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凪の中の突風  作者: NBCG
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19話 戦艦Dauntlessとその影響

明海三年 6月19日 首都 万京


「号外~!号外~!」


ここ、帝都万京では号外の新聞が、ありとあらゆる新聞社から出されていた。


それらの記事の一面には、大きく「戦艦ドントレス就役!」と書かれていた。


従来の成国の戦艦がレシプロ機関で18ノット程であったのに対し、この新戦艦は蒸気タービンを装備し、21ノットまで出せるのである。


そして中間砲、副砲を廃し、単一口径の連装主砲塔5基を装着して戦艦の概念を一変させ、これにより片舷火力で最大4基8門の砲が使用可能となり「本艦1隻で従来艦2隻分」の戦力に相当し、さらに艦橋に設置した射撃方位盤で統一して照準することで命中率が飛躍的に向上、長距離砲の命中率はそれ以上であった。


ただ、これには複数の問題も生み出してしまったのである。


浜綴含む他戦艦保有国が一切の戦艦が旧式化したのは言うまでもなく、それは大成帝国も他ではなかったのである。


このドントレス革命とも言うべき戦艦の技術躍進は、この戦艦ドントレス以上の性能を示すに値し、大成帝国のドントレス以外の戦艦は勿論のこと、ドントレスでさえ、旧式戦艦であるということでもあったのだ。


このことに対して危機的状況であると同時に国力を他の国、特に列強に追い付き、さもあれば追い抜くことすら夢ではないと感じた浜綴政府は、大成帝国の建造会社にこの弩級戦艦を超える、超弩級戦艦級巡洋戦艦として、新戦艦二隻が建造途中にあるにも関わらず、水晶型戦艦四隻を依頼し、一隻を建造発注、一隻をノックダウン生産、残り二隻を事実上のライセンス生産をするに至ったのである。


また、この高出力な機関である、蒸気タービンも海軍技廠は目をつけ、新たな空母を作成するに至るのである。


四四計画艦はそれ自体が旧式化してしまったが、全ての艦は浦呉所属となり、浦呉の旧式軍艦たちは、浜綴本島と北海島を隔てる津刈つがり海峡の本島側、青山県緒穂湊おほみなとの、緒穂湊海軍地方基地に宛がわれることとなった。


航行艦隊及び高須賀海軍所属艦における、戦艦ドントレス出現以降の最新鋭の軍用艦群で編成される新たな艦隊計画を、再び海軍は考えなければならなくなってしまったのである。


詳細を示すと、航行艦隊には、水晶型戦艦二隻、新型空母二隻、新型巡洋艦四隻を配備し、高須賀海軍所属艦隊には、水晶型戦艦二隻、前弩級戦艦張間型二隻、前弩級戦艦香椎型四隻、空母千鶴型四隻、等級改定前巡洋艦及び駆逐艦他多数の配備となる。


これを、五年後の、明海八年までに完了する予定である。


またこれに合わせ、新たな駆逐艦なども建造する予定ではある。


しかし、それらの忙しない雰囲気を感じ取り、横やりを入れようとする国家も現れる。


臨時国会議事堂


「一気に増えたな」


「何がです?」


「大陸側の土地での襲撃事件がだよ」


「最近良く聞きますね。何故でしょうか?」


「恐らく……あの建造計画のことだろうな」


「戦艦らが旧式化し、建造に勤しむ中、そこを狙い、我々から元の土地だけでも奪い返そうとでもいうのでしょうか」


「そうかもな。元はと言えば向こうが仕掛けて来たというのに。それに、あ奴らの所為で、国会議事堂すら完成していないのだがな」


「全く以って唐国の態度は甚だしいものですな」


「こちらも、飛行機は知られたが、新たな攻撃方法自体は未だ各国に知られていない様だし、優位性はまだこちらにあるな。気を付けなければならんが」


「牧田総理、気を付けなければならないで思い出しましたが、唐国で何やら新たな兵器をどこぞの国から購入したという噂が」


「新兵器?ガトリング式連射銃なら以前に聞いたが?」


第十代目総理大臣、牧田清守まきだ きよもり総理が首を傾げる。


「いえ、別の兵器です」


「それは如何に?」


「どうやら……飛行船を」


「飛行船……なるほどな。何処の国からというのは分かるか?」


「ガトリングと飛行船、どちらかは分かりませんし、噂の域を出ないのですが……」


「構わん」


「どちらかは藩泥流帝国、そしてまたどちらかは煤羅射帝国、と」


「藩泥流に煤羅射か……兵器の大きさから見て、ガトリングが藩泥流で、飛行船が煤羅射か?しかし……」


「ええ。煤羅射は今のところ、蒸気船の自国生産の成功は聞いていましたが、飛行船の開発はまだ聞いておりません。飛行船を運用できるのは藩泥流帝国、それに煤羅射が飛行船の技術を得ていたとして、国境を有する唐国に技術を渡すとは思えません。例え、けしかけて我々にその技術の矛を向けるとしても」


「だが、飛行船は以前興味があって、その理論書を見たことがあるが、飛行船の技術は、その技術を得ていない国家から見て、一台でも実物が無いと作れるとは到底思えん」


「居たとすればかなり親密な内通者となると思いますが……」


「煤羅射はもとより、藩泥流……気を付けなければな。もちろん、浮蘭詩、墺利亜、北銀、大成帝国、それに以前から交易のあった帆蘭土でさえも、疑って掛からなければならん」


「雄州諸国との溝は深いですな」


「仕方あるまい。雄州では『黄禍論』という論調まで一部出ているらしいからな」


「『黄禍論』とは?」


「我々、黄色人種、特に唐国に於いては以前列強程度の国力もあり、雄州諸国も内心そのことを気に掛け、その実力を隠し持っている、とな。我々浜綴も、彼らにとって、唐国には及ばないものの、それなりの実力を持っていて、何れ脅威になると、考えられているのだろう」


「なるほど……」


「しかし、今考えなければならんのは、唐国のことだ。何れ仕掛けてくるぞ。我々の艦隊計画が完了する前に……な」


「ええ。それに、運が良ければ唐国がどこから新兵器を仕入れ、どの国が我が国と敵対しているのか、分かるかも知れませぬ」


「そうだな……」


「今現在、外地の港にはどれくらいの軍用艦が泊められているのですか?」


「広連に戦艦1、砲艦3、天心には戦艦1、砲艦2、翠島に砲艦4だ。戦艦は全て旧式だし、砲艦という艦種自体も弱いものだが、状況を安定させるだけならこれくらいで十分だろう。海賊には対応できるしな」


「しかし、湾内と言うのは聊か気になりますな。広連と天心は坊海の中にありますし、翠島でさえ、赤海の中にあります。事前に準備されているのであれば、囲まれてしまいます」


「向こうの三大港の艦は接収し、資源として溶かしたから、碌な戦艦は多くないはずだがな……」


「それでも、噂にある飛行船等と共に急襲されれば、こちらの対応も遅れ、無駄な資金の出費を強いられかねません」


「だな。だが……」


「はい?」


「そのときは、更なる賠償金をせしめてしまうだけだな」


「以前のこともあるので、他国からの干渉も懸念されますが……」


「なら、再び飛行機を与え、黙らせるだけだな」


「技術流出の懸念は如何に?」


「旧式の早風、太刀風を与えよう。彼らは研究材料としてそれらを研究者たちに噛り付かれ、実用化には至っていないはずだ」


「大丈夫でしょうか……?」


「なぁに。飛行機は技術だけでは話にならない。空母や飛行場と言った保守管理運用から、爆撃機や戦闘機と言った用途運用に欠くのなら、それはただ空を飛ぶだけの玩具だ」


「そういえば、空母や爆撃機の運用には、他国から何も言われていないのでしょうか?」


「彼らには空母は輸送艦と、爆撃機は輸送機、戦闘機は偵察機としている。まぁ、嘘はついていないな。空母は航空機輸送艦でもあるし、爆撃機は爆弾の輸送機だしな。戦闘機も武装しただけの偵察機ともいえる」


「総理もお人が悪い」


「三枚舌外交と揶揄される成国ほどではあらんさ」


「確かに」


「機銃も、なるべく隠している。一三式航空小銃はばれてしまったが、二八式航空機銃は未だ隠し通せている」


「本当に隠し通せているのでしょうか?」


「外交下衆の成国なら聞きに来ているだろうし、帆蘭土なども外交の時に長さに物を言わせて購入の話くらいはしてくるだろうよ」


「一先ずは安心、ということですかね?」


「ああ、そうだ。やはり先立つ不安は……」


その言葉の先を繋ごうとした時、扉を軽く打つ音が、彼の言葉を遮った。


「失礼します。緊急ですので急な入室お許しください」


「……唐国か?」


「……お察しの通りです」


唐国は、今度は宣戦布告もなしに、浜綴に対し攻撃を開始したのであった。

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