、所謂陸戦隊が対応するところとなってしまうのは、非常に厳しい所だろう。


彼らは先の第一次浜唐戦争の時の経験から、陸戦隊として任命された後、再編成される為にその役割が与えられただけに過ぎない。


実戦では初であるし、彼らは上陸用に考えられた兵器を使うのではなく、軍用艦が所有している内火艇などで上陸するしかないからだ。


明日ともなれば、もしかすると武装漁船はおろか、唐国海軍が既に陣取っているかもしれない。


彼らが先に体勢を整えてしまう前に、こちらから橋頭保を打ち込まなければならない。


6月20日 赤海 三灯半島近海


時間は朝八時。


時は来た。


自分たち第一航空戦隊が橋頭保を築き、唐国首都燕京まで、後に続く陸軍の花道を整える。


その前段階作戦として、三灯半島にある翠島港をまず始めに制圧に掛ける。


その中でも航空部隊は、その花道を整える陸戦隊が戦いやすいように、偵察、制空権の保持、敵主要陣地の爆撃を行う。


そのために今、第一航空戦隊の千鶴所属、第一〇五戦闘飛行中隊、貴海隊と、飛鶴所属、第二〇五戦闘飛行中隊、風切隊が飛び立った。


既に偵察部隊が情報を得、おおよその主要拠点の位置は把握している。


が、そこには空からの優位性を重んじたのか、気球がとび、それらの籠には銃を持った兵士が居るらしい。


自分たちはそれらを破壊した後、目につく対空兵器を破壊、帰還する。


一度帰還した後、爆撃機をもう一つの戦闘飛行中隊と護衛し、爆撃の支援を行う手筈だ。


「風切隊、発艦開始!」


相坂がそう叫んでいる。


戦場で余裕がないのは分かるが、略すのはどうだろうか。


そこまで略してはいないからいいのか。


まあいいか。


三灯半島近海上空


「港に係留された気球を発見。攻撃開始」


機銃で気球を落とす。


そこで見渡すと、半島の奥地に更に気球が飛んでいるのが見える。


「気球、2台発見」


「ガトリング砲も確認できます」


「自分と小川は気球を、生機と杉はガトリング砲を頼む」


「了解」


「分かった」


推進器の音が五月蠅い為、大声を出さなければならないのは、面倒なところだ。


気球を落とす。


生機と杉も地上のガトリング砲をその機銃を以って破壊していた。


気球を落とした後、彼らを追って地上付近を飛ぶ。


「大丈夫か?」


「大丈夫だ。それより……」


「あれは……」


眼前に広がるのは、これから飛ばんとする気球が横たわっている姿。


それも、8台。


「気球なんざ、数を出せば良いってもんでもなかろうに……」


「行くか?」


「もちろんだ」


地上のガトリング砲を破壊するように、その機銃を地上に向けて放った。


「全ての気球を撃ちました」


「了解。ガトリング砲と主要施設を発見次第破壊せよ」


「了解した」


多くのガトリング砲と主要と見られる施設を破壊し、空母へと帰った。


空母 飛鶴 飛行甲板


「お疲れ」


倉田が自分に対して冷水を渡してきた。


「ありがとう」


「相坂が礼を言うなんて珍しい」


「そんなに言ってないか?」


「そういや整備以外礼を言われるようなことはしてなかったか」


「そうかよ」


「上陸作戦は明日だってのに、ここじゃそれほど緊張感はないなぁ」


「それもそうだろ。上陸する奴らはこの船には乗っていない」


「とは言っても、お前らは空を飛んでは行くだろ」


「敵の飛行機でも出てこない限り、そんなに考えることは無いからな」


「ガトリング砲はどうなんだよ。あるって聞いたぞ」


「当たらないからなぁ。……当たり前だけど。当たっていたら今頃俺たちはここにはいない」


「そりゃそうだ。でも、爆撃を行って、それで終わりってのはな」


「上陸するために、一度時間を置いて、敵に撤退する時間を与える為だとさ」


「なるべく戦いたくないのは分かるが、それで大丈夫なのか?敵の数は減らないぞ」


「混乱でこちらの陸戦隊の数を少しでも保っておきたいんだろうな。本格的な地上戦は陸軍の分野だ。陸戦隊は彼らが上陸できるようにすることだけが役割だからな」


「そう考えるとそうか」


「ま、この先何が有ろうと、俺たちが陸の深い所で戦うことは無いだろうな」


「そうだと良いな」


「さて、明日も作戦はある。とっとと帰って寝るか」


「そうだな。湯飲みは俺が片しとく」


「良いよ、別に。お前が持って来たんだ。片すくらいは自分がやる」


「そうか……、じゃ、お言葉に甘えるとするか」


この次の日、三灯半島翠島港は再び大浜綴帝国のものとなり、これからの作戦の全ての足掛かりとなるのであった。

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