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凪の中の突風  作者: NBCG
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113話 戦略爆撃機

明海二十二年 10月25日 北海某所上空 大浜綴海軍航空隊 敵戦略爆撃航空阻止部隊


『よく聞け。緊急であるから多少は手短になるが説明する』


たったこれだけの言葉で、生機がどれほど焦っているのかが分かるほど、その声は切迫していた。


『藩泥流が以前から飛行船に変わる戦略爆撃の行える飛行機を一部、昼間に何度か行っているのを確認していた。恐らくそれと同様の航空機と思われる機影を電探にて確認した。夜間に上がっている成会矛の戦闘機もあるが、予測される機影の対処は昼間に於いても一定以上の練度が必要であるとされており、それが夜間ともなると対処が非常に困難となると考えられ、この場で出来る限りの対処が必要であると判断した。さっきは気が動転して全機の帰投の撤回を指示したが、爆撃機及び攻撃機部隊は帰投して良い。戦闘機部隊は引き続き敵爆撃機を探し出し、見つけ次第、対処を行え。方位及び距離を指示する。方位……』


こうして自分たちは敵爆撃機が居るとされる方向に機首を変え、向かうのであった。


ほぼ同時刻 北海 某所 上空 バンデル帝国陸軍航空隊 夜間爆撃部隊


「方位確認。……確認完了、同方位を維持せよ」


「了解。あとは……爆撃手、大丈夫か?」


「こちらも大丈夫だ。しっかし、本当に見つからないのか?」


「さあな。今敵機が見えないから、取り敢えずは大丈夫なんだろう」


「まあ、そんなんだろうが……せめて黒く染めたら良かったんじゃないか?灯りに照らされたら、この白い機体は目立つだろ」


「黒の染料を買えるほどの財政状況ではないってことだろ。文句言うな」


「それなら、“囮”の飛行船の投入もしなくて良かったって話じゃないか?」


「囮って言うな。アレも一応は爆撃することには変わりはないはずだ」


「だからって向こうの諜報員に飛行船の飛行計画表まで渡さなくても良かったと思うがな」


「そうやって敵を安心させ、不意を突く作戦なんだから仕方ないだろう」


「飛行船が来ることが分かっていたなら敵の駆逐機が上がっているはずだが?」


「こちらの目的は敵の戦力を分散させ、敵首都マッドフォートに爆弾を落とすことだ。それも作戦の内だ。どちらにせよ、敵の駆逐機が敵首都を哨戒しているのは変わらんさ」


「そうかよ……。はぁ……ん?」


その爆撃機に乗る爆撃手は見える空の暗闇に、違和感を覚えた。


「どうした?」


「右後方より不明機!敵機だ!」


「爆撃手、航法士、機銃で迎撃しろ!」


「言われなくとも!」


「クソッ……、初めて行う奇襲作戦なのに運の無い!」


「全くだ!」


同空域 大浜綴海軍航空隊 敵戦略爆撃航空阻止部隊


「こちら静凪隊!敵機と思しき大型航空機を二機、視認した!」


『現在成会矛及び浜綴の大型航空機は上がっていない。これを敵機と認め、迎撃せよ』


『『「「了解!」」』』


皆が声を返し、その務めに就いた。


はっきり言って皆、先ほどの飛行船の邀撃任務で満身創痍なのだが、敵機は二機。


敵機は事前情報によれば、機銃を擁しているはずだが、それも一機につき二台とのことだ。


隠密な任務であるためなのか、護衛の戦闘機も周囲にはいない。


護衛のない大型爆撃機に、満身創痍ではあるが、手練れの操縦士が操る戦闘機が二桁。


各位、これ以上機体を損傷させない様になるべく気を張って飛んでいるが、爆撃機乗り達にとっては十分以上の緊張は与えられているのだろう。


「くっ……、痛いのを一発貰った」


「小川、大丈夫か?」


「ああ、まだ飛べる」


『こちら実茶隊、一機撃破!』


若い連中に戦果を取られたな。


焦りは禁物だが、こちらも負けてはられないか……。


「相坂、行くぞ」


「落ちるなよ」


「言っとけ」


そう言い、爆撃機に攻撃を仕掛けた。


……。


『こちら舞武隊、もう一機の爆撃機の炎上を確認した。炎上した敵機は徐々に高度を下げ、機銃による抵抗も見られない』


『こちら海眼。一応確認だが、成会矛本土に落下するように見えるか?』


『いや、そうは見られない。翼からも炎が上がっている。翼が折れて墜落するのも時間の問題だろう』


『分かった。海眼から各機、帰投する。方位……』


こうして、途轍もない緊張を強いられた作戦がやっと終わった。


「はぁ……疲れた」


「お疲れ、隊長」


「機体の動きがおかしくなってきているのに更に作戦の更新をしてくるとは……」


「戦争に無茶は付き物だからな」


「小川、お前の機体は大丈夫か?」


「大丈夫だ。着艦も問題ないだろう。ま、俺の機体も穴が多くなったもんだがな。こりゃ暫く戦場に上がれそうにないな」


「今回参加した機は大体そんなもんだろう」


「それもそうか」


それだけ言って、静凪隊の二人、あとは無言で母艦へと帰っていくのであった。


今回、この作戦の戦いで損失した機は無かったが、真龍の方での着艦の際に、二機、着艦に失敗した機が出たようだ。


幸い死者は出なかったようだが、この事故での怪我で、それら機体の操縦士二人は療養の為、出撃は暫く出来そうにないらしい。


例え真龍の飛行機乗りと言えど、戦闘を伴う作戦の後であっても着艦に事故と言う形で失敗することは珍しいと言えるほど、彼らの練度は高い。


この戦いが、どれほど自分たちの負担になっていたか、搭乗員の言葉などだけでなく、確実に知らしめる事案となっただろう。


今迄の雄州での戦いで、この作戦が最も苛烈な作戦だと感じた。


だがこの感想は後に改められることとなるのであった。

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