18話 新艦隊計画
明海三年 5月15日 高須賀海軍基地 会議室
「これより、次期新艦隊計画会議を始めます」
ここには、多くの人物、それも、海軍の将官や佐官がいる。
そこになぜか、自分含めた操縦士数名もいる。
正直言って、飛行機は高価であり、なおかつ飛行機の効果が先の戦争で見直されたからと言って、飛行機乗りを全て士官以上にするという計画の中で、何故か中尉になっただけの自分にはいささかこの場は緊張する。
「今回は完全に新たな、そして、空母を含めた艦隊計画である為、操縦士達にも出席してもらった。代表として、空母千鶴所属の第一二航空群、第一〇五戦闘飛行中隊、別名 貴海隊隊長の、今藤君より挨拶を賜ろう」
「第一二航空群、第一〇五戦闘飛行中隊、貴海隊隊長、今藤 貴宣です。階級は少佐です」
少佐ねぇ……こちらを見て、口角を上げながら奴は言った。
階級は服の章をみればわかるが、敢えて言っているところから、自分や飛鶴の操縦士に対して格の違いとやらを見せつけているつもりなのだろうか。
どうせ駄々を捏ねて千鶴以外の所属の操縦士よりも階級が上にしたいと頼んだろうな。
それで得た階級を紹介されても、紹介された方は困るだけだろうに。
事実、会議室の大半の士官たちは苦笑いを浮かべている。
「では、本題だが、昨年の戦後補充計画で得た二隻の戦艦、張間型の張間と見留は瀬保基地の補充に充てられた。あれらは香椎型戦艦と準同型艦で、航行艦隊の支援戦艦として就役させる予定だったが、広い航行を望む航行艦隊の役に付くにはあまり前型と変わらないから、航行艦隊には向かないのではないのかという考えが出てきた。現在の艦隊でもそもそも航続距離が足りないとも思われる為、高速で航続距離の長い新たな艦隊が必要だということが考えられた。そこで、我々は航行艦隊の名に適した空母とその僚艦の建造を計画した。名を四四艦隊計画と言う。主力艦四隻とその支援艦四隻とするものだ。その内訳は、主力艦として、新型高速戦艦二隻、空母二隻、支援艦として、巡洋艦という新しい艦種を据え、それらを四隻造るという案だ」
「操縦士達にこの会議に参加してもらったのは他でもなく、空母の建造に当たって、何か要望があるのかを聞きたいと思ったからだ。何か実用的な案があると助かる」
「では一ついいですかな?」
今藤とか言ったか、こいつ、前のめり過ぎないか?
「……。どうぞ」
「仮にも私たち操縦士は士官、私は特に、少尉ではありますが、流石に士官に充てる部屋が四人一組と言うのは、若干狭いとは思いましてね。もちろん、高額な飛行機を扱うという身分、その為にただ昇格されただけというのは分かっています。ですが、それでも仮に士官という身分の者が、四人部屋というのはどうなのでしょうか?他の操縦士以外の士官は皆、狭かれ広かれ一人部屋が充てられています。私たちも、狭くても良いので一人部屋が欲しいですね」
言い方、声色は人を苛つかせるに十二分なものではあるが、確かにそれはして欲しいとは思うな。
こんなのだが、案外隊長を任される分、まだまともな部類なのか?
「あと、もっと待遇は良くならないのですか?」
「待遇とは?」
「水兵らの自分たちに対する態度ですね。特に機関員。彼らは熟練ということで、貴族である私たちを軽視しているのではないのですか?」
前言撤回。
こいつら機関員の重要性のひとつも分かっていないのか?
「だいたい、炉を燃やしているだけなのに、態度も大きいんですよ。共用の厠も先を譲らない、……」
この後もうだうだとご高説を垂れている。
こいつはノブレス・オブリージュという言葉も知らないのだろうか。
熟練の機関員でなければ、前回の近海練習航海もあのように順調には行かなかっただろうし、今まで機関の不調も本当に少なかった。
彼らには慣れない船であったというのにこれほどの腕とは、感謝しかないのだが。
やはり甘やかされて育ったのだろうか。
周りの士官もまた、苦笑いを浮かべる。
「あ、ああそうか、分かった……ハァ」
将官の一人が今藤の言葉を止めた。
「自分も良いでしょうか?」
「えぇと、君は?」
「飛鶴所属、第二二航空群、第二〇五戦闘飛行中隊、風切隊隊長、相坂中尉です」
「そうか、分かった。要望とは?」
「ありきたりかもしれませんが、空母の飛行甲板を取れるだけ取れたら嬉しいかなと。あとは、偵察用の熱気球はいらないと思います」
「熱気球はいらないと。それはなぜ?」
「偵察は偵察機に任せた方が早いかと。それに、今後敵性航空勢力と合い見えた時に、ただの的になる可能性があるかと」
「ほうほう、それで?」
「あとは、煙突ですが」
「煙突?」
「千鶴型の煙突は軌道傾斜式で、発着艦のときに傾斜させる様式でありますが、以前、事故が起こったときに、その時間が着艦で時間が掛かって、ひやひやしたものです」
「それは飛鶴の操縦士の腕が低かったからでは?」
今藤が突っかかって来た。
「今藤君、今は相坂君の話をしているんだ。控えてくれ」
「……分かりました」
何だこの渋々聞きますみたいな態度は。
態度が悪いとはこのことを言うのではなかろうか。
「それに、戦場では、一分一秒を争います。なるべく時間を取らせない様に、邪魔にならないような取り付け方をすべきかと」
「なにかいい案があるか?」
「いえ、造船に見識がある訳では……」
「そうか、いや、案が聞けただけでもいいんだ」
「最後にもう一つですが」
「何だね?」
「甲板の副砲類ですが……」
「砲熕類がどうしたかね?」
「自衛砲の一切を廃し、機関銃を艦の周りに取り付けるだけで良いかと」
「その心は?」
「副砲並の火力を考えますと、直接敵艦に爆撃を行った方が早いかと。機銃については、海賊や敵性航空機に対する対抗策です。艦の周りと言うのは、甲板上では煙突の通り、発着艦の邪魔になりますので」
「分かった。その意見も汲み取っておこう」
「有難うございます」
「では次の……」
こうして操縦士に対する意見聴調会が進んだのであった。
ここだけの話として、新たな艦らの名前を聞かされることとなった。
戦艦は、河津型となり、二番艦は摂内となる。
空母は二つの同型艦なしの艦であり、準同型艦となる。
一つは辰飛、準同型艦であり、同型とした場合、二番艦となる、辰見である。辰飛は煙突横倒し式であり、煙突を後ろまで伸ばすことになり。辰見はその場で煙を逃がす構造となっている。
巡洋艦とは戦艦より小口径砲を多数搭載し、戦艦よりも装甲が薄く、足の速い艦である。
以前は巡洋戦艦や装甲巡洋艦、防護巡洋艦などがあったが、等級がさまざまであると面倒である為、水上艦の軍艦の艦種は、砲の大きさから、30.3㎝を超えるものを戦艦、それ以下、15.5㎝を超えるものを巡洋艦、それ以下の戦闘用水上艦で1000㌧以上は駆逐艦とされ、それ以下の重量は護衛駆逐艦とされることとなった。因みに最後の二つは軍艦ではない。
河津型は50口径30.5㎝連装砲3基と45口径同㎝連装砲3基の二種を主砲とするが、この計画で追加される巡洋艦の主砲は20.3㎝連装砲二基四門を主砲とする。
名前は新鷹であり、二番艦から、但馬、乙羽、刀根である。
帝國海軍の歴史が進みゆく中、新たな戦艦を大成帝国が打ち出したことによって、世界の海軍の形式も、大きく変更することとなるのである。
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