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凪の中の突風  作者: NBCG
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111話 支援第二作戦

明海二十二年 9月23日 藩泥流 成会矛軍駐留地 上空


『敵機群、撤退を開始。追撃は許可しない。こちらも帰還する』


なんとか浜綴の死者無しで第一作戦である、補給護衛任務を遂行できた。


こちら側の死者無しで敵を撃退できたこと自体は戦果としては十分なものだったが、以前よりは格段にその緊張感は増したものであった。


明らかに自分たちの機体の穴は増えている。


向こうも恐らくこちらの大部隊を予想しての制空部隊を増やして爆撃機を少なくしていた部隊であったため、敵爆撃機を即座に落とすことができ、それも撤退を出来るだけ早くできた一因であった。


死者が出なかったのは他でもなく偶然だろう。


あの数の多さと練度では、こちらの人員の疲労が溜まり、死者が出るのも時間の問題だ。


取り敢えず、物資上陸はほぼ順調に進み、あと一日でそれは終えられるだろう。


とはいえ前回とは違い、敵爆撃機による夜間爆撃を気にしなければならず、夜も哨戒活動を行わなければならないが。


搭乗員の疲労は溜まる一方だ。


同月 24日 成会矛軍駐留地 上空


昨日から今日に掛けて物資上陸は進み、哨戒をしていたおかげもあってか、敵の夜間爆撃も行われずに済んだ。


そして今日の正午には物資上陸が無事に終わり、地上の飛行場基地建設が終わるまで建設現場周辺空域の哨戒・護衛である。


「不明機を目視にて発見」


『了解。我が軍はこれを敵と認め、交戦を許可する』


建設開始からも敵の襲撃はあったが、物資上陸のときのような比較的大規模なものはなく、恐らく偵察や戦力確認の為に送られてくる小規模な偵察機、戦闘機部隊が殆どであった。


たまに少数でまとまった爆撃機も昼間、夜間問わず来たが、これらも迎撃した。


二週間程度で飛行場が完成し、陸上戦闘機による護衛能力が確立されたため、自分たちは第二作戦へ移行した。


同年 10月9日 藩泥流 某所 上空


第二作戦は先に言った様に、反攻著しい地域への支援戦力の投入である。


前回は爆撃機の護衛に手を割かれ、敵戦闘機への迎撃が難しいものとなってしまったため、今回は爆撃機の数を減らし、戦闘機の比重を高くしている。


とは言っても、戦闘機の数は変わってなどいなかったのだが。


まずは航空偵察と成会矛地上軍による強行偵察を行った。


それで敵飛行場の位置を把握し、そこを破壊することが第二作戦の、第一の目標となった。


『爆弾投下まで、5、4、3、2、1、今!』


点在する飛行場や施設を爆撃。


敵も戦闘機や対空砲によって迎撃してきたが、航空技術に於いては雄州に一線を画す浜綴軍がその脆弱な防御兵器で落ちることは無かった。


ただ、航続距離などの問題もあり、そこまで奥地に入ることも出来なかったが。


『飛行場の破壊を確認。全機、帰投せよ』


活動範囲内で一定の敵施設の破壊、敵戦力の喪失が確認された後は、敵の再終結地、施設再建地を探し、そこを破壊する活動となった。


同月 16日 藩泥流 某所 上空


そんな、哨戒索敵活動をしていたある日のことであった。


「不明機群を目視にて発見」


『敵勢力であると確認。交戦を許可する』


「了解……あっ」


『どうした?』


「敵機はこちらを認識し、方向転換、撤退した。恐らく偵察機であると思われる。機数は3機だった」


『分かった、では再び哨戒を続けろ』


「その前にもう一つ報告することがある」


『何だ?』


「恐らくだが、新型機だった」


そう、自分が見たのは、今まで見た敵機と異なるものだった。


「比較的小型機で、単葉でも三枚翼でもなく、完全な複葉機だった。だが……」


『だが……何だ?』


「以前、どこかで見たような気が……いや、済まない、多分気のせいだ」


『そうか?なら改めて、哨戒活動を続けろ』


「了解」


藩泥流が現在使っていて、この戦線に投入されている機体は比較的小型機なら、単葉機、フォルケル アインデッカーシリーズ、または三枚翼、フォルケル Dr.Ⅰである。


大型機は、双発複葉機でゴータ Go.Ⅳが確認されていたが、自分が今見たのは小型機。


それも単発の複葉機だった。


同盟国側が使っている単発の複葉機には、アルバトロス O.Ⅲと呼ばれる、墺利亜で陸海軍問わず使われていた飛行機が存在し、連合国側でも芦麻菜が水上機として用いており、以前見たこともあったが、先ほど見た機体の印象はそれらとは違うものだった。


何より敵機は今までの機体と比べても早く、交戦規定が成り立っている状況の中で戦うよりも早く、彼らはその領域からなんとか脱したのであった。


機体速度は自らの乗る突風五型よりも少し遅かったが、それでも交戦から逃れる程度の速度は出ていたためである。


勿論、成会矛や浮蘭詩が用いている飛行機も確認しているが、それらとも違った。


ただ、何故か以前に、あの飛行機を見た気がする。


その疑問が胸に残った。


同時刻 周辺空域


「敵機……それも浜綴のものだったな」


“彼”は冷や汗を拭い、独り言を漏らす。


「全く……自分が熟練者と言う理由で新型機に乗れたのは良いことだが、まさか戦略偵察に出されて浜綴の機体と遭遇するなんて、本当にツイてない」


そして一息、溜息を吐いた。


「まぁ……義勇兵に新型機が与えられるだけ、マシだとでも思っておこうか……」


そして“彼”は安全な空域に達したと感じ、その機体のエンジン出力を下げた。

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