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凪の中の突風  作者: NBCG
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108話 第二次雄州派遣任務

明海二十二年 6月11日 高須賀海軍基地


「二度目か……」


「出来れば少し長引いても、一回で片を付けて欲しかったもんだがな」


これから派遣される部隊に就く予備役兵たちは、口々にそう文句を垂れ流していた。


斯くいう自分もその意見には賛成ではある。


予備役の招集が来て前回の派遣よりも早い、1ヶ月ほどで派遣が可能となった理由は二つ。


一つは、今回、前回の派遣から予備役はずっと訓練に励まされていたこと。


もう一つは、前回編成されていた派遣部隊を元に既に派遣艦隊を想定されており、そしてその想定の誤差が少なかったため、早くに訓練に移れたことが挙げられる。


前回は墺利亜の派遣に加え、追加で成会矛の上陸支援の任務が発令された。


今回は墺利亜帝国に対する任務は無く、今回は芦麻菜主導で行われる梅斧目戸に対する上陸作戦の航空戦力を担うこと。


そしてそれを完遂してから成会矛に移り、勢力を増す藩泥流に対する成会矛の戦力投入の航空支援を担う。


「にしても、なんで大陸を挟んだ俺たちが派遣されて、もっと近い銀国の連邦軍が出てこないんだ?」


「新聞にちょろっと書いてあったが、上院と下院の意見が割れて、派遣できないそうだ」


「どんな感じで?」


「下院は派兵、最低でも義勇兵の許可は可能であると判断しているらしいが、上院は雄銀相互不干渉主義を貫いていて、経済支援以外の一切を行うべきではないとしているらしい。まあ、義勇兵は秘密裏に行われているみたいだが」


「俺たちがヘーコラ言いながら派遣されるのも、そういうのも理由としてあんのかねぇ?」


「ま、銀国がとっとと正式に介入していれば、兵力的には問題なんてないはずだからな。俺たちが態々あんなところまで出しゃばらなくても」


同年 8月24日 地中紅海運河 上空


さて、ここまで来てしまった。


以前は紅海に来た時点で敵航空部隊と接敵したが、今回は運が良いのか、運河に入るまで接敵することはなかった。


『海眼から作戦全機へ。今作戦は迎撃ではなく、敵戦力を損耗させることにある。積極的に攻撃し、敵戦力を削ぎ取れ。哨戒機は続けて哨戒を。戦闘機は爆撃機護衛任務のものは護衛を続け、そうでない者は適宜、状況を判断し対処せよ。特に突風六型……通称爆戦に乗る者は、爆撃機が破壊し漏らした施設への攻撃も適宜行え。以上』


何ともまあ我儘な命令である。


今回は守りではなく攻め。


自由に戦況を操れる。


そこだけでも良しとしておく。


そして自分たち静凪隊は護衛部隊ではなく遊撃部隊。


敵が現れるまで、外国の地の遊覧飛行としようか。


……。


『海眼から作戦全機へ。敵飛行戦力と思われる部隊を電探にて確認。方位80、距離2800、多数の機影、詳細な数は分からず。規模は20から30と見られる。これらとの戦闘を許可する』


「やっと敵さんのお出ましか」


「小川中佐、気を引き締めろ。以前より敵が強くなっている可能性も考えられる」


「小川、了解」


「……敵機、目視にて確認。戦闘を許可。散開!」


「小川機、交戦する!」


送られていた爆撃機が敵の通信網まで破壊していたため、敵の航空部隊の到着も遅れたようである。


「相坂、一機撃墜」


「小川、一機撃墜!」


『こちら舞武隊、一機撃ち漏らした!護衛機、対処を頼む!』


「それには及ばない。静凪隊が対処する」


『済まん、助かる!』


「舞武隊はそれより敵増援の対処を」


『分かった、そちらは頼む』


大方の予想通り、敵機らは強くなっていた。


とは言え、それは飛行機乗りの技術や空戦に纏わるものではなく、機関と装甲だ。


機関の馬力がより強い物が載せられるようになったのか、それに合わせて装甲も重く厚くなっているのだろう。


布張りの翼は全金属性とは言わずとも、随分と金属の部分が前より多くなっていた。


二十粍では流石に当たれば落ちるが、七点七粍ではどうも仕留めきれず、時間と手間を取られてしまっている。


機関が強くなったことにより、速さも幾分性能が上がったが、流石に突風の性能を凌駕はおろか、同等にさえ立つことはない。


前回の教訓から、ある程度真龍に載っていた戦闘機部隊も投入されているため、後進の操縦士たちの実地訓練と呼べる程度のものではある。


前回の派遣後にも現役と合同訓練を行ったこともあり、練度も高い。


操縦士喪失などは心配ない。


ただ、弾丸などの消費が前よりも大きくなっていることが気になるな。


……。


『海眼から作戦全機。周辺の航空敵勢力の排除を確認。燃料のこともある。全機、帰投せよ』


『『「「了解」」』』


喪失機なし。


目標としていた敵軍施設群の破壊。


損害、数多くの被弾、怪我人多数、死者無し。


申し分はないだろう。


今回は爆撃機や攻撃機なども作戦に積極的に参加しているため、戦闘機乗り達の不満も少ない。


ただ、以前の派遣の時とは違う、何か得体の知れない不安、恐怖があった。


同月 28日 芦麻菜 某港 雄州派遣艦隊 旗艦 角端 飛行甲板


今回は芦麻菜のみならず、他の国家の海軍の艦隊との合同で艦隊を組み、そして梅斧目戸への上陸を敢行する。


艦隊内容は、浜綴は以前の墺利亜帝国へ上陸した時の艦隊と同様。


芦麻菜は以前の時の艦隊に加え、更に戦艦一隻、巡洋艦二隻、駆逐艦五隻、補給艦他雑務艦など三隻の計17隻である。


その他、浮蘭詩王国地中海方面部隊や成会矛北亜堀加駐留軍、ダシア半島の南端の国家、衛羅須王国などから計五隻の戦闘艦が派遣される。


計四十隻弱の大艦隊である。


この中で航空戦力は角端と真龍のみ。


角端については上陸用舟艇などの為に格納庫の場所が取られ、攻撃可能な軍用機は少ない。


この大艦隊を守るのは、それだけの航空機だけで行わなければならない。


更に梅斧目戸本土に存在する軍施設の破壊、航空支援も自分たちの仕事である。


梅斧目戸本土の航空戦力がどれほど存在するかは分からないが、明らかに仕事が多くなるのは目に見えているだろう。


ここでの補給が終わればその大仕事に努めなければならない。


『各員、出港準備!』


その時が、どうやら来たらしい。

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