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凪の中の突風  作者: NBCG
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117話 戦闘集中域

明海二十三年 1月30日 フランドル 某所上空


状況は最悪である。


成会矛と浮蘭詩が戦果を取りたいがために、フランドル戦線を補給の護衛以外浜綴軍や他、北銀軍海兵隊などを支援に呼ばず、事態は膠着していた。


そしてそれから戦いの流れは変わった。


成会矛は兎も角としても、主戦力となるはずの浮蘭詩の主力部隊がまず藩泥流軍に叶わないため、消耗は続く。


浮蘭詩が攻めた場合、攻め入った部隊が壊滅状態となり、戦力が低下するのみ。


攻めてこられた場合、迎撃は出来るが敵戦力を削ぐことはできず、敵は帰っていくだけである。


藩泥流からみたら、攻め入ったらそう簡単に敵地の奪取を行える訳ではないが、消耗は少なく、敵が攻め入った場合には、こちらが待っているだけで敵戦力を削ぐことができる。


特に航空戦では顕著であるらしく、藩泥流の“ある機体”を見たら浮蘭詩は帰れと言われているほどに強い機体があるらしい。


「それが……『青線』か」


『青線』


尾翼に青い一本線が描かれた機体のことである。


自分達もときどき見かける、藩泥流で特筆すべき筆頭の飛行機乗り。


彼だけは数多くの戦場を翔けた浜綴軍の飛行機乗り達からも危険視されている。


「どうやらそうらしいな。全く、こんな状態になってから支援を寄越すくらいなら、初めから支援をしていたら今頃作戦は順調に行っていて、俺達もとっとと帰れたはずなのにな」


閑話休題。


こういった経緯から、浮蘭詩はジリ貧を迎え、徐々にその領土を失いつつある。


これには流石の浮蘭詩も面子だなんだとも言っていられず、早急かつ大規模な支援を同盟各国に送られた。……勿論自分たちもその中の一部隊である。


そうして大規模な部隊を膠着していたフランドルに投入し、一気に浮蘭詩の戦線を押し戻し、軍の勢いも付けるらしい。


兎も角自分たちがなぜフランドルの上空を飛んでいるのかの説明は終わりだ。


そしてここからは今の状況の説明となる。


「こんな大所帯でまともに空戦なんか出来んのか?」


「それよりも他の場所の防空網が不安だな」


この空には、浜綴軍の戦闘機が16機、浮蘭詩の戦闘機が24機、同爆撃機が4機、成会矛の戦闘機が12機、同爆撃機が4機の計60機の編隊である。


偵察機はいないが、正確にはそれに海眼の青雲1機が加わって61機となっている。


浮蘭詩は本土から離陸し、浜綴と成会矛は空母からの発艦している。


そもそも成会矛と浮蘭詩は通信機などなく、まともな連携など不可能である。


……というより、自分たちは戦場で口が荒くなっている別言語を認識できるほど成語も浮語も達者ではない。


だが作戦は単純である。


単純でないと全く連携が取れない、というのもある。


最初に戦闘機部隊がフランドルの制空権を奪取、次に爆撃機で敵地上拠点を破壊。


そして浮蘭詩と成会矛の連合地上部隊が侵攻を行う、という手筈である。


それはそうとして、自分たちは敵機を見つけ次第迎撃するだけである。


『海眼より全機へ。不明機を電探にて感知。方位015、距離2000、数およそ8』


この程度なら、この大部隊の前では特に問題はないだろう。


『舞武隊、迎撃に当たれ』


『舞武隊、了解!』


『静凪隊は前方の哨戒の任を引き継いで当たれ』


「静凪隊、了解」


舞武隊が迎撃に当たって前の右側へ向かった為、彼らの哨戒の穴を埋める為に編隊の前方に移動する。


そして彼らが迎撃に向かって数分後、異変が起きた。


『編隊9時方向の部隊が絡み合っている……敵機から襲撃を受けた可能性がある。静凪隊、襲撃があった場合、遊撃し支援を行え』


「了解した。急行し、確認、必要あれば迎撃する」


海眼、生機の指示に従い、何かがあったらしい方向へ向かった。


……。


「あれは……」


着いた時、自分の目に写ったのは、敵機に翻弄され、爆撃機を守ろうと戦う浮蘭詩の護衛の戦闘機八機、回避機動を取っているらしい浮蘭詩の爆撃機が一機。


それを四機の藩泥流と思しき敵機が攻めあぐねており、そして―――


「青線!」


そう叫んだときには既に一機の友軍戦闘機が火を噴き、堕ちていた。


「浮蘭詩の機体では荷が重過ぎるな……」


「ああ、浮蘭詩もそこそこ凄腕ではあるらしいが、それでも機体の差を二対一でやっと埋めているって具合だ。青線相手じゃ……」


浮蘭詩の機体は新たに現れた青線率いる三機の敵機に翻弄されている。


「自分達で青線を止めるぞ!」


「了解!」


以前はどちらかが増援として現れ、もう片方が撤退するという形ばかりだったが、初めて、『青線』との真っ向からの戦いが始まった。


同空域


「あれは……」


バンデルへ爆撃を行うための部隊を撃滅しようと向かっていたメルヒオル・グライナーだが、戦場での勘が彼に警告を促し、注意を向けさせた。


「あの部隊章……!」


彼と因縁のある部隊を前に、追撃の考えから迎撃の考えに頭が切り替わる。


瞬間、彼らが狙っているのは紛れもなく自分ということを認識する。


「……!!!」


ガンッ……!


自らの勘を頼りに即座に回避する。


しかし、主翼に一発被弾する。


「クッソ……!」


周りを確認する。僚機の二機はなんとか飛び続けているものの、一機が多く被弾したのか、フラフラとした挙動をとっている。


「やられてばかりでいられるかっ……!」


体勢を立て直すために戦線から少し遠ざかり、例の部隊章を見続ける。


「さて……」


彼の目には、静かに燃える闘志。


グライナーは改めて操縦桿を強く握り締めるのであった。

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