16話 今更ながらの部隊名決定
明海二年 11月9日 高須賀海軍基地 会議室
「諸君らよく集まってくれた。海軍中将の利根傍 孝信だ。君たち飛行隊隊長たちに集まってもらったのは、この度飛行隊名を決めてもらうこととなったからだ」
会議室に集まった飛行隊の隊長たちがどよめく。
「静かに。飛行隊の名前は今でもある。第何某飛行隊、とな。しかし、それではどこの誰の飛行隊か今一分かり辛いとの報告があってな。だから今回君たちには、自分たちの飛行隊の名前を決めてもらおうということになった。飛行隊名は漢字かな含めて5字以内で、不吉過ぎるものじゃないならなんでもいい。それに、隊の皆で考えて貰っても構わんし、隊長の一存で決めて貰っても構わない。期限は一応一か月後の今日、12月9日だが、別に遅れても構わん。急ぐわけではないしな。部隊名は今から配る用紙に記入してくれ。破れたり失くしたりしたらまた言ってくれ。提出は私か、冨取 一平少将にしてくれ。あ、もし部隊名が被ったのなら後日呼び出す。だが、被るのは嫌だと、変な名前は付けるなよ。さて、では、集まってくれてありがとう。以上だ、解散!」
そして隊長たちはぞろぞろと部屋を出て行くのであった。
高須賀海軍基地飛行場 第四格納庫
「で、その名前を俺らで決めろという訳か」
「そういうことだな」
「でもよぅ相坂、俺たち整備士まで集めなくて良いんじゃないか?場合によっては隊員も変わるだろうし、整備士に至ってはすぐに配置替えもあり得るぞ」
「でもいいさ。名前を受け継いで行くんだ。なら最初期の隊の関係者で決めたいじゃないか」
「なんか相坂らしくないな」
「こういうのは場合によっては隊の不仲に繋がるかもしれないからな。せめて全員分の意見は聞いたってことにしないとな」
「そういうことかよ」
「ま、取り敢えず、隊員は今日の基礎鍛錬も終わって、整備も別に今日中なら後でも良いところまではできただろ?という訳で、せめて何か意見は聞くぞ」
「こういうのは隊長から出した方が良いんじゃないか?」
「そうか?」
「そういうもんじゃないか?なあ杉」
「俺はどっちでもいいがな」
「じゃあ……自分が考えたのは、風切隊、だな。風で切るで風切」
「案外普通だな」
「案外ってなんだ。あと普通が一番だろう」
「ま、それもそうか……じゃ、副隊長の私小川が考えると……後で良いか?」
「じゃあ締めな」
「締めって……大喜利じゃないんだぞ?」
「纏まるような、決まるような名前を頼む」
「えぇ……」
「じゃあ三番機の生機」
「俺はなぁ……鳥目?」
「鳥目は駄目だろ」
「飛行機は夜は飛ばせないから大丈夫だろう」
「それにしたって格好悪すぎだろう」
「そういう杉はなんか考えてんのか?」
「ふむ……衛?」
「マモルって……戦闘機は爆撃機や艦隊の護衛だけが任務じゃねぇんだぞ?てか、そういうお前も結構格好悪い名前だな」
「お前よりはマシだな」
「なんだと!?」
「二人とも落ち着け。で、整備士たちからも聞くか。倉田はいい案あるか?」
「あぁ……来た……そんなに面白いの考えられないぞ?」
「格好いいのを考えてくれよ……」
「んー竜巻?」
「格好は良いかもしれんが、気象用語はなぁ……間違えそうだな」
「浜綴ではあんまり起きないだろ、竜巻」
「それでも気象用語は何か言われそうな気がするが……じゃあ一番機整備補佐の松田は何か良い案が……」
数分後。
「で、最後は副隊長の小川だったな。何か良い案は浮かんだか?」
「ああ、良い案が浮かんだぜ。俺の実家が鍵屋だから、鍵屋小が……」
「却下」
「早い!そして酷い!せめて最後まで言わせてくれよ!」
「自分の隊なのになんで副隊長の名前が入ってんだ……自分も名前入れなかったのに……」
「で、使えそうなのを書き出しておいたぞ」
「ありがとう倉田。で、それは……」
「隊長の風切、松田の傷無、豊城の浦太刀、塚森の鷹燕、榎戸の鏃、くらいか」
「もう隊長ので良くないか?」
「俺もそれでいいと思う」
「僕たち整備士も、隊員の方の発案が良いと思いますし、隊員の他の方のは……ハハハ……」
「俺もそれで」
「じゃあ僕も」
「本当にそれでいいのか……?塚森は?」
「それで良いですよ?その名前に特に思い入れはありませんし」
「そうか……」
「なんだ?嫌なのか?」
「いや、なんか結局自分が考えたものだったなってな。時間を無駄に使ったような気がしてならないな」
「別にいいんだよそれで。俺たちが納得したんだから、お前の最初の思い通りにはなったな」
「そういうことにしておくか。その代わり、後で文句言うのは無しだぞ」
「もちろんだ」
「分かってるよ」
「うっす……」
そんなこんなで、海軍航空隊、第二二航空群、第二〇五飛行隊は、風切隊という名前を得たのであった。話し合ったその時間、たった十数分のことであった。
同年 12月14日 空母飛鶴 飛行甲板
ここに、多くの兵たちが集まっている。
「諸君、演習の後と、疲れているというのにすまない。艦長の見生 喜古(みにゅう よしふる(大佐))だ。すぐ終わるからしっかりと聞いてくれ。前々から話にあった、飛行隊の名前が決定されたので、ここでこの艦の飛行隊名を発表することになった。今日からは今までの番号呼びに加え、この名前も公文書に書かれていても問題ないということになる。では読み上げる。第二〇一偵察飛行中隊は海鷹隊、第二〇二偵察飛行中隊は海梟隊、二〇三と二〇四偵察飛行中隊は解散されたため無し。第二〇五戦闘飛行中隊は風切隊、第二〇六戦闘飛行中隊は天貫隊、第二〇七爆撃飛行大隊は戦拓隊となった。別の艦や基地防衛飛行隊の名前は下の掲示板に掲示しておく。それで確かめてくれ。因みに、陸軍航空隊の名前は未だこちらに情報は来ていないらしい。また情報が入り次第掲示板に張り出しておく。では、話は以上だ。皆こんな時に集まってもらって済まなかったな。解散」
第二〇五戦闘飛行中隊寝室 (4人部屋)
「しっかし、さらっと決まったなぁ、俺たちの隊名」
「別にいいだろそれで」
「二〇六の……なんだっけ?」
「天貫……だっけか」
「そいつらは期限ぎりぎりまで話し合っていたみたいだぜ」
「うちはうち、よそはよそだろ。だいたい、早く決めようが遅く決めようが、俺たちの隊の名前が変わることは無いし、別に変えなくても良いだろ?」
「まぁな。しかしさぁ……あぁもあっさりと決まるとまるで俺たちの感情が薄いっちゅうか、冷血っちゅうかなんちゅうかなぁ……」
「決断力があるってことでいいだろ」
「その方が良いな。これからはそう言おう」
「生機が勝手にそう思っていただけだ」
「それもそうだったな、すまんすまん」
そうして、彼らの第二〇五戦闘飛行中隊は正式に、風切隊、または風切中隊となったのであった。
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