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凪の中の突風  作者: NBCG
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109話 梅斧目戸上陸作戦

明海二十二年 9月1日 梅斧目戸帝国 アナトレー半島西部沖 上空


『我々の任務は先に達しがあった通り、敵航空戦力の排除、空から見える沿岸部の敵軍の重要の施設の破壊だ。敵船舶への攻撃は今回、我々の任務ではない。あくまで上陸支援が最重要目的だ』


無線から任務についての再確認が流れてくる。


梅斧目戸は陸軍強国である為、海上戦闘についは然程問題ないだろう。


だが、陸軍強国であるが故、上陸戦闘は苛烈を極めると考えられる。


前回の派遣時の藩泥流に対する上陸作戦と同様の難しさは有るだろう。


敵の航空部隊は脆弱であるから自分たち航空部隊の安全はある程度保証されているのだろうが、陸上部隊が強いため、友軍の上陸部隊の安全を保護することが最も難しいことだろうと上層部は判断した。


勿論それだけではなく、海軍も列強にいる程度には揃っている。


その上、連合軍がここまでの大部隊を引き連れて来たため、流石にその情報は漏れ、梅斧目戸もある程度は海上戦力を整えているだろう。


その艦船に搭載されているであろう対空兵装にも気を払わなければならない。


あれほど航空機の有用性が分かれば、彼の国が対空兵装を強化することも考えられる。


『これより、敵地に侵入する。上陸部隊がちゃんと揚がれるようにお掃除の時間だ』


この声と共に、浜綴の飛行機乗り達は、その能力をふんだんに発揮させた。


梅斧目戸が長年陸軍強国であった事実さえ捻じ伏せるような進撃。


予想された対空兵装も十分に配備されておらず、敵軍の要衝の破壊は円滑に進んだ。


自分たちは護衛機ではなく遊撃機。


敵機も未だ現れておらず、はっきり言ってする戦闘任務は無い。


遊撃部隊を制空隊として送るか否かは、先に送り込まれていた偵察機からの情報で判断された。


その結果、その必要性は無いと判断され、自分たちは爆撃部隊と共に出撃した。


閑話休題。


『海眼から作戦全機。不明機を電探にて確認。方位90、距離2300、機数は20弱程度。今作戦には我々以外の友軍機の投入はされていない。これらを敵機と判断。戦闘機部隊、交戦を許可する』


いつも通りの声。


その声が言ったのは自分たち本来の任務。


自分たち遊撃部隊はその任務に就くのであった。


……。


『敵機の撤退を確認。交戦部隊はこれらの追撃を許可しない。戦闘部隊は再び哨戒任務に戻れ』


『『「「了解」」』』


同数の襲撃にしては、いつもより早く交戦が終了した。


手慣れたものである。


まるで人殺しに慣れたような気がして、得も言われぬ気持になった。


その後、敵の第二波、第三波と来て、それを迎撃。


第三波を迎撃し終わった時点で一度補給に戻る。


そして再び出撃。


第四波以降敵飛行機による襲撃は起こらず、爆撃機らが行った、敵地沿岸部に展開する敵迎撃部隊に対しこれらを破壊、鎮圧に勤しんでいた。


そうしている内に上陸部隊が上陸地点に到達。


芦麻菜を中心とした部隊が上陸した。


こちらが行った「掃除」が功を奏したのか、これらの戦いで浜綴軍が関わった上陸作戦の全ての中で最も円滑に上陸が進んだように感じる。


上陸部隊、陸上部隊が橋頭保の確保、陣地構築を終了したところで日は暮れ、今日の作戦は以上となった。


因みに連合軍艦隊の総力を以って梅斧目戸海軍戦力を薙ぎ倒し、梅斧目戸海軍の投入戦力の殆どを失い、ほぼ殲滅状態となっていた。


同月 2日 アナトレー半島西部沖 上空


今日は敵奥地にまで侵入し、主に敵補給線の分断を行う作戦である。


昨日、敵部隊の排除、敵兵器の破壊が十分なほどに行われたため、敵実戦部隊への攻撃はこちらへ攻撃意思が確認できたときのみで良いとされた。


敵航空戦力は不十分なものであり、自分たち戦闘機部隊が活躍する場は昨日と比べ非常に少ないものとなった。


戦闘の量は昨日の十分の一以下だっただろう。


『海眼から作戦全機。今日の作戦は早いが終了だ。全機、帰投せよ』


この日より自分たち飛行機乗り達の仕事は全てにおいて急激に減っていった。


3日も同様の任務だったが、4日からは芦麻菜陸軍航空隊、衛羅須空軍の臨時共同飛行場の完成するまでその地域の護衛が主な任務となってしまった。


これは、自分たち浜綴軍の保有する航空機の航続距離いっぱいまでの領域に於いて航空機の敵に対する任務がほぼなくなってしまったからである。


この飛行場が完成し、運用が開始されたら遂に自分たちはお役御免。


次の派遣先である、成会矛本土へ行くことになる。


同月 7日 アナトレー半島西部沖 雄州派遣艦隊 旗艦 角端 第一会議室


「これより衛羅須、芦麻菜に於いて補給を行った後、成会矛本土へ向かう。派遣任務の第一段階が問題無く終わったからと言って、気を抜くなよ」


上官はたったこれだけ言い、諸々の報告を終えた後、解散を命じた。


芦麻菜―衛羅須間の飛行場についての話し合いも終わり、運用が開始されたため、自分たちはこれから成会矛本土へ向かうこととなった。


角端 飛行甲板


「……」


飛行甲板から静かな地中海を望む。


外洋と比べ、此処地中海や紅海は非常に穏やかだ。


「お、どうした?」


海を見て呆けていると、倉田が話しかけてきた。


「いや、前の派遣の時にも感じたが、自分は本当になんでここにいて、一体何をしているのだろうかと思ってな」


「家族のことか?」


「勿論、それもある……」


「じゃあ、他には何が?」


「家族をほっぽり出して、国防のためでもなんでもない、なんなら介入しなくても良い戦いの中にいて、殺しが上手くなっているのが、何ともな……」


「ああ……そういうことか……」


「考えても仕方のないことだとは分かっているが……どうしても考えてしまって」


「そういう話はただの整備士兼開発者には分からないな。家族をほっぽり出しているのは同じだけど」


「別に解決してもらおうなんて考えていないが」


「こりゃ酷い」


「そう言う意味じゃないが……」


「分かってるよ。ま、肩の力を抜いて休め。そんなんじゃ落とされるぞ」


「ああ、次の作戦までには十分な状態に整えておく」


その後も海を見ながら、考えに耽込むのであった。

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