110話 藩泥流進攻支援
明海二十二年 9月20日 大成帝国本土 某港 雄州派遣艦隊 旗艦 角端 第一会議室
前回成会矛に派遣されたときに停泊していた港と同じ港に停泊している。
今回の作戦は上陸作戦ではなく、疲弊した部隊の鼓舞と支援の為に航空戦力を投入する作戦である。
そのため、今回の作戦には戦艦は投入されない。
浜綴軍の投入戦力は空母角端、真龍、巡洋艦2隻、駆逐艦4隻、他支援艦数隻。
成会矛軍の投入戦力は巡洋艦4隻、駆逐艦8隻、その他支援艦多数。
空母戦力以外は主に対潜護衛と補給物資搭載の為に投入されている。
現在、成会矛の空母戦力である正規空母ウラナスは既に大陸側で停泊、海上の航空基地として活動しており、改装空母フェイマスは本土で訓練などの活動をしている。
成会矛は現在空母を建造しているが、戦力化までもう少し掛かる上、温存艦として余裕を持たせたい意図もあり、もうすぐ次の空母が就役するが、投入は更にそれより先になる見込みである。
そして今、自分たちは前回とは違う状況を把握し、作戦を遂行させるため、前回より詳しく状況解析、分析を行い、訓練を行っている。
その為、前回よりも訓練は長い。
それだけではなく、作戦の想定期間も前回の想定はおろか、実戦の期間より長く想定されている。
更に作戦は第三段階に分けられている。
第一作戦は補給物資の補充とその護衛。
それらを狙って敵が成会矛の陸上部隊へ攻め入るかも知れない為、艦隊護衛のみならず、彼らの護衛もこの任務に入っている。
第二作戦は敵の反攻著しい地域への戦力投入。
場所によっては化学兵器の投入も行われているため、中和剤の投入も適宜行う。
第三作戦は浮蘭詩王国北方戦線の支援である。
例によって、戦後の領土問題の懸念があるため、陸上部隊の投入は行われない。
敵陸上部隊への攻撃は出来るが、陸上部隊の投入は行われない為、場合によってはこれが一番長引く可能性が示唆されている。
陸上、海上の戦力に於いては成会矛が有利だが、空の上ではそうでもない。
実は藩泥流はこの戦争の間、海峡を越えて爆撃できる飛行機を開発。
藩泥流にいた陸上部隊へは勿論、成会矛本土の一部では爆撃を受けるなどしている。
以前には唐国が飛行船を戦力としていたが、より装甲の厚く、防御力の高い飛行船を藩泥流は有し、それらも用いて都市部へ夜間爆撃を行っている。
これ以上敵の優勢を許せば更に被害は拡大すると予想されたため、今日の作戦の支援……の支援に浜綴が呼ばれたというわけである。
というか既に、成会矛本土の爆撃による被害は拡大している。
成会矛軍が藩泥流に展開している部隊を都市部への被害が出てからも展開し続けたのは、もう一度撤退すると優勢状態にある部分を失いたくない為であるのと、面子である。
強国であるという面子。
これらが引き起こした自国の都市部への爆撃という結果を引き起こしているが、このような問題は如何な国に於いても起こる問題であるため、原因や過程は割愛する。
兎も角、今は行われる作戦の説明を聞いている。
「……であるからして、敵地への攻撃はやはり敵航空部隊を稼働出来ないようにさせることが、こちらの航空部隊の最重要目的の一つであることは変わらず……」
そして、今日から三日後となる、9月23日から作戦が発動されることとなった。
同月 23日 藩泥流 成会矛軍駐留地 上空
そうして作戦発動当日となった。
とは言え自分たち戦闘機乗りは哨戒飛行以外にすることはない。
自分たちが積極的に作戦に参加するのは第二作戦からである。
今はただ、補給物資を送り届けることが無事に終わるのを祈り、敵機がいないか確認するのみである。
補給物資の内容は食料や衛生関係の一部生活用品などもあるが、成会矛の新型戦闘機、Lark Mk.Ⅲなども含まれる兵器、弾薬も内容物に含まれる。
勿論、新型兵器を扱うことのできるその人員も、ではあるが。
食糧、人員などは当然ながら、航空機関係の物資も失うわけにはいかない。
『海眼から作戦全機へ。藩泥流からの手厚いお出迎えだ。我々も後れを取るな。方位170、距離2500、機数、50機以上と見られる。交戦を許可する!』
「静凪隊、交戦」
『舞武隊、交戦!』
海眼からの声で、戦闘機乗り達からの声が次々と上がる。
「あれは……」
前に見た単葉機とは少し違う気がする……。
敵機を目で見て、そう思ったとき、敵機は自分の予想以上の旋回角で旋回した。
『舞武隊より作戦全機!戦闘している敵機は前よりも強い、恐らく『改良機』だ!気を付けろ!』
以前に戦った、フォルケル アインデッカーE.Ⅰではなく、その改良を施したであろう後継機、フォルケル アインデッカーE.Ⅲらしい。
成程強い訳である。
これでは護衛対象である爆撃機への攻撃を許してしまうかもしれない。
『こちら実茶隊、こちらの部隊の損害が激しい。代わりに台丘隊の護衛を頼みたい。台丘隊がやられるか死者が出る前に頼む!』
『舞武隊より実茶隊、こちらの部隊が請け負う。撤退を』
『助かります。身茶隊、一時撤退します』
思ったより早い……。
比較的経験が浅い部隊、とりわけ真龍の搭乗員は不味いかもしれない。
自分たちが帰っていた間、敵機性能が向上したのみでなく、敵の練度も向上していたらしい。
今、真龍の一部隊が護衛任務を続行できない程に被弾してしまったことがその証明である。
「小川、気を引き締めて行け!」
「言われなくとも!」
今回は成会矛の部隊が参加していない分、数が少ないが、連携自体は取りやすく動きやすい。
爆撃部隊、戦闘部隊共に連携を取りながら敵の攻撃を出来るだけいなし、任務遂行に努めた。
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