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凪の中の突風  作者: NBCG
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2話 空と銃

練解十三年 6月


飛行機が上層部に見せられて、どうやら開発は進められることとなったらしい。


それにより、試験操作員として、内陸県である、中野県にいる。一応にも海軍の水兵なのになんで山の中にいるのやら。


海がないだけ磯臭い臭いがないのはいいのだが、気球で空中散歩するのが二日に一度から、一週間に二度になったのが辛い。


飛行機に頻度良くのれないのはまだできてすぐの技術であり、他の列強や大国に見られるわけにはいかないのは分かるが、何故気球まで乗れないのかは分からない。


もちろん、気球が2機しかなく、数に制限があるのは分かっているのだが。


「おーい!相坂、次の試験があるぞ!」


まあいい。今日は新型機の試験である。


と言っても、これもまた試験機で、実用機ではないらしいが。


今回は技廠製作飛行八号機と言う名らしい。


四、五号機は二号機と三号機の予備で、四号機は失われた二号機の代わりを務めた。


六号機はさらに骨組みを強化し、操縦席をより椅子に近い形にしたもので、機関の馬力も向上しているらしい。数日前まではこれに乗っていたが、確かに二号機四号機よりは座り心地は良かったな。


そして七号機は六号機の予備機。


今回の八号機は機関の操作性の向上、軽量化と高耐久化を施し、さらに飛行中に銃を扱うように施されているらしい。乗った限り、そのような感じはしないが。


弓ではなく銃なのは、弓だと完全に両手を操縦桿から離さなければならないし、銃だと手を離すときは弾込めの時だけで良いし、自分よりもっと手慣れた銃の扱いをできる人間だと、弾込めの操作も片手で良いかもしれない。


しかし、銃の弾込めには弓に矢を番えるよりも時間が掛かる。


自分が生まれる少し前くらいに、腔線と呼ばれる機構が銃に施されたらしい。これは、製作の手間や弾込めの手間が従来のそれらよりも格段に多くなることの代わりに、直進性を高め、命中率を向上させるらしい。最も、従来の弾込めも、矢を番えるよりも時間が掛かるのだから、腔線が入った銃だと、さらに弾込めの時間が掛かるだろう。


遠くの国では、「幕府」が機関砲と称した、連射できる銃砲類が存在するらしいのだが、こんなにも遠くの地に、そんな最新のものが渡るはずもないだろう。


今回は一つの的を撃つだけで良いらしいのだが、これだと弾込めに時間が取られ、実戦で戦うことになったのなら、あまり使えないような気がする。


パァン!


何とか的には当たったのだが、これではやはり、使い物にはならないような気がしてならない。


そのような旨を整備員長である爺に伝えると、


「……すぐに新型を使えるようにするさ」


と、何やら濁すばかりだ。


まさか「幕府」、若しくは技廠が機関砲でも手に入れたのだろうか?


速く見たいものだ。


……。


同月 某日


「ふぅ~む」


俺が親方と呼び、相坂が爺と呼ぶ、槌田つちだ 真県しんけん整備員長のが、置かれた試製の銃を見て唸る。


因みに相坂は爺と呼ぶが、まだ整備員長は白髪が生えたばかりの五十手前である。技術者としては若い方だろう。


「どうですか、親方」


「おお、栄治か。ぼちぼち……と言えたらいいのだがな。さっぱりだ」


「具体的には何処が?」


「今まで通り、前装式だと、早合を薬莢に変えたところで、根本的な解決には殆どなっていないことは前に説明した通りだが、で有るならばと、後装式を考えてみたのだが、さっぱり思いつかん。一応蓋で閉じる案も考えたのだが、それでも装填速度が遅い。改善は一応されているが、これではな。空の実践では使えそうにない」


今は新型の連射能力の高い銃の開発を急いでいる。


ガトリング砲という名の銃もあるが、整備性の悪さから、実戦での投入は少ない。


それに、それらは外国から購入したので、その開発能力すらこの国は得ていない。


そのため、高連射性、高整備性の銃の開発は俺たち航空以外の分野の工廠でも開発している。


「そうですか……あ」


「どうした若造。言って見ろ」


「別に蓋はどんな形でもいいのでは?蓋と言う今までの形に捉われているので?」


「どんな案がある?」


「例えば……こう蓋を…銃身に重ねるように……」


「重ねる?」


「ええ、銃身の後ろに、弾を入れる穴を横か上に開けて、それに被せるように……」


「じゃあ薬莢を出すのは?試製でしたように前から出すのか?それだと、確かに入れる動作では少し時間が蓋開閉式よりも改善するだろうが、結局装填の動作としての時間は今まで通りであまり使えないような気がするが……」


「うーん、開けた穴から銃身を下に向けて……いやそれだと時間が……穴なぁ……」


「まあ今まで以上に銃身は筒らしい形になって、職人としては作り易くなるのかどうか……なぁ」


「筒……穴……」


「なんだ?女か?」


「違うっスよ!いや、もう少しで良い案が出そうなんですがねぇ」


「それは股間から……」


「だから違うっス!はぁ……」


「そう言えば、これは蓋を被せるようにするんだったな?」


「そうですが……」


「つまり、この銃身の上で滑らせることが出来るんだよなぁ?」


「と、言いますと?」


「この蓋を銃身の上で滑らせて、どうにか薬莢を出せないかと思ってな」


「それ、今思ってたことっす!」


「なら、早よ言え!考えは鮮度って、いつも言ってるだろうが!」


「すいやせん……でもこれだと、撃った直後の熱い薬莢が、手に落ちてきますよ」


「そうか?そうだな……」


「うーん」


整備員、もとい開発者たちの考察は続く。


同年 7月


初夏だ。


もとい、梅雨だ。


まあ、終わりみたいなものだが、それでもこの湿った生ぬるい風は、毎年のことだが、慣れるものではない。


今回は、新型の銃を備え付けた、八号機を改造したものだ。


備え付けた、というのは、その通り、銃が機首に取り付けられたからだ。


この新型で大型の銃は、後装式と言って、後ろから弾を込める方式を採ったらしい。


これによって、弾を込める動作、装填が早くなっている。


先ほど確認したが、一々銃を手に持って弾を込めなくていいので、これなら実戦でも使えそうである。


そして、飛行機に取りけることで、銃がある程度大型でも扱え、高威力、長射程を保てるという利点も存在する。


流石に大砲ほどにもなると反動や機体の耐久性とかの影響と問題で載せられないらしいが。


そして今回は連射の試験である。


複数の的が用意されている。


パァン!


まずは一発。ここまでは先までの試験とさほど変わらない。


そして引滑式の蓋の取っ手を引き、銃身に取り残された薬莢を取り出し、薬莢受けにカランと音をたて、転がった。


パァン!


確かに装填速度が段違いに速くなっている。


前装式の銃だと、再装填に早くても十数秒は掛かっていたのに対し、今回は数秒で終わった。


「これなら、『幕府』も無視はできないだろうな」


この時言った独り言は的中し、数か月後に「幕府」公認の軍の銃、「一三式薬莢後装引滑型小銃」という正式名になった。


これは陸軍、元十手持ちや岡っ引き達にも渡されるらしい。


これは先ほどの「技廠試製艦載式薬莢後装引滑型小銃」を小型化し、人一人でも持てるようにした、陸海共用のものである。


因みに艦載式であり、海軍の「本式」は未だ研究中らしい。


整備員長曰く、「もっと良いものを乗せてやりたい」らしい。


飛行試験は未だ続く。


そして、一三式薬莢後装引滑型小銃、もとい一三式小銃が陸海軍共に兵全てに行きわたった10月の終わり。


飛行試験自体はもうあと少しで終わりだろう。


艦載式の新型の銃は、薬莢を取り出すところにバネが取り付けられ、穴に再び入らないように施され、さらに現在の銃とは違い、操縦桿に引き金代わりの鈕が付けられた。安全装置代わりにそこに蓋が付けられている。が、薬莢の取り出しは未だ銃に付けられ、そこから伸びた取っ手を引く方式ではあるが。弾を込めるのも相も変わらず、ではある。名前は一三式航空小銃。小銃にしては、大きいが、大銃とは大砲のことなので、名前は小銃のままらしい。


その変わり、二人乗りの、操縦席の他に、航法と銃を担当する後部座席のものが開発されたが、自分は一人乗りが良い。


一人であると、自由であれる気がするから、である。


来年には飛行機も正式化されるらしい。


名前はもう決まっているらしく、一人乗りは「浜綴る早風」というらしい。枕詞に国名を付けるとは大層なものだと思うが、列強でさえ構想ばかりで、実用化されてなどおらず、実験されているかどうかも怪しいそれは、この国の新時代を想起させ、十分に名前負けはしていないのかもしれない。


因みに二人乗りは「波霞む太刀風」。波霞むは浜綴り、国名の枕詞である。


これら飛行機は陸軍にそれぞれ12機ずつ、海軍にもそれぞれ12機ずつの計48機の発注が行われ、近々納品されるらしい。


また、個人装備である新型の銃の訓練が陸海共に大方終わり、海軍には新たな国産の蒸気砲艦、藤型も完成し、次の新たな砲艦であり戦艦、初穂型の建造も始まっている。


藤型砲艦は浜綴国初の気球搭載型の戦艦である。


そして次級である初穂型の艦載砲は、今まで艦砲は20㎝砲以上の大きさが主流だが、この型は12.7㎝でしかも単装砲という比較的小型の砲を搭載する予定である。


と、いうのも、先に完成した飛行機の滑走路、もとい飛行甲板の面積を得るために今までの砲艦や戦艦に載せていた方よりも二回りほど小型の砲を搭載するつもりである。


そして、自分の新たな配属先として、その初穂型砲艦の航空観測監視員になることが決まった。


観測警備員長曰く、初穂型は現在決定している艦の名前ではなく、新しく決定されるらしい。


そして艦種も、砲艦や戦艦と言った艦種ではなく、新たに航空母艦という呼称にすることにしたらしい。


現在存在する艦を航空母艦とする案もあったらしいが、搭載数や、速度や飛行甲板に取れる面積、また唐国の脅威から配備をこれ以上減らせないという理由も存在したため断念したのである。


その為、「幕府」に報告した時、未だ計画艦の域を出なかった初穂型を計画変更するに至ったらしい。


どうにもこうにも、自分はその配属までに着艦訓練とやらをしなければならないらしい。


そもそも速度が足りるのかという疑問はあるが、やるしかないのだろう。


これから来年の4月までに訓練を重ねるのみだ。

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